寄生されてからでは遅い! 犬や猫を寄生虫から守るため、大切なのは予防

 病気やトラブルから犬や猫を守るため、飼い主さんにぜひ知っておいてほしい知識を、シリウス犬猫病院の院長、石村拓也獣医師が教えてくれます。連載5回目は寄生虫についてです。

春は予防のシーズン!

 暖かくなってきて春の訪れを感じます。さて、春は予防のシーズンです!

 愛犬や愛猫がずっと健康に過ごせるように、しっかり予防をしてあげましょう。今回はノミ、マダニ、フィラリアについて説明します。

体の表面から血を吸う「ノミ」

 ノミは体の表面から血を吸う小さな寄生虫で、寄生すると皮膚表面で吸血・産卵を繰り返します。

 体長は約3㎜と小さく、毛の間をすばしっこく逃げ回ります。とても繁殖力が強く、温暖な環境だとどんどん増えていきます。

 ノミのふんは黒い小さなごま粒のように見えます。ノミのふんを湿らせたティッシュの上に置くと、赤茶色の色素がにじんでくるのでチェックしてみましょう。

ノミが寄生した犬
犬に寄生したノミ成虫

 寄生したノミは、アレルギーを起こしたり、病原体をうつすこともあります。

ノミアレルギー性皮膚炎

 ノミに繰り返し吸血されることで、ノミアレルギーを引き起こすことがあります。

 ノミアレルギーは非常に強いかゆみを伴い、少数の寄生でも症状が出るようになってしまいます。アトピー性皮膚炎の場合、ノミ寄生により症状が強く出てしまうので、予防がとても重要です。

動物のノミアレルギー症状
ノミアレルギーの症状

瓜実条虫(サナダムシ)

 体長50cm以上になることもあるサナダムシ。条虫の卵を宿したノミを、犬や猫が食べてしまうことにより寄生します。下痢や嘔吐(おうと)の原因となります。

市街地にもいる「マダニ」 死に至る病気になることも

 マダニは他のダニと比べると大型で、3~10mm程度です。成長段階や吸血の有無で大きさや形態を変化させます。

 森林だけではなく、市街地の植え込みや公園の茂みにも生息しています。

 マダニはクチバシを皮膚に差し込んで固定し吸血します。もし見つけても無理に引っ張ってはいけません。無理やり引っ張ってしまうとマダニの頭部だけが皮膚に残り、皮膚炎を起こしたり、マダニの唾液(だえき)が動物の体内に逆流して、感染マダニだった場合は感染症にかかってしまう恐れがあります。

 マダニにより、死に至る恐ろしい病気になることもあります。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

 マダニを媒介とするウイルス性感染症です。
 主に吸血によって人にも動物にも感染し、発熱や消化器症状、血小板減少などがみられます。SFTSは、2011年に新しいウイルス感染症として報告され、人において感染者と死亡者が続出しています。

犬バベシア症

 バベシア原虫が犬の赤血球に寄生して破壊します。貧血、発熱、食欲不振、黄疸(おうだん)などが見られ、急性の場合は死に至ることもあります。

猫ヘモバルトネラ症

 ヘモバルトネラフェリスという細菌による感染症です。猫が感染すると、貧血、元気消失、体重減少、食欲不振などの症状がみられます。感染した猫が出産すると、子猫にも菌が移行します。急性の場合は死に至ることもあります。

蚊が媒介する「フィラリア」

 フィラリアは成虫になると最大30cmにもなるソーメンのような糸状の寄生虫で、蚊によって媒介されます。

 寄生したフィラリアの成虫は最終的に肺動脈や心臓に到達します。寄生により血流の流れが妨げられたり血管が傷つけられたりなど様々な障害が発生し、最悪死に至ることもあるとても怖い病気です。予防がとても大事です。

ミクロフィラリア
犬の血液中にみられたミクロフィラリア(フィラリアの子供)

 シーズン最初に予防薬を投与する場合は、血液検査でフィラリアが寄生していないことを確認する必要性があります。

 フィラリア成虫より産出されたミクロフィラリアが体内にいることを知らずに予防薬を飲ませた場合、最悪死に至る可能性があるからです。必ず検査してから、予防薬を開始しましょう。

フィラリア抗原検査
フィラリア抗原検査:陽性

 予防の重要性が、お分かりいただけたでしょうか?

 寄生されてからでは遅く、そうなる前の予防がとても大事です。愛犬や愛猫を守るため、しっかりと予防してあげましょう。

(次回は4月28日に掲載予定です)

シリウス犬猫病院
神奈川県川崎市中原区木月2丁目10−6
044-789-9030
*予約優先制、詳細はホームページから

【前の回】本当に怖い狂犬病、発症すると致死率ほぼ100% 愛犬にワクチン接種を

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石村拓也
獣医師。東京農工大学農学部獣医学科卒業。横浜市内の動物病院などを経て、2017年3月にシリウス犬猫病院開院。川崎市獣医師会、日本獣医皮膚科学会、耳研究会、日本獣医輸血研究会所属。

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この連載について
獣医師さんから
病気やトラブルから犬や猫を守るため、飼い主さんにぜひ知っておいてほしい知識を、シリウス犬猫病院院長の石村拓也獣医師が教えてくれます。
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