日本人にとって親しみのあるキューピー株式会社だが、海外では抗議の対象(Sinergia Animal Indonesia提供)
日本人にとって親しみのあるキューピー株式会社だが、海外では抗議の対象(Sinergia Animal Indonesia提供)

強まる日本の食品企業に対する抗議 鶏のケージフリー率は1.13%の世界最低レベル

 現在、世界中の動物福祉団体が、キユーピー株式会社に対して、ケージフリーに切り替えるように抗議キャンペーンを行っている。日本の卵の10%を使用しているため、キャンペーンのターゲットになったのだ。日本国内ではあまり報道されないが、6月に開始したキャンペーンは当初は緩やかなものだったが、現在はより圧力を強めている。

 世界は鶏をケージの中に閉じ込めないという選択をし、それが畜産業のスタンダードになろうとしている。だが日本はまだそうではない。だからこそ、今、日本の食品企業が世界からのネガティブキャンペーンのリスクに晒されている。

畜産の手法が変わった

 米国のケージフリー(平飼い・放牧)で飼育される鶏の割合がついに40%を上回ったと、2024年5月にUSDAが公表した。

 米国は政府主導ではなく、市民と企業の力でアニマルウェルフェアを押しあげている国だ。カリフォルニア州などをはじめとして8州が条例でケージフリーではない卵の売買を禁じるなどの規制があるが、これも市民の力で勝ち取ったものだ。市民が小売や飲食やメーカーなどの卵を買い付ける企業に声を届け、その企業がケージフリーにすることをコミットし、それに生産者が応えて飼養形態を変化させるという市場原理を利用した社会課題の解決を見せている。

台湾におけるキューピー株式会社に対する抗議活動(EAST提供)

 2025年までのケージフリーコミットメントが多く、ケージフリーの卵の生産が追いつかないと言われていたが、鶏卵業界紙は実際には多少の遅れは発生しても2025~2026年には対応が可能であるという見通しを示した。大手養鶏場が一気に帳尻を合わせてきているようだ。

 米国は日本同様に、国からのアニマルウェルフェアの補助金があるわけではない。市場原理で動かしてきた。動物に配慮しようという倫理が、産業の形を大きく変えた。人類史上、この人間の成熟は素晴らしいものだ。

 養鶏大国である中国も、業界団体と政府がケージフリーを主導し、ケージフリーへの移行にドライブをかけている。

 世界は今同じ方向に進み、市民が、企業が動物への配慮をしようと意識を変えて、生産者がそれに追いついてくるということをはじめている。

島国、日本は?

 日本でも同じことができるだろうか……?日本人はどこまでも弱者に冷たい国なのか、それとも配慮する成熟度を見せるのか。

 日本でケージフリーで飼育される鶏の割合は依然低く、現在のところ(2024年7月)1.13%に過ぎない。まちがいなく、最低レベルだ。

 世界は想像以上に早くケージフリーやアニマルウェルフェアを高める方向に向かっており、日本が追いつくのは容易ではないだろう。だが日本も国際社会の中で経済活動をしなくてはならず、観光客も誘致したい、万博のようなイベントも開きたいのだから、食べ物の素材のレベルは上げなくてはならないのではないか。

インドネシアでのキューピー株式会社に対する抗議活動(Sinergia Animal Indonesia提供)

 日本でも徐々に市民側は意識を変え始めている。「どうせ殺してしまうんだから」など残酷な発言をする人は恥ずかしい思いをする時代がきている。

(次回は10月14日公開予定です)

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認定NPO法人アニマルライツセンター
1987年設立。動物たちの苦しみを効果的になくし、動物が動物らしくいられる社会を目指す。食べ物や衣類、娯楽や実験に使われる動物など人の支配下に置かれている動物を守る活動と、エシカル消費の推進に取り組んでいる。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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