「ワクチンさえ受けていれば」飼い主一生の不覚! 愛猫の梵天丸が猫伝染性鼻気管炎に

 この連載も48回。決して百点満点の飼い主ではない私ですが、今回はざんげです。防げたはずの病気に、愛猫がかかってしまったのです。自戒をこめて、その経緯をお話ししましょう。

(末尾に写真特集があります)

いつも鼻水っぽいから、つい……

 今回病気になったのは、我が家の長男坊、梵天丸。推定年齢14歳。元野良猫です。(梵天丸との出会いはこちら

 14年前、我が家の子になった時点で、鼻は膿で詰まり、片目は失明寸前。目からは涙、ヨダレもたれて、ズビズビの状態でした。長い時間をかけて投薬や目薬で治療を続け、やっときれいになってから数十年。

 それでも、いつもなんとなく鼻水っぽい子でした。きれいなピンク色の鼻はいつもツヤツヤで、どうかすると水っぱなが垂れていることも。目ヤニもちょいちょいついていて、気が付くと取ってあげていました。

 その点は主治医も了解していて「この子は慢性鼻炎っぽいから、鼻水は出やすいでしょう。ただ、呼吸音がゴロゴロいったり、鼻や目が腫れるようなら、すぐに連れてきて」、そう言われていたのです。

飛んできた鼻水が黄色い!

 先月のある朝。なかなか目覚めない私の胸の上に、どっかり座った梵天丸。香箱を組み、じろりとこちらを見下ろしています。

「お、重い……。苦しいよ、梵!」

「むぅ~~……」

「わかった。おなか減ったよね。起きるから、今起きるってば……」

 (……ぶしっ!)

 いきなり目の前でくしゃみです。その瞬間。

「うげっ! 冷てっ!」

 何か飛んできました。あやうく目に入るところでしたが、手探りでティッシュをつかみ、顔を拭きます。

「鼻水飛ばさないでよー」

 あれ? ぬぐったティッシュが薄黄色いのです。

 よく見ていると、梵天丸がいつもくつろいでいるあたりの壁にも、汚れが。そういえばくしゃみの回数も多いような。目のふちもこころなしかピンク色が目立ちます。

「あれ……そいうえば、ワクチンいつだっけ?」

お知らせが来ていたのに!

 ともあれ、動物病院に予約を入れて梵を連れていきます。先生はカルテを見て渋い顔。ワクチン接種が期限切れだったのです。

「すみません。お知らせのはがき、いただいてたのに」

 私がワクチンさえきちんと受けさせておけば。まさに後悔先に立たずです。

 診察の結果、結膜炎も発症。血液検査もしてもらい、インターフェロンまでは必要ないだろうという結論に達しました。幸い、口の中に潰瘍(かいよう)もみつからないので、おそらくカリシウイルスではなく、ヘルペス型であろうとのこと。

 まずは10日分、飲み薬と目薬2種類を処方されました。朝晩の投薬と、1日3回の点眼薬で様子を見て、改善されるようなら続きの薬をもらうことに。もし改善がみられなかったら、別の検査をしましょう、とのことでいったん戻ります。

 ちなみに、この日、検査と1週間分の薬でかかったお金はおよそ1万3000円でした。

点眼される猫
毎朝の投薬&点眼の儀。嫌がりますが、仕方がありません。ごめんよ梵。飼い主がしっかりしていれば、こんなことしなくて済んだのにね。

目薬大嫌い! でもがまんがまん

 長年猫を飼っているせいか、私も夫も投薬は得意です。昔、長老猫のアーサーを介護していたころは薬の種類があまりに多く、薬局で空っぽのカプセルを買ってきて、まとめて詰めて飲ませたりしていました。

 今回の梵天丸は、朝は薬のかけらが3個。夜は4個。これぐらいならひとまとめにつまんで口に放り込み、飲ませることができます。

 苦労するのが目薬です。どうやらしみるようで、えらく嫌がります。それでもなんとか2種類を点眼して、猫用ミルクなどでご機嫌をとって、1週間。

 なんとか鼻水も透明になりました。目元の腫れも引き、くしゃみもあまりしません。

 先生に電話で様子を伝え、あと21日分、薬を出してもらうことに。症状がまったくみられなくなっても、最後まで飲ませなさい、とのこと。

 結局、投薬と点眼は1カ月に及びました。追加の薬は金額にしておよそ1万1000円。
つまり合計2万4000円ほどかかったことになります。

 猫伝染性鼻気管炎、猫上部気道感染、猫風邪……いろんな言い方がありますがいずれにしても、ワクチンをきちんと接種していれば防げる病気。

 梵天丸は一歩も外へ出していません。が、私たち人間が外からホコリなどを持ち込むこともあるでしょう。そもそも、出会ったときにこの病気にかかっていたのですから、再発の可能性は十分にあったのです。

 年に1度のワクチン接種と健康診断。両方合わせても1万5000円ほどです。まさかそれをケチったわけではありませんが、結果的に余計なお金がかかっただけでなく、何よりも猫が病気で苦しい思いをせずに済んだはず。そう考えると、飼い主失格だなあと反省しきりです。

 おかげさまで、重症化することなく梵は元気にしています。

 みなさんの愛猫がこんな目に合わなくていいように。どうかワクチン接種の期日をチェックしてあげてください。

薬が終わってほっと一息。「お薬はイヤでち…」ちょっとすねた顔もたまりません♪
薬が終わってほっと一息。「お薬はイヤでち…」ちょっとすねた顔もたまりません♪

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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この連載について
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猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々。猫たちとの思い出などをご紹介します!
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