鼻の色でわかる!? 猫の「顔色」「健康状態」そして「ご機嫌」
中学1年生のある日、我が家に一匹のシャム猫がやってきたことから、私の猫人生は始まりました。それ以来、私のそばに猫がいなかったことは、一度もありません。そんな私にとって、初めての「ピンクの鼻」の子は、現在の長男猫・梵天丸でした。
「やっちゃったね」と言われた、人生初の野良猫保護
今から15年前。三重県の漁港で出会ってしまった梵天丸を保護しました。東京まで連れ帰り、獣医さんに連れて行ったとき「あーあ。やっちゃいましたね」。開口一番、そういわれたのを今も覚えています。
その時点で、我が家にはクリス、ココ、ディーナ……ともう何匹も猫がいたのですから、無理もありません。
猫好きだからこそ、放ってはおけない。だから保護して、遠路はるばる連れて来ちゃった。先生も動物好きだからこそ、その心理はわかるのです。そして、野良猫を保護することの大変さも、当然先生はよくわかっていました。
肝心の私は、実は野良猫を保護するのは梵天丸が生まれて初めて。のんきに構えて、(「やっちゃった」とは何よ!)と、内心ムッとしたぐらいです。
しかし、先生の説明を聞いて、その言葉の意味がわかりました。
・野良猫は伝染病にかかっている可能性が高いこと。
・先住猫たちはワクチン接種しているものの、できればエイズキャリア、白血病キャリアの子とは同居させたくないこと。
・今日血液検査で陰性でも、潜伏期間は2カ月あるから、2カ月後の検査でもう一度、陰性が確認されるまで、この子は隔離して飼わねばならないこと。
・ノミやダニは絶対いるので駆除が必要なこと。
・ノミがいれば、必ずと言っていいほどおなかにも寄生虫がいるので、それも駆除せねばならないこと。
考え足らずの私はようやく「やっちゃった……かも?」と思い至りました。
しかし、診察台の上でノミ取りシャンプーまみれになりながら、小さな手足をバタつかせている子猫を見たら、そんな「やっちゃった」感なんて吹き飛んでしまいます。私の手にじゃれつく、茶トラ白のハチワレ頭をなでながら、金色の目を覗き込みます。
「あー。お鼻、きれいなピンクだね。我が家初だな、お鼻ピンクちゃんは」
猫に話しかけている私に
「え?やっぱり飼うんだ……」
先生が小声でつぶやいたのが印象的でした。
こんなに表情豊かだったなんて! 鼻の色=血色だと知る
2カ月の隔離期間も無事終了。伝染病陰性を確認した梵天丸は、暴君ぶりを発揮するようになりました。弾丸のごとく駆け回り、突然どこからか襲い掛かってきます。本猫はじゃれついているつもりですが、こちらはたまったものではありません。
私たちもその頃には、鼻のピンク色が時と場合によってかなり変化することに気が付いていました。
大好きなおもちゃで遊ばせているときは、鼻を真っ赤にして、フーッ、フーッと大興奮。昼寝しているときは、きれいなベビーピンク。その時その時の気持ちがそのまんま、鼻の色に出るのです。
「考えてみりゃそうだよね。人間だって、興奮したら顔色赤くなるもんね」
「ニャン面蒼白」? 初めての爪切り
とはいえ、生傷が絶えないのも困りもの。いよいよ梵の爪を切ることにしました。
落ち着いているタイミングを狙って捕まえます。遊んでもらえると勘違いした梵は、ガジガジと私の手を狙ってかみつきます。
「はいはいはい。遊ぶんじゃないの。このうちの子はね、みんな爪を切るんだよ。それがこの家のルールなの。OK?」
それで猫が納得するわけはありませんが、委細構わず「ニュッ」と爪を出して『パチン』!
すると……。
「ニャッ………?」
じたじたしていた梵がぴたっ、と止まりました。生まれて初めて、爪を切られた瞬間です。
「え?梵?……どうした?」
漫画のようなストップモーションに、こっちが不安になります。も、もしかして、「身」まで切っちゃった? それなら悲鳴を上げるはずだし……?
見ると、あんなにピンク色だった鼻が真っ白です。目はおどおどと宙を泳ぎ、体をこわばらせています。
「あー。怖いのね。そういうことね」
ビビって固まっている間がチャンス! スイスイと、20本の爪を切り終えました。
「はい、よくがんばったね。終わったよ」
抱きしめて頭をなでてあげます。すると「ふーーーっ……」
心の底から安心したようなためいきをひとつ。それと同時に、真っ白だった鼻にポッと淡いピンクの灯がともりました。
「あははははは!さしずめ、ニャン面蒼白、ってとこだなー」
指さして笑う夫を、梵がにらみつけています。(笑いごとじゃないでち! 怖いんですから!猫の気も知らないで……!)
今や15歳の長老になった梵。爪切りぐらいで騒ぎもしないし、ニャン面蒼白もありません。
そして我が家にはもう一匹。ピンクのお鼻ちゃんがいます。次男のエンマです。そのエンマの爪切りは……
「ンニャァァァッァッ!(いいいいーーーーーーやぁぁぁぁぁーーーだーーーーー!)」
むしろ真っ赤になるのでした。
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