覚悟の奥に「やさしいきもち」が待っている 愛犬ピピちゃんが浜島直子さんにくれた宝物
モデルとしても、愛犬家としても大人気の浜島直子さん。元保護犬のピピちゃんと出会ってから今日まで、いろんなことがありました。ピピちゃんや家族への思い、気持ちの変化や今思うことを浜島さんがつづります。第2回、どうぞお楽しみください。(第1回はこちら)
ピピちゃんが家族に加わって、私の人生はより豊かに、より深いものになりました。ただ、これから動物を迎え入れたいと考えている方々に、まずお伝えしたいことがあるのです。それは、「もし迷っているなら、覚悟が決まっていないなら、やめたほうがいい」ということ。
少し厳しい言い方かもしれませんね。でも命を受け入れることは、並大抵のことではありません。家族がひとり増えるということは、お金がかかります。病気になる可能性もあります。旅行も制限されます。まずはそれらをシミュレーションすることから始めてほしいのです。
動物を迎え入れることには、あらゆる責任が伴う
我が家の場合は、夫がアレルギー持ちだったので、それらが発症しないかどうかを調べることから始めました。またピピちゃんはマラセチアという皮膚病を患っていて、月に一度は病院に連れて行く必要があり、週に2回のシャンプーが必須です。息子が生まれる前は私が洗っていましたが、時間が捻出できない今は、お金を支払ってプロに任せるようになりました。
また、ピピちゃんと一緒に北海道の実家に帰ったときのこと。飛行機に乗せるとシーツをガリガリとかき、出血するほどのパニックを起こしてしまいました。2回目は眠くなる薬を飲んでもらいましたが、それでも状況は変わらず。以来、2度と飛行機には乗せないと決めたのです。
どうしても飛行機に乗るときには、前述のシャンプーをお願いしているところがホテルも兼ねているので、預かってもらっています。ピピちゃんのベッドを持ち込むなど、安心できる環境を整えることにも心を砕きます。私たちの都合にピピちゃんを合わせるのではなく、私たちが合わせよう。そう考え直して、全ての行動を見直したのです。
大切なのは、育った背景に思いをはせること
さらに、一匹一匹の個性を見極めて育てることも大切です。たとえばピピちゃんのような保護犬は、辛いストーリーを抱えている子が多く、仕方なく凶暴になってしまうことが多いものです。
ごはんに執着するのは、ずっと飢えていたから。どこにでもおしっこするのは、ゲージに閉じ込められていて縄張りがつくれなかったから。そんな彼ら彼女らの背景を想像してあげることが、理解を深め、距離を縮める一歩になると思うのです。
ピピちゃんも例外ではありませんでした。ごはんになると、顔をお皿に突っ込んでうなります。「取らないよ。ゆっくり食べてね」と伝えても、ずっとうなり続けます。さらに食べ終わったお皿を下げようとすると、飛びかかってきて私の手をかむのです。
そこで私は、ごはんを私の手ですくって、食べてもらう方法に変更しました。人間の手は悪ではない。そのことを知ってもらおうと考えたのです。それから少しずつピピちゃんの行動が変わり始め、今では普通にごはんを食べ、ごちそうさまをするように。
私はこのやり方を、10年ずっと続けています。コミュニケーションは「取る」以上に、「取り続ける」ことが大切だから。お互いに共通の言葉をもたないからこそ、継続して心を伝えていくことが信頼につながると考えているのです。
ただそこにいてくれる。その存在に感謝があふれる
だから私は、家でくつろいでいるときはもちろん、お散歩の途中もずっとピピちゃんに話しかけています。「いいお天気だね」から始まり、子供が得意ではないピピちゃんが小さい子になでられたあとなどは、「よく頑張ったね。吠えなくてえらかったね。天才!」などなど。すれ違う人々は、ずっとブツブツつぶやき続ける私を「なんかヘンな人」と訝しんでいることでしょう(笑)。
私は最初に「動物を家族に迎え入れることを迷っているならば、覚悟が決まるまでやめたほうがいい」と伝えました。その気持ちに変わりありません。でも、動物と暮らす大変さの奥には、ぬくもり、希望、そして無限大の幸福感が待っています。
ピピちゃんを家族に迎えて、私にもたらされた最大の幸せを言葉にするならば「やさしいきもち」。ピピちゃんと一緒にいることで、穏やかでゆったりとした、史上最高に豊かな気持ちがもたらされるのです。
外でいろんなことを発信したり表現したりすることを「動」とするならば、「静」の部分を満たしてくれるのがピピちゃん。私が元気でも疲れていても、ニュートラルな存在として、ただそこにいてくれる。そんなピピちゃんを、私は心から愛してやまないのです。
※第3回(最終回)は1月3日公開です。
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写真:浜島直子、浅井佳代子(プロフィール)
編集協力:本庄真穂
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