毛皮輸入量2020年は半減 でも日本で消費される毛皮のため推計61万匹が犠牲に
ファッション産業は新型コロナウイルスで大打撃を受けた産業の一つであり、今一番変化している産業でもある。サステイナブル、エシカル、そしてアニマルフリー、これらのキーワードはファッション産業の生き残りのためには必須になっているようだ。
コロナで露見した毛皮産業の危うさ
そんな中で最も今変化しているのが、動物の毛皮を使わない選択をする、ファーフリーの動きだろう。なぜなら新型コロナウイルスが毛皮のために飼育されるミンクに感染し、ミンクが約2000万匹殺され、毛皮産業の危うさが露見したからだ。
新型コロナウイルスの中間宿主として毛皮動物も挙げられ、また実際に毛皮のために飼育され殺される13カ国のミンクたちに感染がひろがり、さらにはミンクの中でウイルスが変異し、人に再感染することも立証された。ミンクだけでなく、ヌートリアやたぬきも中間宿主になり得るため、ヨーロッパでは毛皮農場の禁止が一気に決定、また実行された。
オランダは毛皮農場が2023年までに閉鎖される予定であったがこれを前倒し、2020年ですべての毛皮農場が閉鎖された。2020年、フランスが5年の移行期間を持って毛皮農場禁止することを決定し、ハンガリーもミンクやキツネなどの毛皮農場を禁止した。
日本での消費で推計61万匹が犠牲に
日本では商業的に行われる毛皮農場は2016年に全て閉鎖されたが、毛皮農場が国内になかったとしても大量の毛皮を輸入することで、他国での感染症拡大や、公害、そして動物虐待にカネを払い続けている。カリフォルニア州のように毛皮製品の販売を州法で禁止できることは最善だが、日本のように政府が保守的な国では到底難しい話だ。
しかし政府の意識が低いことは国民の意識が低いことを意味しているわけではない。企業と消費者が毛皮の輸入と購入をやめればいいだけなのだ。そして間違いなく日本はその方向に動いている。
2020年、毛皮付き衣類の輸入点数は1,082,446点、重量は669,116㎏だった。2,421,677点、1,302,806㎏だった2019年と比較すると、点数では55%減少、重量では49%減少した。輸入量がピークだった2006年と輸入点数を比較すると実に94.9%も減少している。
それでも、日本での消費のためにまだ615,737匹が犠牲になっている計算だ(※1)。売れ残りや廃棄があるにしても約100万人が毛皮付きの商品を購入したと考えられるが、購入した人は動物を殺して剝がした毛皮だと気がついてすらいないかもしれない。
犠牲になるのはいつも社会的弱者=動物たち
動物は、もしも農場内で1匹が感染すれば全員が殺されるため、感染数は少なくても犠牲数は人間の比ではなくなる。人間の営みによって生まれ、人間の経済活動や行動によって世界中に広められた新型コロナウイルスによって、ミンクが人間の10倍も犠牲になったのだ。
新型コロナウイルスの発生がなかったとしても、もともと毛皮を使わないことを約束する企業はどんどん拡大している。先日はバレンシアガとアレキサンダー・マックイーンがファーフリー宣言をしたところだ。そこにさらに、疫病を蔓延(まんえん)させる可能性までもが社会に知れ渡ったのだから、今すぐにでも世界中がファーフリーになってもおかしくない状況にある。
61万匹もの犠牲を生み出している日本だが、その消費量が他国に比べて多いほうだとは思わない。そして現在の減少率を考えると法律に頼らずに市民の意識の高さによってファーフリーにもなれるはずだ。
課題はファーだけではない。動物を何千~何十万匹と集約的に飼育する環境は、疫病と隣り合わせである。新たに生み出される人間の感染症の75%は動物由来であるが、その多くを占めるのがこういった経済動物の集約的な飼育である。アニマルフリーは動物のためにも、環境のためにも、人のためにも必要なことだ。毛皮に限らず、植物性のレザーや、エコでアニマルフリーな暖かい素材など、数々のイノベーションが生まれている。こういった取り組みを応援しながら、まずはファーフリーを市民の力で実現する初めての国にしてみるのはどうだろうか。
(※1)財務省貿易統計からアニマルライツセンターが試算
(次回は6月14日に公開予定です)
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