動物虐待をなくすために 市民や民間団体ができることとは?

 ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点から解説します。今回は、動物虐待をなくすために私たちができることについてです。

動物虐待を見逃さない意識を

 前回前々回に説明したとおり、動物虐待事件について、実効性ある調査や捜査を可能にするためには、警察内部の専門性を高めつつ、警察と動物行政の連携を強化する方向での体制整備を求めるのが現実路線といえるでしょう。

 兵庫県警や大阪府で導入された共通ダイヤル制度を参考にして、不十分であるというならばこれを改善しながら、このような小さな一歩を他の自治体でも積み重ねていくことが望まれます。

 では、民間団体や、動物愛護家を含む一般市民には、できることはないのでしょうか。

 市民レベルでできることは、ひとりひとりが動物虐待を見逃さない意識を持ち、気風を高めることが大事といえます。

 児童虐待については、法律で、全ての国民に通告義務が定められています。これに対し、動物虐待については、獣医師について、関係機関への通報義務が法律で制度化されたばかりです。もっとも、弱い者に暴力を振るったり、苦しめることが許されないのは、普遍的な価値観といえるでしょうから、法律上の義務のある・なしや義務の程度に関わらず、通報すべき事案に直面した場合は、積極的に通報することが望まれます。

一人ひとりが動物虐待を見逃さないという意識を

 環境省のウェブサイトには、自治体ごとに通報窓口の電話番号が掲載され、どこに通報したらよいかわからないといった問題に対応しています。また、Yahoo検索で「動物虐待+(都道府県)」で複合検索すると、この環境省サイトの該当自治体のところにすぐリンクされる仕組みができています。

 民間の動物団体や、有志の動物ボランティアなどは何ができるかですが、一般市民に比べれば、動物虐待事件を見聞きしたり、実際に対応した経験があるかもしれません。発見者とともに、情報を整理し、公的機関へ適切な橋渡しをすることが望まれます。

 一般的な手順について、過去に書いたことがありますので、こちらの記事もご参照ください。

 できる限り、「いつ、どこで、誰が、何を、どうした」を意識した説明を心がけましょう。海外なのか、いつ撮影されたものなのかもわからない、しかしながら動物がひどい扱いをされている画像や動画をSNSで見つけたとして、最寄りの警察に電話して訴えても、警察としてもどう対応したらよいのかわかりません。

通報すべき動物虐待事案は、積極的に通報を

動物虐待に対応する仕組みを議論

 ところで、私も所属している民間団体=弁護士会はというと、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とする弁護士の集まりとして、人に関するさまざまな社会的問題について取り組んできましたが、動物の問題については、自然環境保全の一環として野生動物が語られることがある程度だったように思います。それが、ペットをはじめ動物の法律問題に関心を持ち、対応する主に若手の弁護士が増えてきたこととも関連すると思いますが、いくつかの弁護士会でも、動物問題に取り組む動きが徐々に進んでいます。

 兵庫県弁護士会では、2019年から動物愛護問題についての取り組みを始め、神戸市動物管理センターや民間の保護シェルターを訪問し、獣医師などの専門家を招いての学習会を開催するなどして、犬猫の殺処分や多頭飼育問題の実情、動物愛護法令の理解に努めてきました。

 そして今回、以下のシンポジウムを開催することにしました。動物愛護週間(毎年920日から926日)の真っ最中に、動物虐待防止活動に真剣に取り組む動物愛護団体Evaの杉本彩さんをお招きし、地元弁護士会・獣医師会の各会長を巻き込んで、動物虐待対応のための専門家体制の構築について、議論します。

 事前申込も不要で、インターネット環境さえあれば、どなたでも当日リモートで参加できますので、ぜひご参加いただければと思います。

市民シンポジウム「人と動物の共生社会を目指して」
1.日時 2021年9月23日(木・祝日)13時~15時

2.場所・開催方法 Zoom(先着1,000名)

3.内容・プログラム(予定)
 第1部 基調講演 
  講 師:杉本 彩氏(女優、公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長)
  内 容:人と動物がしあわせに共生できる社会を目指して
 第2部 パネルディスカッション   
  パネリスト: 
   杉本 彩氏(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長)
   中島 克元氏(神戸市獣医師会会長)
   津久井 進(兵庫県弁護士会会長)
  コーディネーター:細川 敦史(兵庫県弁護士会公害対策・環境保全委員会委員)
  テーマ:動物虐待(殺傷、ネグレクト、遺棄等)事案に対応できる専門家体制の構築について  

★Zoom参加の方法
開演時刻以降に下記URLからご参加ください。
https://us06web.zoom.us/j/82421590490?pwd=VS9NdysvZEFJZWZtSi9NUStYczJZQT09

【前の回】もしアニマルポリスを日本に導入するなら 担い手や体制、どんな形が考えられる?

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
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