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愛猫に嫌われて悲しい 待ったなしで始まった猫への投薬、上手にやるにはどうしたら?

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、「猫の投薬」について、入交先生が答えます。

投薬についての相談

 9月になっても暑い日が続いています。3日には防災に関する屋外イベントに参加してまいりましたが、すっかり日に焼け、よい夏の思い出になりました。とはいえ今はもう9月。立秋も過ぎているのにこの暑さで、気持ちはまだ真夏です。

 さて、今回は猫の投薬についてのご相談をいただきました。

Q.愛猫に毎日の投薬が必要になり、朝起きてと夕方と時間が決まっており、時間になるとつかまえて口を開かせ飲ませていたのですが、日に日に警戒されるようになり、最近では物陰から不信な目で見られ、完全に警戒されるようになってしまいました。とても悲しいです。

Q.愛猫に投薬が必要なのですが、毎回苦労しています。もともと抱っこ嫌いで警戒心もつよく、なかなかうまくいきません。それでも飲ませないわけにはいかないし、毎回苦労しています。何かいい方法はありますか。

ウエットフードやおやつでくるむ

 最初に残念なお知らせです。「猫の投薬の成功は1日にしてならず」、なのです。練習あるのみなんです。そんなこと言われても飲まなければいけないお薬がある場合は、今はおいしいおやつにお薬を混ぜて与える方法を取ります。手順は次の通りです。

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  1. 薬の入っていないお薬を混ぜるためのおやつを決まった時間帯に決まったお皿に決まった場所において数日毎日与えます。おやつではなくてウエットフードでも構いません。療法食を食べている猫さんは療法食のウエットフードをお試しください。療法食のメーカーもいろいろあるので好きなメーカーのものを探してください。
  2. パクパク躊躇(ちゅうちょ)なく食べるようになったら、ある日、ここにお薬が混ざります。でも毎日同じように決まってここでおやつを食べていると、かなり苦いお薬でもなければ、いつものおやつとして食べてくれる可能性大です。
  3. ウエットフードやおやつはケチらないで、完全にお薬が隠れるように混ぜ入れますが、ウエットフードは盛りすぎるとおいしいフードだけなめて隠したお薬が出てきてしまうので、一口でパクッといけるような量を考えます。
  4. お皿のフードやおやつは「盛り塩」みたいに一口で食べられるような形に盛り付けられたら、そうしてみてください。

 万が一、味があったり少し苦かったりするお薬の場合は、私は「バニラのアイスクリーム」「クリームチーズ」「ヨーグルト」「コーヒーのミルク」など人の食べ物を少し混ぜて味を隠してしまいます。完全に混ぜてください。だまされて食べる可能性は高いです。

 ウエットフードやおやつを使って飲むべきお薬を飲ませ終わったら、今度はぜひ、お薬を飲むトレーニングを始めてください。

注射器を使ったトレーニング

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  1. 散剤やシロップには注射器を使います。注射器は離乳食をあげたりするためにペットショップにも売っているほか、動物病院でもご購入いただけます。ドロドロの形態のおやつを注射器の目盛0.5ccのところくらいまで入れ、猫の口の脇に先を入れておやつを食べさせましょう。何回か食べさせるうちに、注射器を口に入れられることに猫は「わくわく」するようになります。
  2. 投薬が必要な時に、この注射器に入れるドロドロのおやつにお薬を混ぜて入れます。注射器の先の穴は小さいので、先端を切って直径1cm弱くらいの注射器の筒から与えましょう。

錠剤の際のトレーニング

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  1. 錠剤の練習です。お口を開けて、ドライフードをお口に入れる練習をします。ご家族が口を開けて中に何か放り込んだ場合はおいしいもの、という「常識」を猫に植えつけましょう。
  2. お口を開けるときは利き手ではない方の手で猫の両頬の骨を親指と中指を使ってはさみ、首を斜め上に向かせます。
  3. 利き手の親指と人差し指でおくすり(フード)を持ち、中指でお口をけます。
  4. お口が開いたらつまんでいるフード(本番ではお薬)を素早くお口に入れます。
  5. 喉(のど)を少しさすってごっくんの行動を促します。お水を注射器に入れておいて口の横からお水を少し与えてもよいですが、多すぎないように注意します。

 うまくいかない場合は、動物病院で上手な看護師さんに投薬の方法を見せていただいて、ご自宅ではまずはぬいぐるみを使って練習を始めてみるとよいでしょう。

 最初はお口を開けられたらおいしいおやつが食べられる、と教えるのがうまくスタートするコツです。

 子猫の時から練習を始めるのがベストですが、大人になっても遅くはありません。ぜひおいしいおやつをお口に放り込む練習と、注射器でやわらかいおやつを口に入れる練習を始めましょう。

 さて、私も我が家の猫で練習します。近いうちに来るかもしれない投薬の危機に備えて。

(次回は10月8日公開予定です)

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【前の回】寒がりな猫でもさすがに厳しい今年の夏 酷暑の日々、室内温度や環境はどう整える?

入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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