預かりボランティアとトレーナー養成講座 柴あちゃんが柴おばちゃんに昇格!?

柴犬
表情が柔らかくなった預かり犬のココ

 インテリアデザイナーとして活動する傍ら、保護犬の預かりボランティアをする小林マナさん。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫2匹と、預かり犬2匹と生活をともにしています。

 どんな保護犬を預かれるのが楽しみにしていた “預かりさん”のマナさんのところには、なぜか老犬ばかりが集まって来ることになるのですが……。第10回は「トレーナー養成講座で学んだこと」をお伝えしていきます。

(末尾に写真特集があります)

犬の特性を知ることが必要だった

 犬のトレーニングに夢中になり、いよいよドッグトレーナー養成講座に入門。養成講座初日にドキドキしながら会場に行ってみると、100人は入れそうな会場は人であふれていました。そして、ほとんどは若い人でしたが結構年配の人もいたのでちょっとホッとしました。私は当時47歳だったので、結構年上の方だったのではないかと思います。

 まずは、犬の特性からスタートでした。「動物が大好き!!!」とか言いながら、犬について何も知らなかったと驚いたことを覚えています。

 例えば、柴犬はオオカミに一番近い犬、主人は1人で、他の人に慣れにくい。

 レトリバーは、狩りの時に人に貸し借りができるように誰に対してもフレンドリー。レトリーブから来た名の通り、狩りの時に仕留めた獲物を取って戻ってくるのが仕事。かわいそうに崖っぷちで「飛べっ!」と言われたら飛んでしまうほど人間には忠実で従順。

 一方シベリアンハスキーは、ちまたでは頭が悪いと言われることがありますが、雪や氷の上でソリを引いて走るのが得意な犬種です。頭が悪いのではなく、特性が違うのです。野性的な感が鋭く、割れそうな氷を避けて進むことができるそうです。そして、同じように崖っぷちで「飛べっ!」と言われたら死ぬ危険があると察知して飛ぶことはないそうです。

「ベルドッグ」ほとんどの小型犬についている通称です。これは、王侯貴族のお姫様の寝室にまで家来を配置することができずに代わりに犬に番をさせるために小さく、そしてよくほえるように品種改良されました。ベルの代わりに甲高い声で鳴き、外にいる家来に知らせるのが仕事。

 これらはほんの一部の話ですが、根本的に犬は仕事や用途によって長い時間をかけて品種改良されて、そのような資質になったことを学びました。もう、目からウロコとはこのことです。まったく知らなかったからです。

 シベリアンハスキーは私が高校生、大学生頃に大流行していて、当時はたくさん目にしました。本当に素晴らしく美しい犬だけど、シベリアから来たであろう名前から、日本の夏はさぞかし暑いだろうと内心思っていました。しばらくすると人気は一気に下火になり、近所には真夏の暑い中でも外につながれっぱなしのハスキーを目にして同情したものです。

 犬の問題行動として「ほえる」「かむ」「穴を掘る」などがよく挙げられますが、実はそれは犬種による特性であったり、品種改良によって作られたものだと知ることは必要なのだなと思い知らされました。

柴犬
じゃれあったりとまではいかなかったが、トレーニングのおかげでよい距離でお付き合いができるようになったココ(左)

周りを見渡してみると

 養成講座を受けていた当時はミニチュア・ダックスフント全盛期でしたから、動物愛護団体のシェルターにも次々と保護されていました。「可愛し、小さいし、飼いやすそう」という見かけだけで飼ってしまうのか、しつけをせずに捨てられてしまう子たちがたくさんいました。

 日本ではあまり見かけることが少なくなりましたが、ミニチュアダックスの元になったスタンダードダックスフントは、ミニチュアダックスの倍以上もある中型犬です。アナグマを狩猟する犬として足を短く品種改良されていますから、穴掘りが得意、獲物を追いかける勇敢さ、力強さが特徴。うさぎやイタチを狩るために小型化したのが、ミニチュアダックスになります。愛玩用に小さくしたのではなく、あくまでも狩猟用に小さく改良されたのです。

 だから穴掘りが得意なのです。“ほりほり”してしまうのは、特性なのです。それを人間の都合で「問題行動」としてしまっているです。

 それから柴犬もいつも人気の犬種ですよね。可愛いのですが、頑固で人に懐きづらい犬種だからか、やはりいつもシェルターの常連です。

 海外でも今とてもはやっていて、よく目にするようになりました。その性質を知らずに飼ってしまい、飼いにくさからかシェルターにたくさん収容されているそうです。そして人に慣れないことが災いして、シェルターでもとても扱いが難しい犬種として問題になっていると聞いています。

柴犬のココはどう?

 うちに来たココもやはりかなり頑固なおばあちゃん犬でした。ただ、後ろ足さえ触らなければうなったりすることはありません。

 かわいそうにココは私に付き合わされて、覚えたてのトレーニングをどんどん試されていました。14歳と聞いていましたが、名前を呼ばれたり、触られたり、おやつをもらったり、我慢させられたり、お散歩に毎日行ってもらったりで、どんどん目つきがしっかりとして、動きも行動も変わっていきました。

 アイコンタクトができるといとおしさも倍増。こちらも散歩や犬とのコミュニケーションが楽しくなってきます。

柴犬
目が大きくありませんか?女子力もついた?

 ある時、まったく見向きもしなかったおもちゃをコロコロっと転がすと、ココがぴょんぴょんと跳ねて追いかけたのです。私は驚いて、目がまん丸になりました。「わー。こんな老犬になってからでも遊ぶようになるんだ!」とポジティブトレーニングの効果がどんどん見えるようになってきたのです。

 ココはいそいそと歩き、呼べば振り向き、コマンドに従うようになりました。そうして見た目も若々しくなっていき、「おばあちゃん」から「おばちゃん」に昇格しました。

【前の回】誰だって初めての時がある 高齢猫の介護「強制給餌」は難しくない

小林マナ
設計事務所イマ/インテリアデザイナー。内装設計やインテリアデザインをメインに活動。東日本大震災をきっかけに保護犬や老犬の預かりボランティアを始める。2019年に<SLOW>のイベントを開催。猫2匹、預かり中の保護犬2匹と暮らす。犬や猫たちのために自宅と事務所を併設、家族と事務所のスタッフたちと保護犬の預かりボランティアをしている。インスタグラム @imanimaltokyo

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この連載について
預かりマナの老犬日記
保護犬の預かりボランティアをしているインテリアデザイナーの小林マナさんが、預かり犬の魅力や老犬との快適な暮らし方をお伝えします。
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