「僕はなんのためにここにいるんだろう。考えてるんだ」(小林写函撮影)
「僕はなんのためにここにいるんだろう。考えてるんだ」(小林写函撮影)

ペットシッターのケアと持ち前の人懐っこさに救われた 愛猫「はち」の留守番

 元野良猫「はち」を家に迎えて8カ月が経った頃、私は初めてペットシッターを頼み、4泊5日でツレアイと家をあける間、はちを家で留守番させることにした。

 出発の直前に、はちは眼球を軽く傷つけてしまったため、ペットシッターのNさんには毎日、2種類の目薬をさしてもらう必要があった。また普段、はちには規定量のドライフードを1日4回に分けて与えているが、留守中は私が持っている自動給餌(きゅうじ)器のシステムの関係で、2回しか与えることができない。

 単独行動が得意な猫は、食事と水さえ十分に用意しておけば1匹での留守番は問題ないという。それは「いつもと変わらない環境であれば」の話で、こういったイレギュラーなことがあってもはちは大丈夫かと多少の心配はあった。それでも、ペットシッターのNさんを信じてでかけることにした。

(末尾に写真特集があります)

ペットシッターからの便り

 シッティングの初日、Nさんが来てくれる午前中の時間に合わせてメールをチェックする。「ペットシッターのNです」という件名でメールが届いていたのですぐに開封すると、スマホで撮影したはちの写真が5枚添付されていた。

「本日のはちくんです」というコメントとともに表示されたのは、猫トイレの前に悠然と座っているはちだ。続いて、尻尾をピンと立ててリビングを歩きまわっている様子と、尻尾を揺らしながら口を開け、鳴き声を発しているような写真があり、これには「『ごはーん』と催促しています」との説明文がついていた。

「猫の面倒をみたことがないから大変さはわからないけど、いいコにしよっと」(小林写函撮影)

 上目遣いで、やや警戒するように壁伝いに歩いているカットには「目薬回避中です」というコメントが。最後は、はちがソファの下にもぐりこんでこちらを向いている写真で、「抗生物質入りのほうはなんとかさせました」と記載されていた。

 点眼に関しては、どうやらうまくいきそうだ。はちは逃げながらも、なんとか受け入れてくれたらしい。

 翌日、またNさんが来てくれる時間にメールをチェック。玄関ホールで、顔を床につけてNさんに向かってお尻を突き上げている写真が目に飛び込んできた。奥には、蓋(ふた)の開いた空の給餌器が写っている。

できるだけ普段通りの暮らしを

 先代猫「ぽんた」のお下がりこの給餌器は、蓋付きの容器が2つ並んだトレータイプ。それぞれのトレーにダイヤル式のタイマーが付いており、セットした時間になると蓋が開き、フードが食べられる仕組みだ。だが構造上、1日2回しか給餌ができない。

 Nさんのメールによると、規定量のうち4割程度をNさんが来たときに器に盛って出し、残りの半分ずつを給餌器にセットしている、とのこと。片方のトレーは夕方、もう片方は早朝に開くようにタイマーをセットしてくれているそうで、そうすると1日3回、はちは食事にありつけることになる。

「いつもより1回少ないけど、Nさんが工夫してくれたから、許してね」と、私は写真のはちに語りかけた。

「今は気分じゃないけど、おばちゃん遊んでくれているからな」(小林写函撮影)

 はちは私が想像していた以上に人なれが早いようだ。Nさんにブラッシングしてもらっている写真のはちは、気持ちよさそうに目をつむっており、ゴロゴロとのどを鳴らす音が聞こえてきそうだ。Nさんのプロとしての技や人柄によるところも大きいのだろう。

 3日目は、はちがじゃらし棒で遊ぶ写真が送られてきた。釣りざおの先に付いている魚のぬいぐるみを床にはいつくばるようにして狙ったり、ジャンプして飛びついたりしている様子だった。「はちくんの集中力は半端ないですね」とのNさんからのコメントにほおがゆるむ。

 さらに「逃げずに点眼を許容してくれるようになってきました」とのことで、この日は、ソファの下にもぐっている写真はなかった。

無事に終えたはじめての留守番

 はちが元気そうなので安心し、私たちは追加でNさんにシッティングをお願いし、滞在を1日延ばして帰宅した。

 はちは、普段と変わらない様子で玄関に現れた。特に待ちに待っていた喜びを表現するわけでもなく、「どこに行っていたの」と責めるように鳴くこともなく、足元にすり寄って来た。

 玄関扉のポストには、Nさんからの封筒が入っており、中には合鍵と、ペットシッティングの報告書が同封されていた。

 A4サイズの用紙2枚にわたるその報告書には、4日間のはちの様子がびっしりと記されていた。

「ただかわいいだけじゃないんだぜ」(小林写函撮影)

 毎日「ニャー」と鳴きながら、玄関までNさんを迎えに出てきたことや、排泄(はいせつ)の回数や状態、ブラシング中やじゃらし棒で遊んでいたときの態度や表情etc。

 はちがブラッシング好きとわかったNさんは、ブラッシング、目薬、ごはんを一セットにし、はちが目薬を受け入れる流れを作ってくれたようだ。

 ごはんに関しては、給餌器にセットした分は毎回完食してあり、Nさんが器にフードを盛ると、ソファの下に隠れていても飛び出して来たという。ただ給餌器のトレーが数回、床に飛び出していたとのこと。どうやら、タイマーで蓋が開くより前にはちは自分で蓋をこじ開け、トレーを引っ張り出してフードを食べてしまっていたらしい。

 はちにしてみれば、不満がないこともなかった4泊5日のはじめての留守番。それでも、家の中に粗相やいたずらをした痕跡は見当たらないし、しつこく甘えてくることもない。器に盛ったドライフードを黙々と食べるはちの丸くつやつやとした背中を見ていると、ストレスとは無縁だったように思える。

 この日は、いつもは控えているおやつのウエットフードをたっぷり与え、「えらかったね」とねぎらった。

(次回は1月6日公開予定です)
【前の回】迫る出発の日 点眼に食事のこと、愛猫「はち」の留守番に心配は尽きなかった

宮脇灯子
フリーランス編集ライター。出版社で料理書の編集に携わったのち、東京とパリの製菓学校でフランス菓子を学ぶ。現在は製菓やテーブルコーディネート、フラワーデザイン、ワインに関する記事の執筆、書籍の編集を手がける。東京都出身。成城大学文芸学部卒。
著書にsippo人気連載「猫はニャーとは鳴かない」を改題・加筆修正して一冊にまとめた『ハチワレ猫ぽんたと過ごした1114日』(河出書房新社)がある。

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この連載について
続・猫はニャーとは鳴かない
2018年から2年にわたり掲載された連載「猫はニャーとは鳴かない」の続編です。人生で初めて一緒に暮らした猫「ぽんた」を見送った著者は、その2カ月後に野良猫を保護し、家族に迎えます。再び始まった猫との日々をつづります。
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