保健所から迎えた子猫、初日にケージから脱走 慌てて探すと先住猫ともう仲良しに

くっつく2匹の猫
アズ(左)とテン(右)はいつも一緒にいる

 東京で暮らす姉妹が、3匹目の猫として迎えたのは、故郷の保健所で出会った子猫でした。保健所の女性は「その子だけ、もらい手がないんじゃないかと心配だったんです」と、ほっと胸をなでおろしていました。

(末尾に写真特集があります)

身寄りのない猫を迎えたい

 都心から少し離れた町で暮らしている「ぺち」さんは、派遣社員として働く妹との2人暮らし。自身もフリーランスとして働いてきました。ぺちさんは約5年前、東京で暮らし始めたとき、猫を飼おうと決めていました。

「子供のころ、近所の川で遊んでいて猫の赤ちゃんの亡きがらが流れてくるのを見たんです。きっと飼うことができず、川に捨てられたんでしょう。車にひかれた猫を病院に連れていったこともありました。事故にあってから何日もたっていたみたいで、『下半身にウジがわいています。楽にさせてあげたほうがいいですよ』と言われて、悔しい思いをしました」

 大人になったら、身寄りのない猫を飼おうと決めていたのです。「ペット可」の広めの部屋を借りたのもそのためでした。

「これは私のエゴなんでしょうけど、1匹でも、ちょっとでも安心できる場所で生きてほしい。本当に楽しいと思ってくれるかわからないですけどね。エゴなんです」

 ぺちさんは、ひとり暮らしをはじめてすぐ、保護猫の譲渡会に参加しました。しかし、まだ妹と一緒に暮らす前でひとり暮らしということもあって、「飼える条件を満たしていない」と冷たくあしらわれたそうです。

「それでも申し込みたいと言ったら、『(譲渡は)難しいと思いますけど、どうぞ』という感じでしたね」

のんびり屋さんの黒猫

 そこで譲渡先募集サイトを通じて出会ったのが、生後約2カ月の黒猫「イチ」(メス)でした。実家で黒猫を飼っていたことから、まず黒猫を飼いたいという思いがありました。ペチさんは、部屋に自分のベッドや家具が届く前から、イチとの暮らしをはじめました。甘えん坊で、水を飲むための容器のそばが定位置。一日中ぼーっとしていることが多いのんびり屋さんです。

黒猫
マイペースなイチ

 ぺちさんはイチと暮らしはじめて数カ月後には、2匹目を飼いたいと考えるようになりました。このころ故郷から出てきた妹と一緒に暮らすようになったことで、生活に余裕ができたというのも理由のひとつでした。ただ、保護猫譲渡会での「難しいと思う」という言葉が、胸に残っていました。

「東京ではそれくらい保護猫のもらい手がいるんだなと思ったんです。だったら、私の故郷のような田舎はどうだろうと。じいちゃんばあちゃんが多いから、子猫を飼おうという人は少ないんじゃないか、もらい手に困っているんじゃないかと考えました」

 そこで、中部地方にある故郷の保健所に連絡をとってみました。保健所は「ぜひ見にきてください」と大歓迎でした。ぺちさんは、相性を見るために1匹めのイチを連れて保健所を訪れました。そこで、保健所の女性が最初にイチに近づけて見せたのが、メスのアズでした。

サンダルを抱える猫
人なつっこいアズ

 イチとアズはお互いに威嚇することもなく、同じケージに入れられても、変わりませんでした。「じゃあこの子にします」。誓約書にサインしたり、自宅の住所を書類に書いたりしたあと、避妊手術をしたのち獣医師に記入してもらう書類などをもらって、東京に戻りました。

 アズは人懐っこい性格。宅配便やガスの検査で人がやってくると、必ずあいさつしにいきます。食いしん坊で、すくすくと大きくなりました。

「もらい手がないんじゃないかと」

 2匹と2人の暮らしが約3年続いたのち、最後にやってきたのが、メスのテンでした。テンは、アズと同じく故郷の保健所でもらってきました。

「妹が『アズがお姉ちゃんになったところを見てみたい』と言い出したんです。私も経済的な余裕がある限り、飼えるだけ飼いたいという思いがあったので、『見るだけ見にいこう』という話になりました。保健所で妹が『この子がいい』と選んだのがテンでした」

 妹が「この子と暮らしたい」というと、保健所の女性が「その子だけもらい手がないんじゃないかと思っていました」と話してくれました。というのも、テンのほかは、生後2カ月ぐらいの子猫ばかり。テンだけが生後3カ月を過ぎているらしく、体がひとまわり大きかったのです。

 そんなテンを東京に連れ帰った日のこと。ぺちさんは、先住猫で年上のイチやアズに慣れるまで隔離する意味で、テンを大きめのポータブルケージに入れて眠りにつきました。

 ところが、翌朝ケージを見ると、テンの姿がありません。ポータブルケージのチャック部分が壊されていたのです。部屋の片隅でおびえているのでは、ストレスを与えてしまったのではと不安になったぺちさんでしたが、探してみると、テンはアズと一緒に行動していました。アズと遊びたくて、チャックを壊してケージを出たのではないかとぺちさんは考えています。

くつろぐ2匹の猫
アズ(奥)を慕うテン(手前)

 それから約2年がたちました。イチとアズは推定5歳、テンは推定2歳。みんな病気もなく、仲良く暮らしています。イチは相変わらずマイペース、アズは人懐っこく、テンは「お姉さん」のアズにいつも追随しています。

「猫の『わかりにくさ』っていうのは、ミステリアス。もっと知りたい、なぜそんなことをするのか知りたいと思わせる不思議さがありますね。猫はずっと猫のままでブレない。そこが好きだし、憧れでもあります」

 ぺちさんはもしかすると、会社員として働くことに向いていなかった自分と、ブレずに生きる彼女たちとをどこかで重ね合わせて見ているのかもしれません。

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土井大輔
ライター。ゲーム会社で武将がいっぱい出てくるゲームを作っていたはずが、いつのまにかフリーランスに。小学生の頃に飼ったイカついシェパードを、漫画『北斗の拳』から「北斗」と名付けるも、父はその名を恥ずかしがって、予防接種のとき「ポチ」で押し通した思い出。

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