ネコは右利き? 左利き? 73%がおやつを取る時に利き手があった
子どもの頃にやった夏休みの自由研究を覚えていますか? 私は小学1年生の時、「ねこはみぎきき? ひだりきき?」 というテーマで研究をおこない、地元の市から賞をいただきました。当時飼っていたセドリック半蔵(通称セディ)に協力してもらい調査をおこなったのですが、残念ながら結果を覚えていません……。しかも2019年に社会人大学院生としてネコ研究をスタートするまで、自由研究のことはすっかり忘れていました。
研究を始めてから、2018年にネコの利き手に関する論文が発表されていることを知りました。そこで第4回は、この論文 "Lateralization of spontaneous behaviours in the domestic cat, Felis silvestris." をご紹介します。
ヒトは右利きが多数。ではネコは?
ヒトの約90%は、道具を使う時や文字を書く際に、右手を使うことが知られています。これは脳の神経系の左右差に関連していると考えられていますが、利き手の発生メカニズムはまだ解明されていません。利き手の謎を解明するため、両生類や霊長類、カンガルー、クジラなど、多くのヒト以外の動物でも研究がおこなわれています。
果たしてネコに利き手はあるのでしょうか。クイーンズ大学のデボラ・ウェルズ率いる研究チームは、ネコに左右の好みがあるのかを調べました。調査には1歳から17歳の計44匹のネコが参加し、3パターンの行動をテストしました。
まず、食べ物を取る時にどちらの足を使うかを調べるため、おやつを入れた給餌(きゅうじ)タワーを用いた実験をおこないました。タワーの中に10個のおやつが置き、どちらの足でおやつを取るかを記録したのです。
1匹あたり50回分のデータをとる必要がありましたが、ネコが疲れたり飽きないように1日平均15回程度をおこなったとのこと。結果は、73%のネコがおやつを取る時に好みの利き手があることがわかりました。
続いて、普段の行動で左右の好みがあるかを調べるために、3つの行動を飼い主さんがチェックし、約3カ月間記録しました。ひとつ目は、くつろいだり眠ったりする時、体のどちら側を下にしているか。ふたつ目は、階段を下りる時に左右どちらの足から下りているか。最後は、トイレに入る時にどちらの足から入るのかを調べました。ネコの行動をこまめにチェックする、根気のいる作業です。飼い主さんの協力なしには成り立たない調査でした。
結果は、寝転がる際にどちらを下にするかの左右差はみられませんでした。ただ、70%のネコは階段を下りる時に利き足があり、トイレに入る際にも66%のネコが利き足があるということがわかりました。とはいえ、左右どちらかが多いという結果はみられませんでした。しかし、オスとメスでは違いがありました。オスは左足を、メスは右足を好んで使うことがわかったのです。
利き手によって性格が変わるかも!?
この研究チームは、イヌの利き手に関する研究もおこなっています。彼らが2017年に発表した論文で、左利きまたは両利きのイヌは、右利きのイヌに比べて怖がりで消極的という結果を示しています。ネコでは性格と利き手の関連はまだ明らかになっていませんが、ネコの利き手とも関連があるかもしれません。
また2021年に別の研究チームが、1万8000匹のイヌで利き手の調査をおこない、8割近くのイヌが右足を使うことがわかりました。脊椎(せきつい)動物は脳が左右にわかれており、ご飯を食べるといった日常的な動作の処理は左脳を使うため、右利きが多いと考えられています。イヌに右利きが多くみられる理由は、脳の処理方法によるものかもしれません。
私が小学生の時におこなった実験の結果は覚えていないのですが、うっすらとセディは右利きだったように思います。性格はとても温和で、食べることが大好きでした。今一緒に暮らしているスカイも、観察してみるとどうやら右足をよく使うようです。飼いネコがどちらの足を好んで使っているか、または好みがなさそうなのか。階段やトイレのはじめの1歩を観察してみてください。
今回ご紹介した論文
"Lateralization of spontaneous behaviours in the domestic cat, Felis silvestris."
イラスト:長崎訓子(ながさき・くにこ)
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