食い意地王子、猫の「エンマ」 それが嫌いなの? 苦手な食べ物は意外なものだった
前回は我が家の次男猫のエンマが、いかに食い意地が張っているかというお話でした。しかしついに、エンマにも食の好みがあることがわかってきました!
え? そんなものが好きなの?
人がキッチンにいれば、とにかくおねだり攻撃を仕掛けてくるエンマ。子猫のころは、調理している背中に飛びついてきたり、冷蔵庫の上から飛び降りてきたり。調理中は火も使うし包丁だってあります。前の家にいたころは、締め出し作戦に出たほどでした。
そんなある日。葉物野菜が大好きな長男・梵天丸にレタスの切れ端をあげていると「うーーぅわぁぁーぅぅ!」
エンマのおねだり攻撃の始まりです。
後ろ足で立ち上がり、必死の形相でこちらの手元を凝視しています。お構いなしにこちらは調理を続けます。今度は炒め物を準備を開始。モヤシを水洗いしてザルにあげて……。
「にゃあおぅぅ!」
「エンマの好きなものなんてないよ。野菜しかないよ?」
「んがぁぁっ!」
「だからほら、モヤシだってば!」
諦めさせるつもりで、モヤシを一本、鼻先に突き出しました。すると「ぱくっ……しょりしょりしょり……」
た、食べるんかい!
「にゃおぅっ!(おかわり)」
えええええっ?
それ以来、冷蔵庫の野菜室からモヤシの袋が出てくるたびに、大騒ぎするようになったのです。
え? これが苦手なの?
その一方で、ついにエンマにも苦手な食べ物があることがわかりました。
キャンピングカー旅で北関東へ出かけたときのこと。
茨城の漁港で魚介を仕入れてから那須のキャンプ場に繰り出すのが我が家のパターンです。漁港の観光客向け市場は、運がいいと刺し身のハギレやアラを分けていただけるので、猫たちも楽しみにしている立ち寄りポイントなのです。
その日はたまたま、なまり節を売っているお店で、燻製(くんせい)前の半端ものが安く手に入りました。これなら味もついていないし燻製前で癖もなさそう。猫も人間もうれしかろうと、ほくほく買い物して車に戻りました。
ぶら下げたビニール袋からはいい匂いがしたのでしょう。車に戻ったとたん、猫家族が一斉に起きだしてきて大騒ぎです。
お刺し身や牡蠣などを車の冷蔵庫に片付け、さっそくなまり節を分けてあげることに。
包丁で小さめに刻んで、ひとかけらずつあげたのです。
猫たちは、それはもう大喜び。「おかわりちょうだい!」と騒ぐばかりか、調理台のまな板を狙おうとする始末。夫が必死のディフェンスでくい止めてくれました。
「エンマ、ほら、おあがり」
カツオのいい匂いがたちこめ、エンマも人一倍大きな声でおねだりしています。彼の鼻先になまり節のかけらを差し出したら……。
(フンフンフン……)
迷わず食らいつくと思ったのに、慎重に匂いを嗅いでいます。と、突然くるっと向きを変えて、バンクベッド(運転席頭上の常設ベッド)へ逆戻り。
「え? エンマ。ほら、食べないの? カツオだよ! 好きでしょ?」
よこせよこせと騒ぐ他の子たちを押しとどめ、ベッドのエンマのところまで運んでやります。フンフンと匂いは嗅ぐものの、反応は同じ。ふぃっ、と悲しそうに顔をそむけます。
「なんでー? なんでこれが嫌なの?」
全く理解できません。本猫はただただ悲しそうな顔をして、わいわいと食べている猫たちを眺めるばかり。
その後もごくたまにエンマが「いらない……」と言うことがあって、ようやくわかりました。どうやら煮干し、イリコ、シラス、なまり節……。つまり、乾燥したお魚がダメなのです。(塩分のあるものは与えていません)
干物はあげたことがありませんが、そもそも狙おうともしません。いい匂いだけはするので、おいしそうだとは思うみたい。なのに食べられないのが残念なのでしょう。食卓に干物があるとそれはそれは悲しそうな顔をします。
「なあ、干した方がうまみを増すし、栄養だってあるんだぞ?」
夫はにやにやしています。何でもかんでも食い意地の張ったエンマに好き嫌いがあるのを面白がっているのです。
「モヤシが大好きで乾いたお魚が苦手。そんな猫、いるんだね」
しかし、モヤシをもらう分には誰もライバルはいません。ある意味、エンマが勝ち組なのかもしれませんね。
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