体は大きくても甘えん坊に変わりない 預かりボランティア、元猟犬との別れ
保護犬の預かりボランティアをする、インテリアデザイナーの小林マナです。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫1匹と、預かり犬1匹と生活をともにしています。第31回は「元猟犬ベリオとの別れ」をお伝えしていきます。
背中に腫瘍ができていたベリオ
2018年2月から預かっていた10歳越えの中年おじさん犬のベリオ。預かり始めは分離不安というより“不満”が強く、2カ月間ずっとマシンガンのように鳴き続けていました。そしてドッグトレーナーのトレーニングを受けて、かなり落ち着いてきていた12月末、ベリオの背中に腫瘍(しゅよう)があることが発覚しました。
歩き方がちょっとおかしいと気づいたのですが、その時にはもう骨髄にできた腫瘍が脚の神経を圧迫していて、その後、後ろ脚の自由がどんどんきかなくなってしまいました。
1カ月もすると脚の力も入らない状態になり、後ろ脚をハーネスでつりながら散歩をしていました。
同じく預かり犬だった柴犬のチョコ亡き後、ベリオは新米の預かり犬のニハチにべったりくっついて仲良くしていました。こういうときに犬にも相棒がいると、寂しさが紛れて本当に良いなあと思います。
1カ月の余命が3カ月に!
骨髄腫がありましたが、手術をするにはベリオの年齢的にリスクがあるため、このまま静かに逝かせてあげようというのが獣医師の見解でした。それでも少しでもラクになるだろうとステロイド投与をしたおかげで、1カ月と言われていた余命が少し伸びたのです。
打ち合わせや電話中に相手の声が聞こえなくなるほど1日中ほえていたベリオが落ち着いて、ようやくここからまともに生活ができると喜んでいた矢先だったので……、心の整理がまったくつきませんでした。元猟犬で役目を終えて捨てられていたベリオがうちに来たことは、ベリオにとって最高の喜びになったはずです。
ひと目会ったその日から、おもしろいほどベリオは私にべったり。まるで磁石のようにぴったりくっついて離れなかったのです。シェルターに引き取りに行った日は、ボランティアをする友人が車を出してくれたのですが、友人もベリオのくっつきように大笑いしていました。
体は大きくても甘えん坊で、他の犬となんら変わらないのです。
どんな犬もみてあげたい
私は、2匹を限度に保護犬を預かっています。老犬1匹と子犬2匹という例外もありましたが、基本は2匹までです。
だいたい「元気そうな老犬」と「寝たきりの老犬」という組み合わせが多く、寝たきりの老犬は、目も見えない、耳も聞こえないことが多いのですが、鼻はよく効くので感心させられました。それで人をかぎわけているのですから。そして自己表現は尻尾! 断尾した小さな尻尾でも振ってくれます。
ベリオも例外ではありませんでした。うれしいときはいつも、長くて太い尻尾と耳が完全になくなっていました。散歩の時や立ち止まるとバシバシと足にあたっていました。写真を撮っても高速過ぎて映っていないことも。
私にできることは限られているので、多くの保護犬を救うことはできません。1匹か2匹しか預かることができないもどかしさはあります。ベリオについては「最高に大好きな私に会えて、1年ちょっとだったけどあたたかい家で暮らせて本当に良かった」と思うしかありません。
お散歩が大好きで、私と歩く時は、初恋の人を見るような上目遣いでいつも私の顔を見るように歩いていたベリオ。12月に腫瘍が発覚し、あっという間に体に力が入らなくなり、3月に静かに亡くなりました。
ベリオ楽しかったね、ありがとう。
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