高齢猫のトイレ、ほんの数センチの差が大きな違いに 穏やかなバリアフリーを目指して

黒猫
トイレを終えてすっきり顔のイヌオちゃん。「お顔は若々しい?」

 我が家では近頃、猫のトイレに全集中。18歳になるイヌオの足腰が前より弱まり、粗相が目立つようになったのです。そのため、専用スロープを買ったり、シーツを敷いたりして、老猫に負担のないトイレやケアを探っています。トイレを新たに買い替えなくても、対応ができることもわかりました。

(末尾に写真特集があります)

トイレの周囲をぬらすようになった

「あれ、ぬれてる」「こっちもだ……」

 少し前から、うちのご長寿猫イヌオ(推定18歳)のトイレの失敗が目立つようになりました。間に合わなくて“トイレ以外”でするのでなく、“トイレの周囲”をぬらすのです。

 ある時、トイレをするところを見ていたら、おしりが半分外に出た状態で気持ちよさそうに、シャーっとして、あわててシーツを敷き詰めました。

 後ろ脚が痛むのか。しゃがみづらいようです。

 うちでは、私のベッド下に階段型の踏み台を置いていましたが、猫トイレのための踏み台までは用意していませんでした。トイレの段差くらい越えられると思っていたからです。

猫トイレと猫
システムトイレのカバーを取ってシーツを敷いて、壁にぬれていい板を置きました

 でもついに、その段差も厳しくなったようです。

老猫の変化に応じてトイレを考える

 イヌオの老いの変化に応じ、何とかしないとなりません。

 そもそも、うちでは猫用トイレは3カ所に設置。私はおひとり様のコンパクト暮らしなのですが、居間、化粧室、浴室(脱衣所)に、形の違う猫トイレを置いています。

 少し前までは、イヌオは廊下を歩いた先の脱衣所の猫用トイレをよく利用していました。ふたのない大きな猫トイレで、入り口は床から12㎝と低めです。

 最近では、廊下を歩くのもおっくうなのか、廊下途中にある化粧室内のシステムトイレ(ドーム形のふたつき)を使うことが増えました。その入り口は床から13㎝。

 一方、居間のトイレは、カバーがあり、静けさを保てる四角いデザインタイプ。入り口の高さは12㎝。同居のはっぴー(4歳)が主に使います。はっぴーもトイレに難あり(我慢しがち)で、近くで目が届くように置いたのです。

 昨今、猫トイレも種類が増え、猫が上からはいれたり、アプリで体調を確認できたり、自動で掃除をするものがあります。老猫や脚の短い猫用の入り口がとても低い(7~8㎝)の外国製のトイレもあり、じつは新たに買いたいと思ったのですが、需要が多いのか、コロナの影響かわかりませんが、「在庫切れ」でした。

 そこで、家にあるトイレに入りやすいよう、バリアフリーの工夫をすることにしました。

お手製の踏み台を作る

 まず取り入れたのは、段ボール製の「にゃんこスロープ」。ネットで取り寄せて、自分で組み立て、なだらかな角度の坂をトイレにくっつけるようにしました。

 歩く面には滑り止めを貼り付けるので、スロープが斜めになっていても、ずずーっと滑ることもなく安心。中にいれる芯も紙製です。紙なので尿で濡れたらアウトですが、そうお高いわけでもなく買い直しもできます。

スロープと猫
介護用スロープを爪とぎと間違えたはっぴー「僕はここを動かにゃい」

 しかしなぜか、スロープを組み立てると若いはっぴーが気に入り、そこで爪とぎをしようとしたり、昼寝をしてしまいました。イヌオが入りたいときに、邪魔になってトイレに入れない!
「どいて」といっても、「やだね」といわんばかりに、はっぴーはスロープから動きません。

