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猫に首輪は必要? もしものときへの備えと猫のストレス、天秤はどちらに傾く?

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、「猫の首輪」について、入交先生が答えます。

猫に首輪は必要?

 ようやく梅雨も明けましたが、雨による災害、過酷な暑さの日もあって、お天気の神様はちょっと穏やかではない7月でした。被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。

 さて、今回のテーマは猫に首輪は必要か否か、になります。首輪をしているとどこかに引っかかってしまうので危険といった心配もありますが、迷子になったときのために首輪は必須とも考えられます。猫にとっては、首輪はどうなのでしょうか?

 首輪は、万が一、猫が家を飛び出して迷子になってしまったときに、誰かの家族であることや連絡先を伝えられる「所有者明示」の役割を果たしてくれます。まずはマイクロチップを装着したうえで、首輪をつけておくと安心だと思います。

首輪をつけるときの注意点

 首輪をつけるときに気を付けていただきたい点ですが、猫が一人でいるときに首輪がどこかに引っかかって猫さんが宙ぶらりんになると怖いので、首に巻いた際に指が1本首輪の内側に入るくらいの巻き方にします。さらに、どこかに引っかかったときに猫が逃げようとして引っ張ると外れるような仕組みの首輪もあります。

 人のネックレスのようなブラーンとつけるようなタイプは、猫の腕が首輪にとられてしまったり、どこかに引っかかったりして危ないので避けたほうがよいでしょう。

 また、首輪をつけたら、所有者明示(名前と電話番号)をわかりやすくしておきます。長くつけていると文字がすれて電話番号が見えなくなっていることがあるので、たまに確認してください。

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 初めて首輪をつける時、猫は首に違和感を覚えて嫌がると思います。ゆっくり首輪に慣れてもらうようにしましょう。

 大好きなおやつを用意し、首輪をつけたらおやつを与え、首輪が気にならないような状態を作ります。初めてつけるときは短時間にしてあげて、おやつを食べさせたり、遊んだりしながら首輪を気にさせないように楽しいことを一緒にして、数十秒で外します。遊んだりおやつを食べたりしている間に短時間つけていることを続けて、少しずつ装着時間を延ばしていきます。とても敏感な猫の場合はより時間をかけて、焦らずゆっくり慣らしてください。

 押さえつけて強引に首輪をつけ、首輪が気になって猫がいじっていてもしばらくほっておくような方法は、もしかしたらいずれ首輪に慣れるかもしれませんが、最初に猫に大きなストレスを与えるので、避けたほうがいいでしょう。強引さが苦手な猫も多いと思います。

無理せずマイクロチップを

 どうしても装着が難しく、猫が暴れてしまう場合は、一人で頑張らずに、トレーニングをしてくださる方や動物病院にSOSを送ることもできます。ストレスなく装着するコツを教えていただいて楽しくトレーニングできるように相談してみてください。また、猫があまりにも抵抗するようであれば、ストレスになる首輪をいったん諦めて、まずは迷子対策にマイクロチップを入れていただくことを考えてもいいでしょう。

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 マイクロチップは将来的にすべての犬と猫に入れていくようになります。動物病院で獣医師がマイクロチップを入れてくれますので、そのあとの登録方法までしっかり教わって、確実にご自身の猫を登録してください。万一迷子になっても、チップを読めば帰る家がわかるので、安心になります。首輪はマイクロチップを装着したうえで、今度はゆっくり、楽しく、焦らずに練習できると思います。

 首輪をつけ慣れると、最近流行りの身に着けることで猫の行動がわかるデバイスで、愛猫の行動が見えるようにもなります。首輪をつけることに慣らしておくと、いろいろやれることが広がると思います。

愛猫に必要かどうかを考える

 ここでは特定の猫のことを考えずに一般論を記載しました。でも猫ちゃんもいろいろ、お住いの環境もいろいろ、猫一人でいる場合、たくさんの猫と住んでいる場合、犬が家族にいる場合、小さなお子様が家族にいる場合など、環境によって首輪の是非や種類も変わってくると思います。「こうしなければいけない、sippoに書いてあったから」と思い込まず、まずご自身の猫に首輪は必要かどうか、つけたら危険なことはないか、首輪が安心材料になるか、よく考えてそれぞれで判断していただくことがベストだと思います。

 我が家はどうしたらいいのかしら?と思われたらホームドクターにご相談してみて下さい。

 暑くて猫も寄り付かなくなっています。皆様ご自愛ください。

【前の回】食いしん坊な早食い猫とダラダラ食いの猫 多頭飼育におけるご飯のすみ分けどうする?

入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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