柴犬が苦手な足拭きやブラッシングの慣らし方 ケアを受け入れてもらうトレーニング
散歩のあとの足拭きや換毛期のブラッシングに苦労している柴犬の飼い主さんはいますよね。触られたり抱き上げられたりするのが苦手な柴犬は、身体的ケアを受け入れるトレーニングが特に重要な犬種です。シニアになってから介護のしやすさにもつながるので、せひ慣れる練習をしておきたいもの。
獣医師の山下國廣先生によれば、「柴犬は無理強いされると飼い主に怒りを感じることがあります」と、ケアの練習不足が関係の悪化を招くこともあると言います。すでにケアが苦手になっていても、適切な手順でトレーニングを行えば受け入れてくれるようになります。
柴犬は無理強いされると怒りを感じる
犬の足や体を拭いたりブラッシングをしたりするケアができれば、清潔に保つことができ、犬も飼い主さんも快適に過ごせるうえ、将来の介護にも役立ちます。ケアは犬種を問わず必要ですが、特に柴犬には触られることが苦手なタイプが多いので、ケアの練習をすることが重要です。
「練習をしなくてもやっているうちに慣れる」と無理強いするのは禁物。柴犬のように野生的な犬種はサバイバル能力に長けているので、ネガティブな体験を1回で覚えて回避しようとします。ケアから逃れるために攻撃的になり、飼い主さんに怒りまで感じるようになり、関係にもひびが入ってしまいます。
柴犬をケア嫌いにしてしまうパターン
柴犬は皮膚感覚が鋭敏なのでむやみに接触されるのが苦手で、拘束も好きではありません。足拭きやブラッシング、爪切りなどのケアもハードルが高いものの、子犬のころからケアを含む社会化トレーニングを行って慣らすことはできます。
しかし誤った対応をすると、柴犬はケアに一気にネガティブな印象を持ってしまいます。ここでは今まで相談されたケア嫌いの柴犬のケースを紹介します。もし当てはまるケースがあれば、今からでも適切な方法で教え直しましょう。
・子犬のころに叱りながらケアをしていた
子犬はタオルやウエットティッシュ、ブラシが気になってじゃれたり、「ヤダヤダ~!」とむずかって逃れようとしたりする。攻撃の意図はない段階だが、飼い主が叱ったことでケアにネガティブな印象を持ち、どんどん嫌いになっていく。
・力づくで押さえてケアをしていた
理不尽なこと(教えられていないこと)を強いる飼い主から、いじめられているように感じる。やがて飼い主を自力で排除するために、うなったりかんだりするように。特に柴犬は無理強いする飼い主に怒りまで感じて攻撃性が高まり、対立関係から問題に発展しやすい。
・助けを求められるとケアをやめていた
苦手なケアをされそうになると、「助けて~!」と逃げたりかばってもらおうとしたりするタイプもいる。排除ではないが、ケアを回避しようとしていることには変わりはない。それを「仕方がない」と許してケアを中断していると繰り返すようになる。
・ガムやおやつで犬の気をそらしてケアをしていた
柴犬が好きなガムやおやつを与えている間にケアを済ませようとするのはだまし討ちに等しく、学習するとガムやおやつを出しただけでうなるように。一生のうち数回程度のことであればいいが、毎日や定期的に行うケアを教えるには不向き。柴犬は食物関連性攻撃行動が出やすく、攻撃性を助長する可能性もある。
足拭き・体拭き・ブラッシングを教え直す
すでにケアが苦手になっている柴犬にも、受け入れてもらえるように教え直すことは可能です。「すごくイヤ」を「ちょっとイヤだけど良いこともある」と印象を変えていく方法がおすすめ。ここでは足拭きを例に紹介しましょう。散歩のあと以外のタイミングでも日常的にトレーニングをするのがコツ。慣れさせる練習のときは、柴犬に「逃げる(回避する)」という選択肢を与えないためにリードをつけて行いましょう。
[足拭きを教え直す方法]
準備
(1)散歩のあとの足拭きを1週間以上やめる
(2)主食のドッグフードを食器で与えるのをやめて、すべて飼い主の手からごほうびとして与える