 しばらくして、やっとイヌオがスロープに乗ったと思ったら……途中でぱたっと止まってしまいました。トイレに降りづらかったようです。

 そんな想定外のことがあり、私は自分でトイレ前に置く“踏み台”をこしらえることにしました。そのついでに、遠い洗面所にあったトイレを、居間のほうに持ってきました。

 踏み台といっても、簡易なものです。古いバスタオルや荷物の緩衝材としていたスポンジを、足ふきマットで包みました。

黒猫
お手製の踏み台でスムーズにトイレに出入りできるようになったイヌオ

 こうすると、床からの高さが5㎝ほどになり、入るのが楽そうです。あまり台を高くしても違和感がありそうで、これが限度でした。

 化粧室に置いたシステムトイレの前にも、段ボールやタオルを折り重ねて踏み台を作りました。

 バスタオルを何度も折ったりして、イヌオの足にちょうどいい台を作るのは、自分が「ちょうどいい枕」を探すのに似ていました。

 たぶんこれで万全!のはず。

 イヌオは早速、お手製の踏み台を利用して、居間のトイレにはいってくれました。うまくいきました。

 しかし、システムトイレのほうでは、漏らしてしまいました。廊下からそっとのぞいていたのですが、気持ちよさそうにシャーっと漏らしています。

スポンジや段ボール
踏み台の中身は、段ボール、厚みのあるスポンジ、タオルなど

自分では入ったつもり

 ちょうど9月に、イヌオが血液検査を受けに動物病院に行く機会があったので、尿をトイレ回りで漏らすようになったことや、お手製の踏み台の話を動物看護師さんにしました。

 すると、看護師さんが教えてくれました。

「シニアの子は、わんちゃんも猫ちゃんも、トイレの外にすることが多いですね。皆さん悩みは一緒。足腰が痛いということもあるかと思いますが、やっとトイレまでいって、入ったとたん、ホッとしてしまうこともありそうです。自分ではトイレにしっかり入っている“つもり”になっていることもあると思いますよ」

 入っているつもり!だから、あんなに気持ちよさそうにしていたのかな。

 看護師さんは、さらにアドバイスをくれました。

「高齢ペットの場合は歩く距離も短くなりますが、いつも歩く動線内にトイレを置いて、台は安定させること。フワフワ過ぎたりグラつくと腰にもよくないし怖がるので、そこも気を付けてくださいね。どうしても外に尿がとびでたり、漏らす場合は……『もう~』と怒らないで、そっと掃除をしてあげてください」

 確かに、ついつい『もう~』といいがちなんです。でも人だって年をとれば排泄(はいせつ)の問題がでてきます。ある程度はしかたないのでしょう。

黒猫
後ろのトイレははっぴー専用。若い頃ならイヌオも軽々入れたでしょう

 家に戻り、漏らしたほうのシステムトイレの踏み台を見直しました。安定させるために段ボールを1枚タオルにはさむと、かなりしっかりしました。もともとシステムトイレの入り口の高さは13㎝あったので、(部屋のトイレより高めだったので)、タオルも一枚増やし、調整しました。

 すると、ばっちり。たった1㎝ほど高さが変わるだけで、またぎやすくなったようです。気分にあわせ、今は好きなほうのトイレを使っています。

できることを褒めながら

 そういえば、つい先日、私の母親(87歳)が、実家の玄関のわずかな段差につまずいて、転んでしまいました。幸い骨折はまぬがれましたが、何十年と住んでいるのに、ここにつまずく?と驚きました。認知症も進み、何でもかんでも忘れます。

 年を取るということは、今までできたことが、できなくなることでもあるのです。猫も同じ。イヌオはついに今月18歳となり、人間の年で考えれば、母とほぼ一緒なのです。

 最近、ごはんを食べても、忘れたようにニャアニャアと大声で鳴いてねだります。夜中も2,3度起こされます。「またー?」と思うこともあるのですが、おおらかに見守りたいと思います。食欲があることを褒めて、トイレまで歩けることを褒めながら。

 暑い夏を越えて、新たな季節を迎えたのですから、さあ、秋ものんびり頑張りましょう!

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
ねこ飼い日記
古い魚屋の天井が崩れ、落ちてきた子猫「はっぴー」。その成長と、引き取った筆者との生活ぶりを同時進行でつづっています。
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