がんになったと両親に告げたその直後 好戦的だった実家の猫が私にだけ優しくなった
ある日、がんの告知を受けた女性ピアニスト。すると可愛がっていた実家の雄猫が、急に態度を変えました。どうやら彼には彼流の流儀があるようです。
がんの話を家族と聞くジミー
軽やかなジャズの旋律で場をわかせたり、しっとりとした色に染め上げたり。ピアニスト、鍵盤ハーモニカ奏者の草野由花子さんは、東海地方を中心に活動し、さらにフォトグラファーとしても活躍する多才なアーティストです。
ライブにラジオ出演にと、多忙な日々を送っていた彼女に、がんがみつかりました。健診でたまたまわかった卵巣の腫れから腫瘍(しゅよう)を疑い、片方の卵巣を切除。組織検査の結果は「卵巣がん」。病院で説明されたのは、珍しいタイプのがんで、婦人科系臓器を摘出する大きな手術、その後の抗がん剤治療が必要、ということでした。
告知を受けたその足で実家へ報告に行くと、ショックでうろたえる両親。を、「治す気満々」で、逆にはげます由花子さん。
その様子を少し離れた場所からじっと見ていたのが、猫のジミー(9歳)でした。
直後、かみつきや猫パンチがやんだ
ジミーは、少しちょっかいを出すと、「おらおら!」と臨戦態勢に入る猫で、気分が乗らない時に抱っこでもしようとすれば、がぶがぶかむわ、シャープな猫パンチを繰り出すわと、かなり好戦的です。ところが、両親にがんのことを告げたその直後から、態度がガラリと変わりました。
「何をしても、かまないしパンチもしない。私のことをそうーっと扱うのです。試しにしつこく触ってみたり、色々ちょっかいを出してみたりしても、されるがままじっとガマンするか、そっと触ってくるか、軽くペロッとなめるだけ。そんなこと、以前はあり得ませんでした」
なお、他の人には全く変わらずで、かむし、パンチもします。由花子さんにだけ、やさしくなったのです。
美容院にご来店!?の子猫を保護
ジミーはもともと由花子さんが保護した猫で、出会ったのは、ステージのヘアセットや普段のヘアケアをお願いしている美容院。
「美容師さんから『子猫がニャーニャー鳴きながら店の中に入ってきた! すぐに来て!』とヘルプコールがありました。私が動物好きということを知っていたからです」。何でも、お客さんを見送る時にドアを開けたら、そこにひとりぼっちでいたそうです。
駆け付けると、もらったご飯をものすごい勢いで食べているグレーの小さな猫が。食べ終わると、集まってきた男子高校生たちの指もペロペロとなめていたとか。
「美容師さんが『お店でも家でも飼えないし、もおー、どうしよう?』と困っていたので、私が保護し、ちょうど猫を飼いたいと言っていた両親に連絡し、引き取りに来てもらうことにしました。そうしてめでたく実家の家猫となり、すくすく、のびのびと成長していきました」
言葉を理解する、空気を読む“賢猫”
普段は、ちょっかいを出すと攻撃してくるけれど、放っておくと構ってほしくて寄ってくる、気まぐれジミー。猫らしい、と思いきや「性格はむしろ犬っぽい」と言います。なんと「お手」「お座り」「待て」ができるそう!
さらに、「お水を飲んで」と言うと、水を飲む。「爪切る?」と言うと、前脚を差し出す。「猫」と言うと、庭に野良猫が来ているかを確認するため、色々な窓から外をのぞきにいく。自分の話をされている時は、耳がピンと立つ。などなど、賢さエピソードが続々と登場。
「人間の言葉を理解するタイプの猫で、いつも何となく空気を読んで行動している気がします。だから、急に態度を変えたのを不思議に思い、私なりに理由を考えた時、両親にした話の内容やその様子から『この人は病人だから、そっと扱うべきだ』と判断したのかと。あるいは、がんを嗅ぎ分ける犬がいるように、その能力があるという可能性も考えました。実際はどうかわかりませんけど」
現在、由花子さんは大手術を終えて、抗がん剤治療に入りました。音楽活動は基本お休み中で、何クールか繰り返されるその治療を終了次第、活動を再開する予定です。そして今のところ、ジミーはあのまま、やさしいまま、なすがまま。
「でも治療が終わったら、またかんでくる、パンチしてくるようになるのでしょうか?」その時が、とても楽しみだそうです。
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