ネコのゆっくりとした「まばたき」の秘密 愛情表現だという逸話は科学的に本当だった!
ネコの生態を研究論文から科学的に読み解く本連載。第2回はネコの「まばたき」についてです。コロナ禍によりマスク生活が1年以上続いていますよね。マスク越しだと、仲の良い友人ですら表情を読み取るのが難しいと感じます。いかに顔から得ている情報が多かったのかを思い知らされました。
マスクで隠れてはいませんが、目から受け取る情報もとても重要です。私たちヒトは、生後9カ月頃からアイコンタクトを使いコミュニケーションをしています。一緒に暮らすネコとのコミュニケーションにも、アイコンタクトが欠かせません。
まばたきをゆっくりとする理由
ネコの飼い方の指南書には「ネコと目があったらゆっくりとまばたきをするように」と書かれているのを読んだことのある方も多いはず。 これは長らくネコの飼い主さんたちの中で語られてきた“逸話”でした。その“逸話”を科学的に調査した論文 “The role of cat eye narrowing movements in cat–human communication” が2020年に発表されました。
この調査は、21匹のネコを対象にネコの飼い主さん宅でおこなわれました。まず、ネコが落ち着いたら、ネコから1メートル離れた場所に飼い主さんが座ります。ネコが飼い主さんのほうを見たら、飼い主さんがゆっくりとまばたきをします。この動作を約2分間繰り返し、ネコと飼い主さんの目の動きをカメラで記録します。次に、同じ方法で飼い主さんがまばたきをしないパターンを記録しました。
ネコの目の動きは、解剖学的な視点から顔の筋肉の動きと表情を測定する「CatFACS(キャットファックス)」を使い解析しました。このFACS(Facial Action Coding System)と呼ばれるシステムは1978年に開発され、ヒトやチンパンジー、イヌ、ウマなどの表情の研究に使われています。
結果は、飼い主さんがまばたきをしない時よりもゆっくりとまばたきをした時のほうが、ネコはゆっくりとまばたきを返すことがわかりました。
続いて、飼い主でない見知らぬヒトとまばたきの調査をおこないました。見知らぬヒトがネコの前に座り手を差し伸べます。その後、ゆっくりとしたまばたきをおこない、再び手を差し伸べます。その手に対するネコの反応を調べました。結果は、ゆっくりとまばたきをしたほうが、差し伸べた手に多く反応しました。
これらの結果から、“逸話”として知られていた、ヒトのゆっくりとしたまばたきが、ネコにとってポジティブな意味をもつことが科学的に証明されたのです。
幸福にみえるゆっくりとしたまばたき
にっこりと笑う時、自然と目が狭まりと目の横にシワができますよね。このシワができる表情筋の動きは、「デュシェンヌ・スマイル(真の笑顔)」と呼ばれています。ゆっくりとしたまばたきは、この「真の笑顔」に近いのではないかと筆者は述べています。
さらに筆者は「ゆっくりとしたまばたきに反応するネコは、保護施設で新しい飼い主さんをみつけるのが早い」という論文も発表しました。この調査は、保護施設にいる24匹のネコを対象におこなわれました。まず、ヒトのゆっくりとしたまばたきに対して目を細めるかどうかを調べます。その後、新しい飼い主さんに引き取られるまでの日数を調べました。
ヒトにとってネコが目を細めた表情は、幸せかつ友好的にみえるのではないか、と著者は述べています。飼いネコと目があったら、ぜひゆっくりとしたまばたきをしてみてください。きっと目を細めてくれるはずです。
今回紹介した論文 “The role of cat eye narrowing movements in cat–human communication”
※論文の最後にヒトとネコのまばたきの動画が掲載されています。
イラスト:長崎訓子(ながさき・くにこ)
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