トリマーの顔に「もう来ないでください」 嚙んで暴れていたトイプーがウトウトできた
目が合わず、刺激に過敏すぎるトイプードルのウィルくん。暴れてトリミングもまともにできない。トイプードルにトリミングは必須、なのにどうしよう……。困り果てた家族は救いを求めUG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)へ駆け込んだ。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ!
「トリミングで毎回大暴れ――。それ、理由があるかもしれません」
不思議くん「ウィル」
1週間の社会化お泊まりに突入したウィルくん。最初こそ他の犬にちょっと触れられるだけで絶叫していたが、お父さんとお母さんの心配をよそに徐々に群れに慣れ、犬たちと遊べるように。現在UGでは、社会化お泊まりの様子を日に何度かLINEで画像やムービーとともに飼い主に送っているが、当時は夜に店長が公開するSNSでのみ、その日の様子を伺うことができた。
「SNSがアップされたら夫婦二人ですぐにチェック。食い入るように見て、ウィル頑張ってるね、大丈夫そうだね、と胸をなで下ろしていました」とお父さん。お母さんは「あの1週間は、ウィルだけでなく私たちが試され、鍛えられた時間だった。帰ってきたらこうしよう、ああしようと夫と話し合いました」と語る。
店長はウィルくんについて、「それまであまり会ったことのない、不思議くん」と評する。「正直1週間で変われるかはわかりませんでしたが、どうにかしないと、という気持ちの方が強かった。このままだときっと、ウィルくんも、お父さん、お母さんも追い詰められ、一緒に暮らすのがしんどくなってしまうから」
触られることが苦手で嚙んだり暴れたり。それをどう克服するかは、犬それぞれの性格を見て判断しなければならない。「妻はもともと犬が苦手だったこともあり、どこかおっかなびっくり触ろうとしていて、でもうまくいかなくて、そのイライラやピリピリをウィルが感じ取っているようだった」とお父さんは振り返る。その話から店長は、あえて刺激を与え、慣れさせながらウィルくん自身に考えさせる道を選ぶ。
トリミング中もパニックに
こうして1週間のお泊まりが終わったウィルくん。一番変わったのは「表情」だった。
「ウィルはそれまで、目尻がハの字に下がりいつも不安そうな顔をしていました。ところが、お泊まり後は自信にあふれたとてもいい表情をしていたのです」とお父さんは驚きを隠さない。そして、お母さんが何よりうれしかったのが、目が合うようになったこと。「一気にコミュニケーションが取れるようになりました」
もう一つ変わったのが「見た目」。おうちに帰るのを前にUGでトリミングしてもらったのだ。実はそれまで、ウィルくんは2回ほどトリミングに行ったことがあったが、2回とも暴れてまともにカットできなかった。
最初は動物病院併設のサロン。目の周りを中心にと頼んだら、確かに目の周りはカットされたものの、中途半端なモヒカンのような妙な仕上がりに。「最後に『またお願いします』と言ったら、トリマーさんが『え!?』と。顔に『もう来ないでください』と書いてありました」とお母さん。
2回目は出身ブリーダーの元で。カットはしてもらえたものの、さんざん暴れたと言われ、さらに「トイプードルは一生トリミングが必要。人の言うことを聞くようにしつけをしないとどこも引き受けてくれなくなりますよ」と忠告された。渡されたカット後の写真のウィルくんは、いつもに増して不安げな情けない表情をしていたという。
動物病院やトリミングで嚙んだり暴れたりして拒まれてしまう犬は、UGに来る子の中にも少なくない。店長はこう指摘する。
「特にトリミングの場合、警戒心が強い子、敏感な子に無理をさせていないのか? ストレスがかかるような扱いをしていないか? もし毎回『暴れます』と言われるようなら、別のサロンを探した方がいいかもしれません」
トイプードルやミニチュアシュナウザーなどは、見た目だけでなく健康のためにも定期的なトリミングが必須。飼い主がセルフカットできなければ基本的にはサロンに通うことになる。技術やカットの好みで選びがちだが、「犬にやさしいトリミングをしてくれるか、見極める必要がある」と店長。ハサミを使うトリミングは、顔まわりを触られるのが苦手な子にとってはとても怖いこと。強引に進めれば暴れられて事故につながる可能性もある。実際、大ケガをしたり、最悪命を落としたりといった悲しいニュースも。
最近は、犬の心身になるべく負担をかけない「やさしいトリミング」が主流になっているという。「UGにはハイパーな子、警戒心の強い子、刺激に過敏な子が多くやってくる。トリマーは、技術はもちろん、犬たちに無理をさせずにやさしく接するよう気を配っています」と店長。
ウィルくんもUGでの最初のトリミングは、特に顔まわりに過敏に反応したという。「ハサミのカシャカシャという音でパニックに。ブローの際にスリッカーブラシを使うのもとても嫌がりました」と担当のトリマーさん。とにかく時間をかけて少しずつ慣れさせ、ウィルくん自身に自信を持たせていったという。「今ではシャンプーもカット中もずーっと気持ちよさそうにウトウト寝ています」とトリマーさんは笑う。
犬を信じて、家族で乗り越える
お父さんとお母さんは、ウィルくんが苦手を克服できるようにといろんなところに連れていった。子どもと触れ合う機会が少ないため、あえて幼稚園の近くをお散歩し、子どもたちのはしゃぐ声などを聞かせて慣れさせた。現在4歳。頑張った甲斐があり、犬も人も大好きなフレンドリーなウィルくんに。もちろん、首輪やリードの装着は問題ナシ、洋服も着こなしオシャレを楽しんでいる。
コロナ禍でお母さんは在宅勤務が増えた。パソコンや電話に向かうと、ウィルくんは「お仕事なんだね」とばかりに自分のベッドでまったりと過ごしているという。そんなウィルくんのテンションが上がるのが、3週間に一度のUGでのトリミング。「UGが好きすぎて、お店の近くまで来ると『オレはUGに行くんだー!』とものすごい力でグイグイ! トリマーさんたちが大好きでデレデレ甘えています」とお母さんは目尻を下げた。
「ここまで変わるとは思っていませんでした」と店長もうれしそう。「以前は子犬たちにまとわりつかれるとヒャーヒャー言っていましたが、最近じゃ『そういうのダメだぞ!』と先輩風を吹かせ指導するほどに(笑)。ずっと見守ってきたので感慨深い!」と笑顔を見せ、こう続ける。
「『吠えるから、嚙むからダメ、ではなく、なぜ吠えるのか、嚙むのかを考える』。僕はいつもそう言っていますが、触られたら叫ぶ、暴れるも同じ。強引に封じ込めようとすれば、下手するとますます悪化してしまう。わからなければ信頼できるプロの手を借りて、その理由に目を向けて理解する。自分の犬を信じて、人間も変わるべきところは変わる。家族で乗り越えてこそ意味があると思っています」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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