猫を連れた引っ越しの注意点は?(getty images)
猫を連れた引っ越しの注意点は?(getty images)

“猫は家につく”って本当? 猫を連れた引っ越し 事故なく安心して行う方法を伝授

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、読者から寄せられた「猫を連れた引っ越し」についての相談に、入交先生が答えます。

“猫は家につく”は本当?

「イヌは人につくがネコは家につく」と昔から言われています。さて、猫は本当に「家」が変わると困ってしまう動物なのでしょうか?今回は猫と引っ越しに関してご質問をいただきました。

Q.仕事の関係で静岡から中国地方に引っ越すことになりました。今10歳の猫がいますが、長距離の移動をさせたことがなく、また引っ越し先で順応してくれるか心配です。スムーズに猫も連れて引っ越しできる方法はありますか。(さきこ)

Q.2匹の猫と自分で暮らしています。次の更新で引っ越しを考えています。猫にストレスになりますか?新しい住まいを好きにさせるポイントを教えてほしいです。(やん)

 引っ越しは、移動中も新しい家に入ったときも、おそらく猫にとってある程度のストレスにはなると思います。でも猫も人が大好き、ご家族が大好きですから、元いた家にひとりで残されるよりは、一緒にいたいのではないかなと思います。新しい家でもその猫ちゃんが安心できる場所を作ってあげて、早く慣れさせてあげられたらよいかと思います。

引っ越しの準備時にできること

 いろいろなものが動いたり、引っ越し業者の方が入ったり、猫にとってもいつもと違うことが起こるので、ストレスを感じやすいかと思います。業者の方が見積に家に入ったり、荷造りのためにバタバタする際には、なるべく静かな部屋や、家の中でも安心できる部屋に入れておくとよいかと思います。

隠れる猫
家の中の隠れスポットにアクセスしやすいようにしておくとよい(getty images)

 我が家の猫は、ちょっと不安なことがあるときの隠れる場所が決まっています。おそらく各ご家庭に猫の隠れスポットがあると思うので、引っ越しに関連するイベントが事前にあるときは、その場所にアクセスしやすいようにしておくとよいでしょう。

引っ越し当日はどうする?

 引っ越し当日は、業者さんの出入り、荷物の運び出しなどでドアを開け放したままかなり騒がしくなることが予想されます。脱走防止と猫の安全のためにも、その日はペットホテルに預けることも1案です。その際、当日に備えて事前にホテルに預けてみて、猫さんがどんな様子になるのか確認しておくといいでしょう。あまりにもホテルでは緊張してしまうようなら、動物病院にご相談いただき、不安を下げるお薬やサプリメントをあらかじめ処方していただくこともできます。

逃げる猫
引っ越し当日は脱走に注意する(getty images)

 実際に新居への移動の際は、新居での片付けもストレスになるでしょうから、いったんホテルに預けたり、ペットシッターさんに預かっていただいたりして、すべての搬入が終わって落ち着いてから猫を迎えに行くのもよいかもしれません。

 猫によってストレスの感じ方は違いがあります。ご家族と離れるのが嫌いな猫さんならなるべく一緒に移動するとよいですし、騒がしく落ち着かない状況が嫌いな猫さんなら、少し落ち着いてから移動させる方法もよいかと思います。

移動時間が長い場合のケアは?

 引っ越し先までの移動時間が長い場合、自動車を使われる方が多いのかもしれません。今から車に乗せる練習と、車の中でトイレを使う練習をしておくよいかと思います。動かない自動車の中で猫と遊んだり、トイレを置いておき、トイレを認識させたりしておくといいでしょう。車に慣れてきたら、動いている間はキャリーに入れて走行中の自動車に乗ることにも慣らしてあげてください。

 車の中では、おいしくて特別なオヤツをあげて練習を進めることも大切です。

車に猫
車で長時間の移動となる場合は、事前に慣らしておこう(getty images)

 電車移動の場合は、キャリーに入れたままの移動だと思います。中の様子が見られるようなキャリーを用意しましょう。床にキャリーを置くと暖房が強すぎたりすることもあるので、キャリーをどこに置くか考えてあげてください。また、キャリーの中に長くいると緊張しやすい場合は、動物病院にご相談いただき、不安を下げるお薬やサプリメントを事前に処方していただくこともできます。

脱走防止に細心の注意を

 新居でも、脱走防止には細心の注意を払ってください。バタバタしていますので、逃げてしまうとおそらく猫は迷子になります。また外に逃げなくても家の中で迷子になってしまうかもしれません。家族もまだよくわからないような、新居の中の隙間に入りこむかもしれません。

 落ち着くまで作業中はケージに入れておく必要があるので、そのためにも事前にケージの準備やケージに入っていることに慣れさせることも大切です。

新しい住まいへの慣らし方

 前のお家で使用していたベッドやトイレはしばらくはそのまま使ってもらうほうが安心するかもしれません。引っ越しと同時にすべてを新しくするのではなく、少しずつ新しいものに切り替えたほうがよいのではないかと考えます。また猫が落ちつきやすくなる人工的に作った安寧フェロモン(フェリウェー)もありますので、新しい家にスプレーしておくこともできます。

 最初は落ち着かない状態で家中うろうろして家を確認すると思いますが、徐々に好きな場所や安心する場所を見つけていくと思うので、見守ってあげます。もし猫の立ち入りを禁止したいところがあるのであれば、最初からそこは閉めておき、入れないようにしてください。

猫と人
焦らずゆっくり新しい家に慣らしていく(getty images)

 広い家で、目が届かないところに行ってしまうと想定できない危険がありそうな場合、猫が探検できるエリアは目の届く範囲にしておくと安心かもしれません。神経質な猫さんの場合は事前に動物病院から不安を下げるサプリメントなどを処方していただき、引っ越した直後から1週間くらいはのんでもらってもいいかもしれません。

 新しい家には、猫のためにキャットウオークを作っていたり、猫の家を作っているかもしれません。猫さんは最初からそれを使ったりそこに入ったりしてくれないかもしれません。無理に入れたり乗せたりせず、ゆっくり見守っていってあげるのが猫にとってはありがたいかと思います。

(次回は10月9日公開予定です)

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【前の回】家猫になった元野良猫が外に出たがり鳴き続ける 完全室内飼育でどう寄り添う?

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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