3匹目の預かり犬も柴あちゃん! 目も耳も悪いのになでられまいとスルッと逃げる
インテリアデザイナーとして活動する傍ら、保護犬の預かりボランティアをする小林マナさん。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫2匹と、預かり犬2匹と生活をともにしています。2匹目の預かり犬の家族が決まり、第12回では「3匹目の預かり犬・チョコ」のお話をお伝えしていきます。
柴あちゃんパート2
2匹目の預かり犬だった柴犬のココは、トライアルからきっかり1週間で無事に正式譲渡が決まりました。「おめでとう!」とボランティア仲間から言われ、「ありがとう」と返しつつも複雑な気持ち……。というのも、ココともう1匹、合計2匹一緒に譲渡されたので、うまくいかず帰ってくることを視野に入れていました。
ところが、ココを引き取ったご家族は、大変うれしそうに老犬2匹を連れて帰って行ったのです。
「老犬だからもらわれるはずなんかない」とちょっと思ってはいたものの、ココはトレーニングのかいもあって「若返ったのだから当然か」とも思う、複雑な心境でした。
ココの家族を見送り建物に入ろうとした時に、一緒にいたボラ仲間が笑いながら声をかけてきました。
「マナさんにまた老犬入ったみたいだよ」
「え?今日?また老犬!?」
また急だなぁと動物愛護団体ミグノン代表の友森さんのところへ行くと、ココが正式譲渡になるため、あらかじめ愛護センターから保護犬を引き出していたのです。
「はい。マナさんにちょうどいい柴あちゃん」
ココの時のように手渡されました。
軽い。ココよりも小さい黒い柴犬のおばあちゃんでした。
白髪多めの優しい顔で、尻尾の毛が少なく、ガリガリ、白内障と角膜炎、虹彩炎(こうさいえん)で両目が真っ白でほぼ見えない様子で、耳もかなり遠い……。
私の腕の中でじーっとしていましたが、ココより明らかに年を取っていて、弱々しい子でした。
ちょこちょこしているから「チョコ」と命名
自宅に連れて帰るとココとは正反対、じっとしていない、ちょこちょこ歩き回る。見えないと思っていた目はなんとなく見えているようで、最初こそ周りにぶつかっていましたが、次第にぶつからなくなりました。
ココと比べると、反応ももっとぼやっとしている。こんな子でもトレーニングできるのだろうかと思ったのですが、私が近くに行くとうれしそうに尻尾を振るではないですか!
「あらら!うれしいの!?」
やせ細った毛のない尻尾をプリプリ振ってくれるので、「可愛いね~」としゃがんでなでようとするとスルっとどこかに行ってしまう……。なにやらおもしろい子がきたぞと楽しみになったのでした。
そして、ちょこちょこと歩き回るから「チョコ」と命名。後で知ったのだけれど、「ココ」「チョコ」は、犬の人気の名前の1位と2位なんだそう。ミグノンが引き出した子なのに、我ながら平凡な名前をつけたなぁと笑いがこみ上げました。
ミグノンでは、保護したほとんどの動物の名前を友森さんがつけていのですが、吹き出しそうになる名前ばかり。もう1000頭近くの保護動物を預かり、送り出しているので、名前がかぶるからという理由のようです。ココの最初の「柴あちゃん」も変な名前ですよね。しかしココに続いてチョコも、2頭続けて同じ名前になっていました。
チョコの年齢は13歳くらい。目と耳が悪いだけで、内臓は何の問題もない、栄養不良のやせっぽち犬でした。
お散歩は大好きで、ひょこひょこと軽い体をリズミカルに歩き、とってもかわいいのです。
予想外!先住猫たちとの関係
新しいケージをミグノンから借りたので、チョコを入れて扉を締めてみたら……。なんと、ものすごい雄たけびをあげて出たがったのです。
うちはペット可のマンションだったとはいえ、うるさくほえる犬は苦情がきてしまいそうです。諦めて、扉は閉めずに寝てもらうことにしました。おとなしそうな風貌(ふうぼう)だったので、正直驚きました。
トレーニング的には、そのままチョコが黙るまで待って、黙ったら「おりこうさん!」と言ってトリーツをあがるのが常なのですが、つい、その声の大きさにひるんで扉を開けてしまいました。
「徐々にトレーニングしていこうね」と言いながら脳裏では、こんな子でも覚えてくれるのかしらと疑問がわいていました。
翌朝リビングに行ってみると、人の足音に反応して起きてきて、尻尾を激しくふり喜んでくれました。目が見えなくても動物の空間把握能力はものすごく高くて驚きます。あっという間に、私を追いかけ回すようになってしまいました。
ただ、かわいそうなことに、我が家の3匹の猫たちはチョコに困惑。
ココは、猫のギルに一発猫パンチを食らってからというもの、猫を怖がり近づかなかったのですが、チョコは目が見えないので、カーペットで寝ている猫たちの方にどんどん歩いて行ってしまうのです。
ギルが何度か猫パンチをしていましたが、チョコは全くおかまいなしに突進。しまいに猫たちは、床に降りなくなってしまいました。
ココも、最初の預かり犬だったタケも、家の中ではあまり動かなかったので、猫たちはペースを崩さずゆったり暮らせていたので、これは予想外の出来事でした。
次回は、私のトレーニング再開についてお話します。
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