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法律が強化されてもなくならない繁殖業者の虐待事案 改めてペットの流通問題を考える

 ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主の暮らしにとって身近な話題を法律の視点から解説します。今回は、「ペットの流通問題」についてです。

ペットショップが持つ嫌な側面とその舞台裏

 sippoの読者の方であればもちろん、社会一般にも、「保護犬・保護猫」の言葉は浸透してきたと思います。

 もっとも、実際に人々がどこから入手しているかというと、犬については半数以上の51.8%がペットショップで購入しているとの統計があります(一般社団法人ペットフード協会による令和4年全国犬猫飼育実態調査)。

 ペットショップは立地のよい場所に店舗を構え、気軽に入りやすく、実際に目で見て触って買うかどうかを考えられるという点や、保護団体や自治体から譲り受ける場合に比べて厳しいことを言われないイメージがある点で、このような結果になっているのかもしれません。

 私は弁護士として、ペットショップで購入した犬猫が病気にかかっていたという法律相談を、しょっちゅうではないものの、たまに聞くことがあります。ただ、弁護士相談までするケースは氷山の一角であり、トラブルの多くは、買主が消費者センターに相談するなどしてショップと話し合って解決したり、保険を使って解決したり、あるいは泣き寝入りになっていることも相当あるのだろうと想像します。

ビーグルの親子
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 また、繁殖業者が、大量の犬猫を劣悪な環境で飼育しているため動物虐待事件として刑事事件に発展するケースがあります。こうした繁殖業者たちが、大量に繁殖させた犬猫をペットオークションに持ち込んだり、オークションを介さず直接大手ペットショップに販売したりしていることも事実としてあります。ただ、こうした嫌な一面、舞台裏については、ペットショップで子犬や子猫を購入しようとする人のほとんどは見ていないでしょうし、見たくもないでしょう。目の前の子犬や子猫は、ただただ可愛いのですから。

なくならない流通問題を検証する

 さて、犬猫の売買について、動物愛護管理法の改正が進み、販売側の規制は強化され続けています。しかしながら、残念なことに、以上のように問題はなくなっていません。

 週刊誌では、大手ペットショップを名指しで批判する記事が繰り返し掲載されています。こうした機運が高まっているタイミングで、直近の2019年改正(2020年施行)で導入された規制(幼齢犬猫販売の56日規制、数値規制、マイクロチップ装着など)が正しく守られているのかどうかなど、環境省において点検作業をし、あるいは業界関係者が自ら検証する必要があるのではないでしょうか。 

兵庫県弁護士会主催の市民シンポジウム「ペットの流通を考える」チラシ

 この点に関連するイベントですが、動物愛護週間の9月23日(土)午後1時から、兵庫県弁護士会主催の市民シンポジウム「ペットの流通問題を考える」を開催します。女優の浅田美代子さんとsippoでもおなじみ朝日新聞記者の太田匡彦さんをお迎えして、基本的なところから最近の問題まで、幅広く考え、議論していきたいと思います。

 また、設立からちょうど1年を迎えたNPO法人どうぶつ弁護団の事業報告もあります。

 会場参加はもちろん、遠方からでもzoomによる視聴ができます。ぜひご参加ください。

【前の回】社会通念の変容に取り残されてはいけない 上げ馬神事から伝統行事の在り方を考える

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
細川敦史弁護士が、ペットの飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点からひもときます。
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