林遣都さん「命については人も動物も変わらない」 映画『犬部!』インタビュー

 7月22日から公開される映画『犬部!』で主演を務めた林遣都さん。北里大学(十和田キャンパス)に実在した動物保護サークル「犬部」の奮闘ぶりを描く本作で、林さんは同サークルを設立した獣医学部の学生をモデルにした花井颯太役を熱演した。自身も動物好きだという林さんに、本作の撮影秘話や、動物との向き合い方について話を聞いた。

(末尾に写真特集があります)

動物とふれあう時間を大切にしている

「僕は犬・猫に限らず動物全般が大好きで、動物たちは昔から身近な存在でした。犬を飼っていたし、猫も祖父の家にいましたし、今でも公園や動物園などで動物とふれあう時間は大切にしています」という林さんだから、颯太役はまさにハマリ役だったようだ。

 初タッグとなった篠原哲雄監督からは「颯太役には、それなりの覚悟を持って挑んでほしい」と念を押されたとか。

「篠原監督とは、本作で初めてお会いしました。台本に書かれている動物たちとのシーンをすべて実現させるのは難しそうだと思いましたが、監督からは『全部実現させる!ぐらいの気持ちで、毎シーン毎シーンをやり遂げてほしい』というようなメッセージをいただいたので、監督を中心にみんなで頑張っていきました」

 颯太は、“犬バカ”と言われるほどの動物好きで、殺処分されそうな犬や猫たちの命を救おうと、どんな状況でも諦めずに駆けずり回っていく熱血漢だ。林さんはそんな颯太に心を打たれ、丁寧にアプローチをしていったそうだ。

「颯太役を演じるにあたり、いろんなお話を聞かせていただいたり、モデルになった方たちとお会いしたり、資料もいただいて読み込んだりしました。動物保護という面では、大きな変化を与えてきた方たちの物語ですし、映画として、より多くの人に届けるべき作品だなとも思いました」

映画『犬部!』林遣都さん
犬派だけど猫も大好きだという林遣都さん

動物と共演して母性が生まれた

 獣医師の先生方から直接聞いた話は、役作りにも大いに活かせたという林さん。

「颯太は、モデルとなった太田快作先生の動物保護に対する考え方や生き様がすごく投影された役なので、まずは太田先生にお会いさせていただきました。実際に太田先生は動物愛に関して突出している方だったので、その精神をしっかりと受け継いで役を作っていこうと思いました」

 ここまで多くの動物たちと共演したのは初経験だった林さんだが、動物といる時間を心から楽しんだとか。特に、颯太のバディとなる犬の花子との共演が忘れられないそうだ。

映画『犬部!』ちえちゃん
映画『さくら』にも出演していたちえちゃん

「花子役のちえちゃんは本当に賢くて、まさに天才でした。花子は颯太にとってかけがえのない存在ですが、ちえちゃんはしっかりと役をまっとうしてくれましたし、みんなが心を打たれたと思います。よく撮影のためにコミュニケーションが必要だったのでは?と聞かれますが、こっちが意識的にやっていたというよりは、ただただ動物と一緒にいる時間が楽しかったという感じです。

 もちろん、台本に書かれていることをすぐにできるわけではないんですが、全員で試行錯誤しながら、動物たちのことを第一に考えて撮影を進めていきました。動物と共演していくうちに、僕の中に母性が生まれ、彼らが大切な存在になっていくのを感じたので、ちょっとこれまでとは動物の接し方が変わった気がします」

映画『犬部!』林遣都さんと花子
犬たちとの共演を心から楽しんだという

「命」は人も動物も変わらない

 保護犬や保護猫を巡る問題をリアルに織り込んだ本作。中川大志さん演じる親友の柴崎涼介が保健所に勤務し、苦悩する姿が心に刺さる。

「柴崎と颯太は離れている期間もあったけど、常にお互いのことを思い合い、きっと尊敬し合っていたんじゃないかと。自分が間違っていると思うことは絶対にやりたくない颯太と、当事者となり痛みを知って現状を変えていこうとする柴崎という2人の関係性が、とても素敵だなと思いました。

 中川くんとは今回が初共演でしたが、年下ですがすごくしっかりしていて、誰に対しても対等に思いを伝えられる人だなと思いました。本当にハートが強くて頼もしい方だと思ったし、2人ですごくいい関係性が築けたと思います」

 動物の殺処分に反対し続ける颯太が、「命の所有権」について疑問を放つ言葉も非常に切ない。

「僕も好きなシーンですが、常に動物の命を救ってきた人が言うからこそ、すごく説得力があるなと思いました。やはり命については、人も動物も変わらないと以前から思っていましたが、本作に出演したことで、より一層強く感じました。また、人は動物に与えるよりも、与えられているもののほうが多いんだなと、改めて考えさせられました」

映画『犬部!』林遣都さん
原案を読んで共感したという林遣都さん

本作に参加できたことが誇り!

 まだまだコロナ禍だが、命について描く本作は、より一層心に響きそうだ。

「ちょうど撮影もコロナで大変な時期でしたが、動物保護に限らず、自分を犠牲にして何かを変えようと戦っている人の人生は、本当にかっこよくて美しいなと、撮影中にすごく感じていました。劇中の『一殺多生』という言葉が出てきますが、人にも置き換えて考えられる問題もたくさんあると思いますし、命に対して改めて考えるきっかけを与えてくれる物語だなとも思いました」

 撮影では多くの獣医師たちが監修についてくれていたが、その1人からいただいた手紙に、林さんは胸がいっぱいになったとか。

「やはり獣医師さんたちの世界はすごく大変で、声を上げてもなかなか届かないと。でも僕たちは本当に動物を愛しているし、これから生まれてくる命に悲しい未来を見せないために努力しています、とありました。ただ、なかなか横のつながりが少ない世界だそうで、映画化されたことをきっかけに、そういう思いを広めてもらうことは、本当にありがたいですとも書いてあったんです。

 その時、僕は自分がこの作品に参加できたことに誇りを持てましたし、俳優業はこういう役割も果たせるのかと感じられて、すごくうれしかったです。

 本当に今回、素晴らしい題材と役に挑戦する機会を与えていただき、心から感謝していますし、勇気をもらいました。太田先生のように、ぶれずに突き進むことはなかなか難しいことですが、何事においてもやらないで後悔するよりはやってみるという気持ちで常にいたいと、僕自身も思いました!」

『犬部!』
2021年7月22日(木・祝)全国ロードショー
監督:篠原哲雄 脚本:山田あかね 原案:片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」(ポプラ社刊)
出演:林遣都、中川大志、大原櫻子、浅香航大ほか
配給:KADOKAWA
『犬部!』公式ホームページ
(c)2021『犬部!』製作委員会

写真・高木亜麗

山崎伸子
ライター、ときどき編集者、カメラマン。映画やドラマのインタビューやコラムをメインに執筆。趣味は旅行、酒場&酒蔵巡り、パンダグッズ集め。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』。実家に帰るとやんちゃなわんこが二足歩行でお出迎え。

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この連載について
映画『犬部!』連載
行き場のない犬や猫を救うために立ち上がった、現役の獣医科大学生たちの奮闘を描く映画『犬部!』が、7月22日に劇場公開! この連載ではキャストの林遣都さん、中川大志さんのインタビューなど、関連記事をお届けします。
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