高齢の保護犬ココの譲渡先が決まった 預かりボランティアは寂しさよりうれしさが強い

 インテリアデザイナーとして活動する傍ら、保護犬の預かりボランティアをする小林マナさん。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫2匹と、預かり犬2匹と生活をともにしています。第11回は「ココの譲渡先が決まった」お話をお伝えしていきます。

(末尾に写真特集があります)

張り切りすぎて2週間の入院生活

 ある朝起きたら何かがおかしい……。預かり犬の「ココ」の散歩を終えてコーヒーを飲もうとしたら「あれ?」口の脇からコーヒーがこぼれ出した。

 職場へ行き、朝イチからスタッフと打ち合わせしていたら、「マナさん顔が動いてないですよ!」と……。何かおかしいと思っていたら、左側の顔が動いていなかったのです。

 その日はちょうど歯科の予約日だったので、まずは歯医者へ。すると「脳かもしれないからすぐに救急病院に行かないと!」。紹介状を書いてもらいタクシーで病院へ駆け込みました。

 救急病院での診断結果は、顔面神経麻痺(まひ)。神経が炎症を起こしているため、左側の顔を動かす神経を圧迫しているのだろうと。そして「可能なら、今日か遅くとも明日から入院」と突然の宣告を受けてしまいました。

 保護犬の預かりボランティアを初めてから、早起き生活ができるようになっていたのですが、早く起きる以外はそれまでと同じ生活を続けていたので、睡眠時間がどんどん足りなくなり、とうとう体が悲鳴をあげてしまったのです。

 医師からは、「ストレス性のものなのでとにかく安静に、休むことがいちばんの治療。今までと同じ生活をすると、またすぐ振り返します。働き方を変えてください」と言われてしまいました。

 夫に相談し、ココをはじめ、我が家の猫たち、そして入院中の全ての決定を託し、病院には一切仕事を持ち込まないと決断をして、翌日から入院することになったのです。

保護犬の柴犬
ココは推定10歳くらいのときに来た

ココの譲渡先が決まった!?

 私の入院中、夫が大活躍で犬猫の世話を全部してくれていました。仕事もなんとかなり、今後私は実務を辞め、アイデア出しとジャッジと打ち合わせに参加していくことに。仕事量は激減して、早く家に帰る日々が始まりました。

 そんなある日、ココを保護した動物愛護団体ミグノンの譲渡会にココを参加させたところ、ある家族が元野犬の柴犬のオス(名前は貯蔵)と、ココにトライアル希望を出したのです。

 「え~~~~!? うれしいけど、神経質なココがもう1匹と同居?大丈夫かな?」と心配になり、一応「ココは2匹より1匹の方が向いている」と希望の方へ伝えました。

 ところが、2匹一緒にトライアルが決定。希望者さんの家までココに同伴したところ、愛情たっぷりに可愛がってくれそうなすてきなご家族がそこに。お子さんもいるし、頑固なおばちゃんのココには、ちょうどいいかもしれないなと思ったのです。

 うちにきた頃のココは、ハの字の眉毛みたいな顔をした情けない柴あちゃんだったのに、トレーニングをして若返り、すっかり柴おばちゃんに変身。どんな過去だって塗り替えられるのではないか?と過信してしまうほどでした。

 トレーニングは途中でしたが、ココはトライアルを経て、無事に譲渡されていきました。寂しいというより、うれしさのほうが強かったのを覚えています。「こんな高齢の犬を引き取ってくださる人がいるなんて」と驚きのほうが勝っていました。 

保護犬の柴犬
緊張のトライアル1日目。この日バンダナをしてトライアルに立ち会いました。ちゃんとここに!といって敷いてもらった場所に陣取ったので安心しました

そして虹の橋に登ったココ 幸せだったね!

 ココを引き取った方は、もともとSNSで発信をされている方だったので、すぐにお友達になり、コメントやDMを送ったりする間柄になりました。

 そして案の定、ココと一緒に引き取られた貯蔵とは、仲良しにはならずに平行線のままの写真がアップされていました。そんななか、お子さん達にもみくちゃにされて可愛がられている様子もたくさんあり、見る度にいつもほのぼのした気持ちになったものです。

 そして、旅行にもたくさん連れて行ってもらっている様子をいつも見ることができました。

抱っこされる柴犬
2017年、抱っこされてお出かけ

 さて、ココの飼い主さんからのメッセージを預かっています。

『赤ちゃん犬から長年連れ添った先住犬達を見送った後、どうしてももういちど犬と暮らしたくて、せっかくなら保護犬をと考えて譲渡会に参加しました。正直、期待と不安な気持ちでいっぱいでしたが、暮らし始めたら、犬はいま目の前にいる相手だけを見て、ありのままに生きているんだということを実感するようになりました。「いま」と「ここ」しか考えていないから、私たちも、余計なことは考えずに全力で「いま」「ここ」でココたちと一緒に生き切ったと思わせてもらえました。

 3年半は確かに時間としては短かったけれど、それでも本当に楽しくて、にぎやかで、可愛くて、宝物のような毎日でした(今でもやっぱりすごく会いたいけれど)。現在はまた3代目となる保護犬と暮らしています。ココ達との日々が本当にしあわせだったから』

抱っこされる柴犬
譲渡されてからはいつも誰かが抱っこしていたようです

 ココは、うちで預かって2年3カ月、譲渡されてから3年半楽しく暮らし永眠しました。どんな歳だったとしても、うちに来て、そして最後にすてきな家族に出会えてよかったなと思います。「幸せだったね!」と。

 そして、こんな私でもできることがあるんだとうれしくなり、またすぐ新しい犬を預かることになります。そして来たのが、ココを上回る柴あちゃんの「チョコ」です。

【前の回】預かりボランティアとトレーナー養成講座 柴あちゃんが柴おばちゃんに昇格!?

小林マナ
設計事務所イマ/インテリアデザイナー。内装設計やインテリアデザインをメインに活動。東日本大震災をきっかけに保護犬や老犬の預かりボランティアを始める。2019年に<SLOW>のイベントを開催。猫2匹、預かり中の保護犬2匹と暮らす。犬や猫たちのために自宅と事務所を併設、家族と事務所のスタッフたちと保護犬の預かりボランティアをしている。インスタグラム @imanimaltokyo

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この連載について
預かりマナの老犬日記
保護犬の預かりボランティアをしているインテリアデザイナーの小林マナさんが、預かり犬の魅力や老犬との快適な暮らし方をお伝えします。
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