ケージ飼育は緩やかに心と体を殺す 地獄を生き抜いた採卵鶏「りり」からの教え

採卵場から保護された時の「りり」。文末に掲載する今の姿と見比べてほしい

 2021年11月、私たちは1羽の鶏を保護しました。名前は「りり」ちゃん。彼女はケージ飼育の採卵養鶏場で飼育されていた鶏です。

 我が家にやってきたときの様子は、ぼろぼろの羽、青白いむき出しの皮膚、羽毛を失った尾っぽ、ほとんど白くなってしまったとさか、ほとんど意志を表さず、動かず、まるで別の世界から来たかのような様子でした。

まるで地獄のような環境を生きる採卵鶏

 実際に彼女は、私達人間が見ている世界とは全く違うものを見て、生まれてからの520日を過ごしてきました。

 彼女の一生のはじまりは、孵化場の孵卵器という機械の中でした。本来は生まれたらすぐに母親の羽毛の下に潜り込む習性を持っていますが、母親はそこにはいません。

 ベルトコンベアに流し込まれ、運ばれ、大きな人間の手で掴まれて箱に詰め込まれ、運ばれ、そして最初のケージの中に入れられました。

りりは生まれて400日、地獄のようなケージの中で耐え続けた

 120日をそこで過ごした後、捕獲され、次のケージ=バタリーケージの中に入れられました。

 毎日毎日、ただ卵を生み、餌を食べて水を飲む。本来卵は隠れて生みたいのに、足元も横も全て金網で、隠れる場所は一切ありません。足の裏には金網が食い込み、金網が食い込んだ状態で眠るときも含めて24時間居続けなくてはなりませんでした。狭いケージの中には数羽が詰め込まれ、仲間に踏まれたり仲間を踏みつけたりしながら過ごします。金網に羽毛がこすられて、全身の羽毛がなくなっていきました。毎日、数万羽の仲間の悲鳴と、カチャカチャという爪が金網や壁を引っかく音と、ゴーッという換気扇の音が響く異常な空間。

 400日、りりちゃんは地獄のようなケージの中で耐え続け、そして、自分の意志を持つことを忘れました。

新しい家で本当の世界を知っていく

 りりちゃんの新しい家は、自分の部屋と、朝から夕方まで自由に出入りできる広い庭です。でも彼女は数週間、与えられた部屋の中の一箇所でじっとし続けていました。抱っこして草むらに連れ出すと、暗い場所に隠れるために逃げていきました。

 しかし徐々に、私と一緒に外を散歩する楽しみや、地面を掘る楽しみを知り始めました。ある日、私が縁側で仕事をしていると、りりちゃんは自分で部屋から出て、散歩に行こうと誘いに来ました。

 その日から、彼女は本当の世界を発見し始めました。

空を発見!

 ある日の夕方、りりは空を見上げていました。変化する雲と、青空と、夕焼けに気がついたのです。

 その日からとまり木で眠るのを中断し、窓際で外を見ながら眠りにつくようになりました。窓を閉めに行くと、網戸に顔をくっつけて、空を見ているのです。その行動は1カ月ほど続きました。

網戸に顔をくっつけて、空を見ている元採卵鶏の「りり」

 りりはウィンドレス鶏舎にいた鶏です。窓がないのです。鶏舎からは空は見えず、明るい自然な光もなかったのです。人間を窓のない部屋に監禁すれば虐待に当たるでしょうが、動物にはそういった劣悪な環境を強いているのです。

水が流れることを発見

 りりちゃんの趣味は、私が流す水の先端を追いかけることでした。流れる水、そこに浮かぶ葉っぱの破片などが楽しくて仕方なかったようです。2カ月ほどで飽き、ぱったりとやめてしまいましたが、その間、水受けの水を足でかき出し、お陰で水は真っ黒になるけれど、りりの足はいつも清潔でした。

 養鶏場ではニップルから水をつついて飲む方式が一般的です。そのため、水が有機的に流れ、美しいことをりりは知らなかったのです。

色んな種類のごはんを発見

 養鶏場では毎日全く同じ餌が与えられます。濃厚飼料という独特の臭いのする餌です。保護された時、りりちゃんには野菜、そして自然農の米を与えました。すると、念のため用意しておいた濃厚飼料に彼女は一切口をつけませんでした。飽き飽きしていたのでしょう。

 その後りりちゃんの食偏はなかなかおもしろく、レタスが流行る時期、りんご、青菜と変遷を遂げています。きのこは長いこと飽きずに食べていましたが、半年してついに食べなくなりました。今はトマトとぶどうが流行っています。

 これらに加え、彼女は外で自分でごはんを見つけています。基本的には、虫や雑草、落ちている種子などでお腹は満たされているようです。自分でごはんを探すことが楽しいのです。

ケージ飼育から離れよう

 バタリーケージを出てから、りりは初めて地球上に生まれたようでした。家に来た日から、彼女は心を成長させていきました。「卵」に奪われたすべてを、今、彼女は取り戻しました。

生きる喜びを知り、心を成長させた現在の「りり」。保護当初とは見た目もまるで違う

 ケージ飼育は1~2年かけて緩慢に動物を殺すシステムです。ケージの中では、たとえと殺されなくても長くは生きられません。ぼろぼろになって、挙句の果てには生理が止まって卵が産めなくなるだけではなく、精神を崩壊させるのです。

 養鶏業者は1〜2年で産卵率が落ちると主張しますが、でもそれは、ただ、劣悪な環境と行き過ぎた品種改変がそうさせているに過ぎません。

 今、日本にはかつてのりりちゃんと同じように苦しむ1億8千万羽の鶏が、卵のためにケージに閉じ込められています。

 どうか、あなたの消費を変えてください。

 平飼い、放牧という選択肢がすでにあり、卵を減らすという選択肢も皆さんは持っています。

「ケージから救出された採卵鶏のりりの物語」

(次回は8月8日公開予定です)

【前の回】「豚の餓死事件」でわかる日本の畜産動物保護が最低ランクな理由

認定NPO法人アニマルライツセンター
1987年設立。動物たちの苦しみを効果的になくし、動物が動物らしくいられる社会を目指す。食べ物や衣類、娯楽や実験に使われる動物など人の支配下に置かれている動物を守る活動と、エシカル消費の推進に取り組んでいる。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
Follow Us!
編集部のイチオシ記事を、毎週金曜日に
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。


動物病院検索

全国に約9300ある動物病院の基礎データに加え、sippoの独自調査で回答があった約1400病院の診療実績、料金など詳細なデータを無料で検索・閲覧できます。