今年5月、「愛玩動物看護師法」が完全施行 愛玩動物看護師は国家資格が必要に

 ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主の暮らしにとって身近な話題を法律の視点から解説します。今回は、動物看護師についてです。

飼い主に寄り添う動物看護師

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 2022年は、動物関連の重要な法律が施行されますので、2回に分けてご紹介します。 今回は、新しくスタートする、「愛玩動物看護師」の説明です。

 大切にしているペットを連れて動物病院を訪れたとき、受付で最初に応対されるのは、獣医師ではなく、看護師さんのことが多いのではないかと思います。急な体調不良があったときなどは、動物病院に着くまで、あるいは到着してからも、愛犬・愛猫・愛鳥がどうなるのかと不安でいっぱいになるものですが、看護師さんは、そんなときに、飼い主に寄り添いつつ、冷静に対応していただける心強い存在です。

手をつなぐ飼い主とペット
飼い主とペットにとってより身近で、優しく寄り添ってくれる動物看護士

 動物病院の看護師さんたちは、これまで特に資格がなくても、動物病院での一般的な事務はもちろん、獣医師のサポートをすることができました。民間資格としては、一般財団法人動物看護師統一認定機構が実施する「認定動物看護師」が存在していました(2021年12月時点の登録者27,537名)。それがこの度施行となる「愛玩動物看護師法」により、動物看護師の国家資格が誕生します。

「愛玩動物看護師法」成立の背景

 10年以上前から、犬猫の飼育頭数は15歳未満の子どもの人口を超えています。以前から犬や猫をはじめとするペットを家族の一員と考える人が多くなっていましたが、それに伴い獣医療の専門家・高度化が進み、飼い主が動物病院に求める獣医療の水準も高くなっています。(以前、獣医療ミスを疑う飼い主の相談について書きました)

 こうした背景から、2019年の動物愛護管理法改正と並行して検討が進められていた「愛玩動物看護師法」は、同じく2019年6月に、議員立法により成立しました。

 動物愛護管理法においても、改正のたびに、獣医師が関与する場面が増えています。獣医師の業務をサポートする看護師の重要性が社会的に認識されてきた結果として、今回の法律制定に至ったともいえます。

法律によって変わること

 愛玩動物看護師法の目的は、愛玩動物看護師の資格を定めることにより、業務の適正を図り、愛玩動物に関する獣医療の普及向上及び適正飼養に寄与することとされています(1条)。

 愛玩動物とは、犬猫に加え、政令で定める動物とされ(2条1項)、現段階ではオウム科、カエデチョウ科、アトリ科の鳥が予定されています。

診察を受ける猫
国家資格の有無によって、できる業務内容も変わってくる

 愛玩動物看護師が行う業務として予定されているものは、以下の3つです(2条2項)。

① 診療の補助(獣医師の指示の下に行う採血、投薬、マイクロチップ挿入、カテーテルによる採尿など)
② 愛玩動物の看護(入院動物の世話、診断を伴わない検査など)
③ 愛玩動物の愛護・適正飼養に関する助言など

 上記のうち、②③は資格を有しないスタッフでも実施可能ですが、①については、愛玩動物看護師でなければ行えない職務です。

 また、資格を有しない者は、愛玩動物看護師、またはこれと紛らわしい名称を使うことができません(42条)。

今年5月に完全施行

 愛玩動物看護師の養成に必要な科目や国家試験などの詳細は、法律制定後も国の検討会において検討が続けられ、2021年7月に、農林水産省と環境省によって、『愛玩動物看護師法の施行に向けた検討状況について』が公表されました。

 今年5月に愛玩動物看護師法は完全施行となり、第1回の国家試験は、さらに1年後の2023年5月に予定されています。

 大学で必要な科目を履修後に卒業、または、指定を受けた専門学校で3年以上知識技能を習得することが受験資格を得る通常のルートですが、既卒者・在学者や、5年以上の実務経験を有する現任者については、それぞれ特例措置が定められています。

 試験制度の詳細については、上記の国の公表資料や、直近の情報については、国から大学、専門学校や動物病院などに提供され、あるいはインターネットで公表されると思いますので、随時調べていただければと思います。

おわりに

 動物病院と法律事務所、全く別の分野ではありますが、共通点があると思いました。

 法律事務所は、実際にトラブルがあったとき、裁判になったときに駆け込む場所と思われがちですが、トラブルにならないよう、平時から準備をするといった使い方もあります。

 動物病院も、ペットが病気やけがをしたときに慌てて駆け込むだけの場所というのではなく、普段から家族であるペットの健康管理やしつけも行える場所として、多くの飼い主が気軽に利用できるようになるとよいと思います。

(次回は1月17日公開予定です)

[前の回]繁殖業者が虐待の疑い、犬1000匹が劣悪な環境に 繰り返さないため必要なことは

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

sippoのおすすめ企画

sippoの投稿企画リニューアル! あなたとペットのストーリー教えてください

「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!

この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
細川敦史弁護士が、ペットの飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点からひもときます。
Follow Us!
編集部のイチオシ記事を、毎週金曜日に
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。


動物病院検索

全国に約9300ある動物病院の基礎データに加え、sippoの独自調査で回答があった約1400病院の診療実績、料金など詳細なデータを無料で検索・閲覧できます。