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飼い主が留意すべき点とは? いよいよマイクロチップの義務化が施行

 ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主の暮らしにとって身近な話題を法律の視点から解説します。今回は、マイクロチップ義務化についてです。

6月1日、マイクロチップの義務化施行

 今回も、今年スタートする重要な制度の一つとして、マイクロチップの義務化の内容や準備の進捗状況について説明します。

 2020年5月に公開した記事で、動物愛護法の改正により、犬猫の販売業者に対して、マイクロチップの装着と情報登録が義務化されるという話をしました。その際、あと2年ちょっとで施行される旨をご案内したところですが、いよいよ、今年6月1日の施行日が迫ってきました。

飼い主に関わる点とは

 あらためて確認しますと、一般飼い主の皆さんにとって、マイクロチップの装着は「努力義務」です。現在飼っている犬猫に対してはもちろん、今年6月以降に犬猫を飼い始めた場合でも、一般飼い主がマイクロチップを装着する義務はありません。

 一方で、今年6月以降に飼う犬猫について、既にマイクロチップが装着されている場合、「変更登録」は義務とされていますので、注意が必要です。ブリーダーやペットショップで買う場合は必ず入っていますが、販売業者ではない知人などから迎える場合はマイクロチップが入っているか否かはわからないので、確認しておくとよいでしょう。

すでに装着している場合の留意点

 今回の法律では、マイクロチップのデータ管理事務を行う指定登録機関を指定することが定められました。改正法の成立時点では、どこがその事務を取り扱うのか決まっていませんでしたが、その後、公募に基づき申請がなされ、審査の結果、公益社団法人日本獣医師会に決まりました。

 これまでも、日本獣医師会を中心に運営する「動物ID普及推進会議」(AIPO)の規格によるマイクロチップが装着され、情報登録がされています(犬と猫で約277万件の登録件数)。別の団体による規格の登録を含めると300万件を超える件数となりますが、犬猫の推計飼育頭数から計算する限り、登録割合は2割足らずで、まだ高くはないのが現状です。

犬の個体識別
マイクロチップへの登録情報は国が管理保管する情報となる ©gettyimages

 同じく日本獣医師会が管理事務を行うとはいえ、今後は、あくまでも国が管理保有する情報となりますので、AIPOが保有する情報を国に移行することはできません。現在AIPOに登録されている飼い主に対して、国のデータベースへの登録を促し、また、新たに犬猫を購入する飼い主の情報を順次登録することで、登録件数・割合を増やしていくことになると思われます。

 また、政令の改正により、情報登録や変更登録の際の手数料も決まりました。オンライン申請の場合は300円、紙の申請の場合は1000円の手数料を収めることになります。

 その他、環境省のウェブサイトに、「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」が設けられ、詳しい説明がされています。こちらを参照いただければ、多くの情報が得られると思います。

マイクロチップはあくまで有意な個別識別手段

 今年の6月からは、繁殖業者のもとで生まれ販売される犬猫については、ペットオークションを経由してペットショップで販売されるものも、繁殖業者から飼い主へ直接販売される個体も、すべてマイクロチップが装着され、犬猫の情報や繁殖業者の情報が登録されます。そして、飼い主が購入した時点で、変更登録により、国のデータベースに飼い主の情報が記録されることになります。

 現在飼育されている犬猫については、あくまでも努力義務ですが、あと10年もして飼育されている犬猫が入れ替わるくらいになれば、ほとんどすべての犬猫にマイクロチップが装着されている時代がやってくるでしょう。

猫の親子
マイクロチップの装着義務は繁殖業者に対する©gettyimages

 ただ、割合は決して多くないでしょうが、マイクロチップが入っていない犬猫も存在し続けることになると思われます。マイクロチップは、有意な個体識別の手段ではありますが、その有無によって優劣があるわけではなく、一人前の犬猫として認められるための要件ではないと考えます。マイクロチップの有無にかかわらず、同じように取り扱うことが基本だと思います。

【前の回】今年5月、「愛玩動物看護師法」が完全施行 愛玩動物看護師は国家資格が必要に

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
細川敦史弁護士が、ペットの飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点からひもときます。
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