猫の多頭飼育、2匹目を迎える前の心得と迎える際のポイントとは?(getty images)
猫の多頭飼育、2匹目を迎える前の心得と迎える際のポイントとは?(getty images)

2匹目の猫を検討中 猫の多頭飼育は個々とちゃんと向き合えることが大事

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、読者から寄せられた「猫の多頭飼い」についての相談に、入交先生が答えます。

今いる子がビビりでも、2匹目を迎えられる?

 徐々に秋が深まってきました。もう山の上は雪も積もっているところもあるのではないでしょうか?平地の方は北から葉っぱの色が秋色になってきています。

 今回は猫と暮らすご家族が新たに猫を迎える場合の注意点に関してのお話です。いただいたご質問をご紹介しましょう。

Q. 猫が一匹家にいます。とてもビビりで来客があるとどこかに隠れてしまうような子です。フレンドリーな子への憧れもあり、2匹目を考えているのですが、2匹の相性など心配もあります。多頭飼いはやめたほうがいいでしょうか。

 猫同士の相性を見極めるのは難しいです。でもヒントになる情報として、まずおうちにいる猫さんと新たに迎える猫さんの子猫時代があります。もし幼い時(3週齢くらいから7~9週齢くらい)に、兄弟子猫や他の猫と過ごし、母猫に育てられるチャンスがあった場合は、他の猫とのコミュニケーションができる猫の可能性が高く、猫同士うまくいく可能性があります。しかし、他の猫や母猫とのかかわりが少なかった場合は、猫同士のコミュニケーションの方法を知らないので、2匹になった時にうまくいかない可能性があります。

子猫の時に親猫や兄弟猫と過ごしてると、他の猫とのコミュニケーションが高い猫である可能性も(getty images)

 また、猫の個性も考える必要があります。相性がいいのか否かは合ってみないとわからないので、事前に見極めるのは難しいかもしれません。ただ相性が悪くても、他の猫とのコミュニケーションが上手な場合は、相性が合わないならあわないなりにお互いに距離をとったりできるので、問題が勃発することは少ないと思います。

2匹目を検討する際のポイント

 2頭目以降を迎え入れる際に考えておきたいことのポイントです。

●新しい猫をすぐに先住猫に合わせず、ゆっくりお見合いをさせます。

  • ケージやお部屋を使って最初は別の場所にいさせます。
  • 猫の頬(ほお)のフェロモンをタオルにつけ、フェロモンのにおいを猫同士交換します。
  • 問題なさそうなら、少しずつ時間をかけて合わせていきます。

●ゆっくりお見合いをさせても、どうしても相性が合わない場合があります。相性が悪い猫同士である可能性を考慮し、別々の空間で暮らさせられるか考える。

●2匹目と先代の猫の仲が良くても、お互いに遊んでいたとしても、それぞれの猫とちゃんと向き合って人家族は猫と遊んで時間を取るようにします。

2匹目以降の猫を迎える時の準備は?

Q.知人が子猫を保護し、1匹どうかと聞かれ迎えることにしました。新しい子を迎えるにあたり、準備しておいたほうがいいことはありますか。

 新しい猫をお迎えするときには、最初の時にあると便利なのが猫を入れておけるケージです。長時間入れておく必要がある場合は3段のケージがあるとよいでしょう。段付きのケージを使うことで、ごはんとトイレと寝床を分けた状態にいてもらうことができます。

2匹目を迎える時はケージを準備すると何かと安心(getty images)

 また、複数匹の猫と一緒に暮らすことになった場合、トイレも寝床も猫の数以上作るようにしてください。また、ごはんは猫がみんなで一緒ではなく、それぞれのスペースで食べさせた方がいい場合もあるので、食事の場所も見極める必要があります。

猫を2匹以上飼う際のポイント

 2頭以上飼う場合のポイントを紹介しましょう。

●トイレは猫の数以上用意しましょう。トイレは蓋のない大きなものが猫は一番好みます。

●相性があまりよくない場合、互いに近くで休んだり寝たりしないので、ベッドは家の中のあちこちに用意しましょう。

●キャットタワーや家具を上手に配置し、相性が悪い猫同士、うまく猫の動線が重ならないように考える必要がある場合もあります。

●それぞれの猫を個々に、人家族は遊んであげるようにし、それぞれかわいがるようにしてください。

 猫が2匹以上いるのは本当に楽しいですが、猫同士の相性が悪い場合、人が気を使っていくことになります。2頭目以降を迎え入れる時はいろいろな想定をしてから迎えてあげてください。すべての猫がみんなと仲良くできるとは限りません。また、多くの猫は人が大好きなので、必ずそれぞれの猫と遊んであげましょう。

多頭飼育であっても、個々の猫とそれぞれ遊んであげることが大切(getty images)

 我が家も17歳の高齢猫との暮らしの中に子猫を迎えてしまい、基本的には仲が良かったですが、子猫が必要以上に高齢猫にちょっかいを出すので、猫の食事中は隔離して様子を見ながら食べさせ、遊びも子猫が激しすぎる時は1匹を隔離していました。

 高齢の子は今年亡くなってしまいましたが、1匹になってから、2匹いた時にかなり気を使っていて、2匹は楽しかったけれど、実は管理がちょっと大変であったことを実感しました。

 多頭飼育は幸せも倍増ですが、大変さも倍増の可能性があることを心に留めて、迎えていただきたいなと思います。

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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