もしアニマルポリスを日本に導入するなら 担い手や体制、どんな形が考えられる?

茶色のイヌ
アニマルポリスを日本に導入するとしたら?

 ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点から解説します。前回につづき、今回もアニマルポリスについてです。

アニマルポリスの3類型

 「アニマルポリス」といっても、いくつかのパターンがあります。大きく、以下の3類型に分けられると思います。まず、それぞれの類型ごとに、インターネット上などから得られる海外の事例を紹介します。

 まず、①民間組織に警察権限を付与する方式があります。

 この方式の例としては、アメリカ・ニューヨーク市において、ASPCA(米国動物虐待防止協会、1866年設立)が警察部門を設置し、動物虐待の捜査を行っていたようですが、その後2013年でニューヨーク警察に業務を引き継ぎ、警察部門は閉鎖したとの情報があります。

 また、イギリスにおいて、RSPCA(英国王立動物虐待防止協会、1824年設立)のインスペクター(動物査察官)は、強制的な捜査権限はありませんが、裁判所に有罪判決を求める訴追は可能とされています。ただ、これは、歴史的に私人による刑事訴追が習慣化していたイギリスの名残と思われます。

見つめる猫
海外のアニマルポリスは3つの類型に分けられる

 次に、②警察内の専門化方式があります。これは文字どおり警察内部に専門の部署をつくるということで、イメージしやすいと思います。

 アメリカ・ロサンゼルス市には、Animal Cruelty Task Force(動物虐待専門調査団)があります。また、オランダでは、2011年から、動物虐待事件の専用ダイヤル「144」に通報すると、専門の警察が対応するという制度が始まったそうです。

 そして、前述の専門家方式と両立しますが、③動物行政部局と警察の連携・分担方式があります。

 この例としては、ドイツ・ベルリン市の獣医局(動物行政)が警察官とともに動物虐待が行われているおそれのある家を訪れる模様がテレビで紹介されていたことがあります。なお、日本でも、事案によっては、警察官と動物行政担当者が一緒に現場へ赴くことはあり、全く行われていないわけではありません。

担い手は?きちんと機能するには?

 これらの方式を前提に、日本への導入可能性について検討します。

 まず、①の民間方式については、現在、海外でも実施例は見当たりません。というのも、強制捜査権限、警察権限という強い国家権力を民間に担わせることについて、理論的な問題があります。また、現実的にも、犯罪捜査は、専門性が高く、適正手続きという人権保障や、刑事訴訟法の知識が必要不可欠であり、少なくとも現在の日本の動物団体では、適切な担い手がいないと思われます。

ベンチの上のイヌ
アニマルポリス、日本での導入の可能性は?

 ただ、刑事手続きに関与させないならば、例えば駐車違反のように、違反であることが明確な行為に限定して、キップ(反則金=行政処分)を切る権限を民間委託する方法は、検討の余地はあるかもしれません。

 次に、②警察内の専門化方式については、理論的な問題はありませんが、警察内部の職務分掌を変更することになるため、容易ではないでしょう。各都道府県の警察署によって温度差があったり、一部の警察官が一定の研修や経験を積んでも、定期的に異動があるため引き継がれない可能性があります。 

 これに対し、③の連携・分担方式であれば、既存の人員配置については基本的には動かさないため、予算上の問題もなく、受け入れやすいかもしれません。ただ、抽象的に連携しましょうというだけでは、何も変わらないおそれがあります。

日本に導入するなら

 以上をふまえ、②と③を組み合わせた形で、以下の提案をしたいと思います。

ア 動物愛護行政の部署に、動物愛護管理法に精通した警察官(あるいは警察OB)を派遣する。または、警察内に動物遺棄虐待事件に精通する部署を創設する。

イ 警察の担当部署ないし担当警察官の通称を「アニマルポリス」として市民に周知する。周知するだけで一定の抑止力が期待できると思われます。

ウ 動物虐待事案が発生した場合、管轄の動物愛護管理担当職員・獣医師などとともにアニマルポリスが同行し、現場の状況に応じて、指導・勧告などの行政処分や、検挙などの刑事手続きを行う。

白黒猫
動物の虐待を防ぐため、連携の体制が徐々に整ってきた

 2014年の動物愛護法改正により、動物行政の部局と都道府県警察との連携強化について、国は適切な施策を講ずることが明記されました。

 2019年改正では、都道府県においてこれまで任意であった動物愛護管理担当職員(獣医師など動物の適正飼養に関する専門知識を有する地方公務員)の設置が義務づけられ、また、市町村でも努力義務とされました。

 法律上も、連携の体制は徐々にですが整っています。

動物の事件を捜査し、解決する組織を

 日本に導入可能なアニマルポリスについて、全国の警察署で一斉にスタートするのは困難だとしても、モデル地域を選定して試行してみる方法が考えられます。または、“全国で初めて”が好きな自治体が手を挙げて、真っ先に始めてもよいでしょう。

 昨年発売された『動物警察24時』(新堂冬樹著・光文社発行)という本は、東京都において試験的にアニマルポリス(TAP)が導入されたという内容のフィクションですが、アニマルポリスが単独で、ときには一般の警察官の協力を得ながら動物に関するさまざまな事件を捜査し解決する様子がリアルに描かれています。近い将来、このような組織ができることを望みます。

【前の回】罰則が強化された動物虐待事件 検挙が難しいとされる理由とは?

細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
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