犬や猫のマイクロチップ義務化 どんなことが期待できるの?

 今回は、犬や猫の飼い主に非常に関係がある話題です。

 「マイクロチップ」という言葉は、皆さんも聞いたことがあると思います。

 長さ12ミリメートルほどの小さなチップで、その中に15桁の識別番号が内蔵されています。これを専用のリーダーで読み取り、登録された情報と照らし合わせることで、飼い主がわかります。

これまでは「空チップ」「古チップ」も

 2019年の動物愛護法改正により、犬や猫に対するマイクロチップの装着と、あわせて所有者情報等を登録することが義務化されました。ただし、マイクロチップの装着と最初の登録は、犬や猫の販売業者のみ(繁殖業者・ブリーダーを含みます)に課される義務であり、一般の飼い主に対しては努力義務とされています。このため、すでにペットとして飼われている犬や猫に入れることは、特に強制されません。

 マイクロチップについては、これまで法律上の後ろ盾はなく、ペットショップなどで入れてもらったものの、肝心の所有者情報がまったく登録されていなかったり(空チップ)、所有者や住所が変わったのに情報が更新されない(古チップ)など、制度として不十分で、さまざまな問題が指摘されており、普及率は決して高くはありませんでした。

注射器に似た専用の器具を使って犬猫の皮下に挿入されるマイクロチップ

 今回の法改正により、最初の所有者情報の登録だけでなく、所有者が変わったときの変更登録も義務となりました。これにより、今後販売される犬や猫については、正しい所有者情報が入ったマイクロチップが装着され、①迷子になったときに見つかりやすくなる、②(飼い主情報が入った犬や猫を普通は捨てないため)遺棄の防止に役立つことが期待されます。

 さらに、③繁殖業者・ブリーダーの段階でマイクロチップが入ることで、犬や猫が生まれてから、どういうルートで、どのように所有者が変わってきたのかを、たどることができるようになります(これを「トレーサビリティー」といいます)。

 その点で、マイクロチップの登録は、自動車登録や不動産登記の制度と似ているかもしれません。情報を管理している運輸支局や法務局にいけば、これまでの所有者の履歴や、その物の詳しい情報を調べることができます。

マイクロチップが入った犬や猫が当たり前に

 また、ご存じのように、犬の所有者については、狂犬病予防法上、市町村への登録申請義務と鑑札の装着義務があり、この制度と重複しないか気になるところです。この点についても考えられており、マイクロチップの情報登録が完了すれば、狂犬病予防法による市町村への登録があったとみなされ、マイクロチップが鑑札のかわりになります。

マイクロチップの中には識別番号が内蔵されている

 なお、マイクロチップに関する改正は、2022年6月ごろに施行される見込みであり、それまでの間に、社会へ周知をしたり、登録手続きを行う組織(指定登録機関)など細かい仕組みができあがったりしてくるはずです。慌てて何かをする必要はないと思いますが、あと2年ちょっとで制度がスタートし、マイクロチップの入った犬や猫が当たり前の社会に変わります。

 第1回のコラムで、「動物は法律上モノじゃない!」と言ったわりに、車や不動産と同じような制度で、マイクロチップを勝手に体内に入れられ管理されることが義務化されるなんておかしいじゃないか、と不満に思う方がいるかもしれません。ただ一方で、法律上、人間と全く同じようにはならないことは理解しておく必要があります。

 もちろん、人間と同じように取り扱えないといってもあくまでも法律の世界だけのことで、ペットが皆さんにとって、かけがえのない家族の一員であることに変わりはありません。

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(次回は6月15日に公開予定です)

2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。ペットの法と政策研究会代表、ペット法学会会員。

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この特集について
おしえて、ペットの弁護士さん
細川敦史
細川敦史弁護士が、ペットの飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点からひもときます。
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