「抱っこさせたら勝ち」 衝動買いを促進するペットショップ そろそろ見直しを
ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主の暮らしにとって身近な話題を法律の視点から解説します。今回は、将来のペットショップのあり方について、法律的な観点からのお話です。
小型犬ブームのはじまりと動物愛護管理法改正
アイフルのCMでチワワのくぅーちゃんがブレークしたのが2002年、それから小型犬ブームが到来したといわれています。
それから3回の動物愛護管理法の改正がありました。
2005年改正では、動物取扱業(ペットショップは販売業)の規制について、それまでは届出制であったのが登録制となり、一段階厳しくなりました。
2012年改正では、夜間(20時から8時)の展示販売が禁止され、24時間営業のペットショップは姿を消しました。また、インターネット販売が規制されました。
2019年改正では、飼育施設などの数値規制が導入され、犬猫の幼齢販売規制(いわゆる8週齢規制)が完全施行されました。
ペット業界とりわけ生体販売の業界にとっては、この20年近く、規制強化の流れが続いており、逆風状態であるといえます。
変わらず続く、ペットショップでの生体販売
しかしながら、これらの改正を経て法規制が徐々に強化されても、ペットショップは、都市部の人通りが多い一等地に次々と新店舗をオープンしています。きれいな店舗のショーケースに子犬や子猫を陳列し、続々と来店する人たちに、明るく声をかけ、かわいい子犬を抱っこさせて熱心に営業をしています。
「ペット業界関係者は『抱っこさせたら勝ち』と言っている。」という話も、10年以上前から最近でも変わらず言われているところです。
ペットショップがショーケースに入れて展示販売し、さらに、店員が積極的に「営業」する販売方法は、衝動買いを促す仕組みと評価せざるを得ませんが、一方で、信念をもってしっかりと説明し販売しているショップもあるでしょうから、実際、問題ある販売または購入がどの程度されているのか、データで示す必要があるでしょう。
この点、新しい統計ではありませんが、公正取引委員会が2008年に調査した「ペット(犬・猫)の取引における表示に関する実態調査報告」が公開されています。この報告書の27㌻に、「消費者は,犬・猫を購入する際,比較・検討するための期間を余り設けずに購入している。消費者モニターアンケートによれば,比較・検討の期間が1日未満である消費者は,購入経験者のうち29.4%であった。このような消費者のうち,45.9%(17人)は,犬・猫を認知する購入前に何の条件も決めず衝動的に購入を決定していた。」との記述があります。一定割合が、ペットショップで「運命の出会い」をして、即時に購入していることがうかがわれます。
簡単には買えない仕組みづくりを
きっかけは衝動買いでも、その後大切に飼育している人はいるかもしれません。ただ、ペットショップで購入された子犬や子猫が殺傷される事件がしばしば報道されるのを見ると、どうしてこんな人に売ってしまうのか、簡単に売れるのはよくないと素朴に思うところです。ただ、これはペットショップの問題とも言い切れず、むしろ、ショップの側でも、問題のある人にも売らなければならないというジレンマを抱えているかもしれません。
そうであれば、一定の場合には販売を断れることとするとか、あるいはショーケースでの展示を含め、簡単には買えない仕組みづくりを、ペット業界も含めて検討していく必要があるのではないかと思います。
2021年11月に、フランスで動物保護法が改正されたことがニュースになりました。いくつかの報道では、2024年からペットショップで犬猫の販売が禁止されることや、2026年から水族館でのイルカやシャチのショーが禁止されることが大きなトピックとして伝えられていましたが、個人的には、犬猫の購入者に対し、飼育の義務と知識を有することの保証書の提出を義務付け、保証書の交付から7日間は(有償・無償を問わず)動物の譲渡ができないことを定めた改正に注目しています。
国立国会図書館のウェブサイトには、この改正法の条文を翻訳したものが公開されています。原典にあたって確認されたい方は、ご参照ください。
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