沖縄で保護されたボロボロの野良猫 優しい夫婦のもとでシンデレラのように変身

 沖縄の観光地に遺棄され、人間のお弁当を食べて生き延びていた猫の小春は、愛猫を失った夫婦の家族になり、ボロボロの状態からピカピカの美猫に生まれ変わった。

(末尾に写真特集があります)

パステル三毛の毛色にひかれて

 神奈川県で夫と暮らすとわさんは、昨年の2月に愛猫を病気で亡くしている。「いつか、もう一度猫と暮らしたい」。とわさんは、そんな思いを心の奥に持ちながらも、「次に家族に迎えた子をまた可愛いと思えるのだろうか」と自問しつづけていたという。

 そんなとわさんが一歩を踏み出すきっかけになったのが、新型コロナウイルスの影響で、保護猫の譲渡が滞っているという話だった。

「保護猫を迎えるのは初めてのことだったのですが、行き場のない猫の助けになれるなら、新しい子を迎える理由になると思いました」

 しかし、いったん譲渡先募集サイトを見始めると、「どの子も可愛い」と目移りする。そんなとき目に留まったのが小春(雌・ミックス)だ。

パステル三毛の毛色が、とわさんの目を引いた(とわさん提供)

「最初は、パステル三毛の珍しい毛色にひかれ、プロフィールを見て、この子に安らげる環境を与えてあげたいと思ったんです」と、とわさんは振り返る。

 小春は、沖縄の観光地に遺棄され、観光客に与えられるコンビニの総菜やパンを食べて生き延びていたところを保護された元野良猫。神奈川県の保護団体、「おーあみ避難所」にやってきた当初は栄養不良で体が痩せこけ、疥癬の影響でところどころ毛がハゲていた。あまりにボロボロの状態だったため、スタッフには老猫だと思われていたが、健康診断では推定2歳と診断された。

 「おーあみ避難所」が小春の譲渡先募集を開始したのは疥癬の症状が改善し始めてからだったが、長い月日をかけて作られた体質はそう簡単には変わらない。一度は譲り受けたいと名乗り出た家族がいたものの、小春の健康状態を理由に辞退されていたという。

「いろんな経緯があったけど、遠い沖縄からめぐりめぐって我が家に来てくれた。縁があったんだなと思いました」ととわさん。夫婦は、外出自粛期間中の5月にリモートで小春とお見合いし、人なれしていて抱っこ好きな姿を見て、トライアルを決断した。

観光地で人間のお弁当を食べて生き延びていたため、栄養状態が悪かった(とわさん提供)

人間の食事を横から「バクッ!」

 おっとりとした性格の小春は、トライアル初日からとわさんのひざに乗ってくつろぐ姿を見せた。

 その時の印象をとわさんは、「やはり痩せていて毛並みが薄かったですね。それでも、保護当時の写真よりもだいぶ良くなってはいたので、徐々に良い状態にしていければと思いました」と話す。

 2、3日も経つと、小春はすっかり新しい家に慣れ、まるで生まれた時から住んでいる家のようにリラックスして過ごすようになった。ご飯もトイレも問題なくクリアし、とわさん夫婦は正式に小春を家族に迎え入れた。

遊んで欲しいときは、おなかを見せてアピール(とわさん提供)

 「基本的にはとても良い子」という小春だが、とわさん夫婦を唯一驚かせたのは、人間の食べ物をねらうことだった。

 「人間のお弁当を与えられていたので、私たちが食べているものを横から『バクッ!』と奪いにくるんです。特に驚いたのがパン。ある時、小春がキッチンカウンターでパンをかじっている姿を見て、『パン食べてるよ!?』と主人と顔を見合わせました。空腹の経験があるので、あるものを食べてしまうんですよね。私たちも、食べ物を出しっぱなしにしないように気をつけるようになりました」

 一方で、ほほ笑ましい姿はあげればキリがない。

「小春は私には甘えん坊ですが、主人は冷たいんです。抱っこしても嫌がられて、そっけなくあしらわれる姿は、まるで父親と娘のよう(笑)。私に対しては甘えん坊で、肩に飛び乗って来たり、寝るときも一緒の布団に入ってくるんですけどね」

タブレット前に座り、猫じゃらしアプリ起動してもらうのを待っているという(とわさん提供)

 2歳の小春はまだやんちゃ盛り。遊んでもらうのも大好きだ。「猫じゃらしを振ってほしいときは、ゴロンと転がってアピールします。タブレットの猫じゃらしアプリも好きで、遊びたいときはタブレットの前に座って待機しているんです。賢いですよね!」と、とわさんはうれしそうに話してくれる。

シンデレラのような大変身 

 とわさんの家に迎えられておよそ半年。保護当時、ガリガリに痩せて目つきも鋭かった小春は、見違えるようにふわふわの美猫になり、大きな瞳には好奇心旺盛で甘えん坊な表情をのぞかせている。まるでシンデレラのような小春の変身ぶりを目の当たりにしてきたとわさんは、今も過酷な環境を生きている野良猫たちに思いをはせる。

「幸せそうに寝ている姿を見ていると癒やされます」ととわさん(とわさん提供)

「どの子もみんな、好きこのんで外で暮らしているわけではないんですよね。小春の過去を思うと、幸せそうに寝ている顔がほんとうにいとおしく感じます。一匹でも多くの猫が、小春のように心から安心してくつろげる暮らしを手に入れてほしいですね」

 変化したのは小春だけではない。小春の存在は、愛猫を失って落ち込んでいた夫婦に再び笑顔をもたらした。

「先代の猫を溺愛していたので、新しい子を心から可愛いと思えるのか不安でした。でも、今では私も主人もすっかり親バカです(笑)」ととわさんは話す。

とわさんに対しては甘えん坊。夫に対してはクールな小春(とわさん提供)

「小春が遊んでほしいときには思いきり遊んであげて、甘えたいときには思いきり甘えさせて、とにかく要求に応えてあげたいですね。前の子は、若くして病気で亡くなってしまったんです。だから小春に望むのは、なるべく長生きして、ずっとうちの子でいて欲しいということだけ」

 幸せにしたいと思える存在があることは、自分自身の心も満たしてくれる。亡くなった愛猫の存在を胸に抱きつつ、とわさん夫婦と小春の日々はこれからも続いていく。

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おーあみ避難所
【ワンちゃん・ネコちゃん譲渡会】
日時:12月13日(日)12~15時
場所:島忠ホームズ新山下店(神奈川県横浜市中区新山下2-12-34)
主催:おーあみ避難所/共催:Dog-Nuts(ドーナッツ)
*3密対策のため、当日11時30分から整理券を配布します。

◆おーあみ避難所の活動の様子はホームページをご覧ください。
原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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