たまさんが描く保護猫の物語は、“いのちのバトン”となって人から人へ、人から猫へ、猫から人へとつながっていきます(世界文化社提供)
たまさんが描く保護猫の物語は、“いのちのバトン”となって人から人へ、人から猫へ、猫から人へとつながっていきます(世界文化社提供)

100匹いれば100の物語がある すべての猫が誰かの大切な存在になれると信じて

 人気インスタグラマー@tamtamさんこと、たまさんは、動物保護団体、ブリーダー、トリミングサロン勤務を経て、現在は動物病院で働きながら、保護犬猫を預かり新しい飼い主を探す、一時預かりボランティアを個人で続けています。2022年には初の著書『たまさんちのホゴイヌ』(世界文化社)を出版。長年にわたる保護活動で経験した保護犬たちとのふれあいと日常をつづった心温まるコミックエッセイで、SNSでも大きな話題となりました。そして2023年秋、続編を望む多くの声に応えて『たまさんちのホゴネコ』(世界文化社)が出版されました。

すべての命が紡ぐそれぞれの物語を大切に

『たまさんちのホゴネコ』には、6匹の猫と、実話に基づいた6つの物語がおさめられています。そこに込められているのは、「猫たちの、そして私たちの『生きること』に対する話を少しでも多くの方に届けたい」というたまさんの思いです。

インスタグラムに投稿され、多くの反響を呼んだ猫たちとのエピソードに、描きおろしを加えた一冊『たまさんちのホゴネコ』(世界文化社提供)

「当たり前のことですが、猫が6匹いたらそれぞれ6つの物語が存在します。そして、100匹いれば100の物語があり、1000匹いれば1000の物語が存在します。どれもかぶることのない大切なそれぞれの猫生、人生の物語です。『命を大切に』なんて、幼い頃から何度も何度も聞かされてきた言葉だと思いますが、この本を通して、命は対等であり、尊重すべき存在であると再確認してもらえたらうれしいです」

 著書の中で特に思い入れのある物語をたまさんに聞いたところ、「すべてに思い入れはあるけれど強いて言うならば」と挙げてくれたのが、観光地の足湯の近くで保護した「足湯さん」の物語、「血だらけ狂暴猫との闘い」でした。

「足湯さんは、血だらけになっているところを保護したんです。この子がまぁ、生粋の野良猫で。人を寄せつけずに生きてきたんでしょうね。お世話をしようとする私に牙を向け、うなり続けました。怪我(けが)もしたし、精神面も結構、削られました」

血だらけの足湯さんを捕獲し、動物病院へ連れて行ったものの、キャリーケースから出した足湯さんに噛まれてしまったシーン。『たまさんちのホゴネコ』より(世界文化社提供)

 ところが、この足湯さん、たまさんが一緒に暮らしながら心を込めて世話をし、根気よく向かい合ううちに、とても甘えん坊で、気の優しい子だということが判明。

「今では我が家で一番の癒やし担当大臣であり、もう足湯さんのいない生活なんて考えられないほど私の中ではかけがえのない大切な存在です。野良猫って自由気ままでたくましいイメージをもっている人がまだ多いと思うんですけど、私たちが想像しているよりもずっと、過酷な環境で生存競争を続けているんだと思います。元々がたくましいのではなくて、生きるためにはたくましくなるしか残されていなかったんでしょうね……。足湯さんも同じ。そして、この子と出会ってから、すべての野良猫が誰かの大切な存在になれると確信をもちました」

巣立ったコたちの幸せな姿がなによりの喜び

 たまさんがこれまでに保護してきた犬猫は70匹前後。「頭数はあまり数えていないのでわかりません。頭数よりも、どんなコを譲渡につなげられるかを意識しています」と、たまさんはいいます。

「保護施設で勤務していた時に、東日本大震災の被災地で保護され、大阪へ移送されてきた子がいました。推定15歳以上のボロボロのおじいちゃんわんこで、認知症がかなり進んでいて、目も真っ白で……。吠えることもなく、ぼーっと日々を暮らしているような老犬でした。それがある日、飼い主を名乗る家族が会いに来られたんです。正直、こんな状態で対面しても、その子はきっとわけがわからないだろうとスタッフみんなが思っていました。ところが飼い主の声を聞いた瞬間、しっぽを全力で振りながら、今まで聞いたこともない声で甘えるように吠え始めたんです。飼い主さんも泣きながら喜んで……。スタッフもみんな号泣でした。犬も猫もきっと、どんな状態でも家族を忘れないんだなぁ……と感じました」

著書には、たまさん撮影の猫たちの写真も収録。こちらは「足湯さん」と「こいちゃん」。『たまさんちのホゴネコ』より(世界文化社提供)

 個人で保護活動を続けるにあたって、犬猫の保護や世話自体に苦労を感じたことはないというたまさん。難しいと感じるのは人間関係だといいます。

「保護するときに元飼い主とトラブルになったり、明らかに飼える状態ではないのに引き渡してくれなかったり……。保護したくてもできないことが多々あります」

 それでも続けられているのは、保護した子たちが新しい飼い主のもとで幸せに暮らしている姿を見られればこそ。

「私からしたら、巣立った子どものような感覚なので、いつも本当にうれしくなります」

犬や猫が教えてくれる“今を生きる”ということ

 たまさんは現在、犬6匹、猫7匹と暮らしています。

「本の中にも登場しますが、『こいちゃん』という盲目の猫がいます。子猫の時に保護したのですが、目も見えなければ、てんかんという持病までありました。でも甘えん坊で、好奇心の塊のような子なんです。高いところへ登っては下りられなくなったり、ほかの子にけんかをふっかけてみたり……。そして、なんといってもこいちゃん、毎日とても楽しそうなんですよね。目が見えないことも、持病があることも、この子にとってはハンデではなかったんです。強く生きるこいちゃんから学ぶことは、本当に大きいです」

目が見えず、てんかんの持病をもつ「こいちゃん」の物語「生まれつき弱い子」のワンシーン。『たまさんちのホゴネコ』より(世界文化社提供)

 たまさんが犬猫とのふれあいから学んだことをつづった著書には、読者からたくさんの感想や共感の声が寄せられています。

「そのなかに『ただ、“今を生きる”、これだけに集中できれば、今日は、まっさらな可能性の一日なんですよね』という言葉がありました。そのとおりだなと思います。私たち人間はどうしても、先の見えない未来に不安を感じてしまったり、過去のトラウマで身動きが取れなくなったり、躊躇(ちゅうちょ)してしまったり……。犬や猫って、そんなことひとつもないんですよね。生きることって難しいテーマなようで、彼らを見ていると、本当はものすごくシンプルなものなんだと気付かされます」

 保護活動、そして著書を通して、さまざまな出会いに恵まれ、支えられているというたまさん。「その出会いからつながる“いのちのバトン”をみんなが大切にできる世界になりますように」という願いで、著書は締めくくられています。

『たまさんちのホゴネコ』
著者:tamtam
発行:世界文化社
本体価格:税込み1,485円
※画像をクリックすると世界文化社の該当ページに飛びます
tamtam(タムタム)/たまさん
生活のかたわらで保健所から犬猫を預かり新しい飼い主を探す“一時預かりボランティア”を細々と続ける。2018年から自身の経験を通した漫画をインスタグラムで投稿し、話題を呼ぶ。2022年に『たまさんちのホゴイヌ』、2023年に『たまさんちのホゴネコ』(ともに世界文化社)を出版した。

(取材・文/成田美友)

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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