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食いしん坊な早食い猫とダラダラ食いの猫 多頭飼育におけるご飯のすみ分けどうする?

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、「猫の多頭飼育におけるご飯のすみ分け」について、入交先生が答えます。

同居猫のご飯まで食べてしまう

 じめじめの梅雨はなんとなく憂鬱(ゆううつ)です。洗濯物が乾きません。雨の多い季節は家で猫とたくさん遊ぶのが、ネコloveな我々の正しい過ごし方ですね。

 さて、そんなネコloveなご家庭には、2匹以上の猫が同居していることも多いかと思います。今回は、2匹の猫がいるご家族からのご質問です。

Q.我が家には、食欲旺盛であげたらあげただけ食べる早食いの先住猫と、最終的に完食はするものの、ちびちび食べるのを好む猫の2匹がいます。2匹の関係には距離があり、そのため相手のスペースとして互いに立ち入ることのなかった2段ケージのそれぞれにフードを置くことで長く問題はありませんでした。それが最近、先住猫がもう一匹のケージに入って残っているご飯を食べてしまうようになりました。丸1日の留守番やシッターさんに頼んで何日か家をあけることがあり、のんびり食べる子が必要量を食べられなくなってしまわないかと心配しています。(T.M.さん)

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 猫も人と同じように食べ方はいろいろです。食いしん坊もいれば、ゆっくり食べたい子もいます。猫という動物は、もともとはねずみや鳥、虫などの小さい獲物を捕まえて食べていました。捕まえた獲物の大きさとカロリーによって1日何回狩りをするか決めるわけですから、1日に何回も少量を食べる猫がいても不思議ではありません。生き延びるために大切な特徴として、一気にあるだけ食べる猫もいるでしょう。

物理的に食べられない環境作りを

 今回のご質問のような場合、ゆっくり食べる子のご飯を食いしん坊の子に盗まれないようにするしかないと思います。その際、食いしん坊さんもどこかにあるご飯を食べたくて探して手に入れる努力をするでしょうから、物理的に分けることが必要になると思います。

 我が家でも同じような問題がありました。高齢になった猫の食べるスピードが落ちて、若い猫にご飯を取られてしまうようになったのです。

 そこで我が家の場合は、高齢猫は台所でゆっくりご飯を食べさせ、若い猫はリビングで食べさせるようにしました。

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 日中、家族が見ている間は、家中どちらの猫もフリーに。ただしご飯は置いておかず、高齢猫が食べたいなと思って台所に行ったら、一緒に台所に入って扉を閉めて高齢猫に食事を食べさせ、終わったら再びお皿を片付け、フリーにします。人は面倒ですが、猫の様子を見ていれば食べたい行動はわかるので、苦労なくやれていました。

 留守番をさせるときは、キッチンに高齢猫だけを隔離して、食事だけでなくゆっくり休憩もできるようにします。夜間はどちらのご飯も床に置いておかないようにして、2匹とも自由に行動できるようにしました。そうすると、その時間は高齢猫もリビングにあるキャットタワーで休めることになります。

 ちなみに、猫が2匹以上いるご家族で1匹が病気のために療法食を食べなければならない子だったりすると、これも大変です。もし1匹が療法食しか食べられなくなった場合は、その療法食が総合栄養食で健康な子が食べても大丈夫かどうか、獣医師さんに問い合わせてみてください。総合栄養食で健康な子が食べても問題ないフードであれば、病気ではない子もその療法食を食べさせるようにすると、どちらの猫のご飯をどちらの猫が食べても問題がなくなります。

猫は賢い、という結論

 また、テクノロジーを活用した方法もあるようです。首輪にIDタグをつけることで、登録した猫が来たときだけふたが開くようになっているフードボウルを友人が使っていました。とても画期的ですが、ちょっとした笑い話もあります。

 友人も最初は成功していたらしいのですが、大食いの猫ちゃんは頭がよく、他の子のフードボウルのそばで待機するように。特定の猫が来てふたが開き、ある程度ご飯を食べて去ろうとすると、箱が閉まる前にすかさず首を突っ込んで食べたり手を入れてかき出したりするようになったそう。テクノロジーの上を行く猫たち、本当に賢いです。

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 我々人は、家族である猫たちをよく観察し、食事の時間や食べ方のクセを把握し、タイミングを見計らって彼らの行ける場所をコントロールしたり、お部屋を上手に使ったりするしかないと思います。

 猫は頭がよく、こちらが工夫をしても、他の猫のご飯は物理的に取れないようにしない限り、結果的には猫も工夫して努力をし、食べたいときは食べに行く、ということで今回は結論とします。

(次回は7月10日公開予定です)

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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