手順
(1)足拭き用のタオルを見せてから、ほめてごほうび(フード)を与える
(2)何げないときに犬を呼んで、タオルを見せてから、ほめてフード(ごほうび)を与える
(3)片手にタオル、空いている手にフードを多めに持ち、タオルを犬に近づけたらほめてフードを与えることを繰り返す。犬が「まだフードをもらえる」と期待しているときに、タオルを遠ざけてフードを与えるのもやめる
(4)タオルをだすとちょっと緊張するが、フードを期待してしっぽを少し振るようになったら、タオルで足先を少しだけ触ってからほめてフードを与える
(5)このように慎重に段階を踏んで、リラックスして足拭きを受け入れるまでトレーニングしていく
体を拭くことに慣らしたい場合は、手順の(4)を「タオルで背中を触る」に変えます。ブラッシングに慣らしたい場合は、タオルをブラシ(ソフトスリッカーやピンブラシ)に変えて、手順の(4)を「ブラシで背中を触る」に変えます。
ブラッシングについて余談ですが、換毛期の抜け毛の多さに苦労している飼い主さんがいますよね。柴犬の被毛は毎日ブラッシングをしていると、上毛(オーバーコート)のすぐ下に抜けそうな下毛(アンダーコート)が常にたまっている状態になり、少し動くだけで抜け毛がフワフワと抜けて周りに散ってしまうのです。1週間に1回程度に減らすと、完全に抜けた毛が密集してかたまりになるのでまとめて除去できます。ケアや掃除の回数を減らせるので犬も飼い主さんも楽ですよ。
難易度が高いシャンプー・爪切り・歯磨き
柴犬は不思議と水にぬれることを嫌がる犬が多いですよね。もし自宅でシャンプーをしたい場合でもいきなり洗ってはいけません。日常的に細かい手順を踏んでトレーニングを行うことが大切です。
[シャンプーを教え直す方法]
準備
(1)主食のドッグフードを食器で与えるのをやめて、すべて飼い主の手からごほうびとして与える
手順
(1)お風呂場に連れて行って、ほめておやつを与える
(2)お風呂場の壁にシャワーをかけてから、ほめておやつを与える
(3)お風呂場の床にシャワーを流してから、ほめておやつを与える
(4)犬の足先に少しだけシャワーをかけてぬらしてから、ほめておやつを与える
(5)ぬらす範囲を少しずつ増やしていく(必ずほめておやつを与える)
シャンプーや歯磨き、爪切りは難易度が高いので、無理をせず動物病院やトリミングサロンに頼むのも一案です。もしくは専門家に適切な方法を教えてもらいましょう。
トレーニング以外の方法で解決を図る
トレーニングには時間や根気が必要なので、仕事や家事で忙しい場合は難しいかもしれません。それなら無理をしないで別の方法を考えましょう。たとえば足拭きが苦手なら、玄関にぬれタオルを敷いてそこを柴犬に歩かせて足拭きの代わりにします。これは決して手抜きではなく、困りごとを解決するひとつの方法としておすすすめします。
そもそも犬のケアは人間側の都合で行っているわけですから、「やらなければいけない」という思い込みを捨てましょう。無理強いしたり叱ったりしながらケアをするより、飼い主さんができる範囲で愛犬の性格に合わせた方法で行うこと。柴犬にとっても苦ではなく、飼い主さんにとっても負担が減ります。トレーニングだけが解決方法ではないことを知っておいてくださいね。
【前の回】柴犬に伝わるほめ方・叱り方 飼い主にとって望ましい行動を増やそう
- 監修:山下國廣(やました・くにひろ)
- 獣医師、軽井沢ドッグビヘイビア主宰。科学的なアプローチと犬の立場に立った発想で人と犬のコミュニケーションをサポート。家庭犬の問題行動治療、しつけ方指導、トレーニング指導のほか、里守り犬(モンキードッグ)など野生動物対策犬の育成指導も行う。愛犬のすぐり(甲斐犬)を日本犬初の救助犬に育てて多くの現場に出動した。
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