動物虐待のガイドライン、産業動物はどうなる? 平等に守られるよう注視が必要
犬や猫については動物虐待の罪状がつくようになってきたが、その他の動物については無法地帯かと思うほど”不起訴”が続く。
すべての動物が虐待から守られるよう注視
犬猫だけを守り、他の動物を守らない姿勢は、この国の成熟度が低いことを表している。犬猫への扱いを良くすれば他の動物も良くなると信じている人もいるかも知れないが、その理論に根拠はなく、むしろ格差は開くばかりだ。
動物愛護管理法の罰則は、すべての愛護動物にかかっており、実験施設で飼育されていようが、実験中であろうが、畜産場で拘束されていようが、と畜場で殺されるときであろうが、哺乳類と鳥類と爬虫(はちゅう)類であれば、すべての飼育下の動物に適用される。
しかし、動物愛護管理法は軽視されており、その動物愛護管理法の中でも重視される動物と軽視される動物に分かれているようだ。法文にはそうは書いていないのに、犬なら有罪、鶏なら無罪、と暗黙の了解のように分けている。その結果、産業動物に対する虐待を、検察はいとも簡単に”不起訴”とし、事件を片付け続けている。まるで動物たちの苦しみなど存在しなかったように、司法が事件を葬り去っていく。
現在、環境省は行政や警察が判断できるように動物虐待のガイドラインを策定しようとしてくれている。しかし、この中に、より判断の難しい産業動物への虐待の定義がどこまで組み込まれるのか。私たちはすべての動物が平等に虐待から守られるよう、注視しなくてはならない。
産業動物における「みだり」と「みだりではない」ケースを明確に!
動物愛護管理法には、以下のような条文がある。
- 第44条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
愛玩利用や、展示利用での虐待はたいてい“みだり”と判断されるだろう。楽しみのために動物を戦わせるなども間違いなく”みだり”である。容易に判断ができる。
しかし、殺すことや、動物を乱暴に扱うことや、苦痛の中で飼育を継続することが一般的になってしまっている日本の畜産業で起きる虐待はそうではない。普段密室になっている工場畜産という異常な動物飼育を目の当たりにして、知識のない警察や検察は、なにが“みだり”なのか、判断できない。現在の環境省でも判断できないだろう。行政の農政部局の職員の多くも誤った知識を持ち続けている。そもそも、なにが”普通の”畜産業なのかもわからないかもしれない。
しかし、そこには明確にコンセンサスを得られるはずのラインが存在していることを強調したい。
私たちは、以下の提案を環境省に対して行っている。
国際基準となっているOIE(世界動物保健機関)のコードをすべて読み、把握してもらうこともよいが、せめて、この程度の区分けを、行政、司法が把握していても良いのではないだろうか。
(次回は12月13日に公開予定です)
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