人間と動物の理想の暮らし方って? 愛犬ピピちゃんを育てる浜島直子さんが考える
モデルとしても、愛犬家としても大人気の浜島直子さん。元保護犬のピピちゃんと出会ってから今日まで、いろんなことがありました。ピピちゃんや家族への思い、気持ちの変化や今思うことを浜島さんがつづります。第3回、どうぞお楽しみください。(第1回はこちら)
豊かな日本だけど、ペットショップでは…
12年間にわたって「ミステリーハンター」として世界各国を巡る仕事に携わり、自分なりに気がついたことがありました。それはその国本来の豊かさは、トイレ、ゴミ箱、ペットショップ、この3つに表れるということです。
急速に発達した国の都市部などでは、トイレットペーパーが盗まれていたり、食べ物の残骸が大量に落ちていたりなど、自分だけに目が向いている内面が見て取れます。でも心まで豊かな国は、他者への気遣いができるから、トイレもゴミ箱もきれい。そういう衛生面で言えばもちろん日本がそうです。
ただ、ペットショップという観点で見たとき、日本はまだ欧米諸国に後れをとっていると感じるのです。ヨーロッパではペットショップを見かけることはありません。ペットショップで売られる動物をゼロにしなければ、保護犬もゼロにはならない。これは国が何かしらのルールを定めるべきだと考えています。
ベルリンや軽井沢で知った、幸せな共存のかたち
特に刺激を受けたのが、ドイツのベルリンで見た風景でした。たくさんの犬が、なんとノーリードで歩いていたのです。私がある犬をなでようとしたとき、飼い主よりノンノンというジェスチャーが。見渡すと、人々はむやみにほかの犬を触ったりしていません。だからこそ犬たちは、安心してノーリードで歩くことができるのです。
聞くと、ベルリンで犬を迎え入れる場合は、動物の保護施設から受け入れるのが最初の選択肢。さらにその際、まず飼い主が訓練を受けるのだとか。交通ルールのように国が決まりを定めているそうで、人間と動物のこんなにも成熟した社会があるのかと心から感動しました。
国内でも、軽井沢にある温泉旅館「星のや」での取り組みを知り、驚いたことがあります。敷地内にツキノワグマが出没していることがわかり、どう対処するかが問題になったときのこと。スタッフはこう考えたのだそう。
「熊のテリトリーにお邪魔している私たちなのだから、駆除という形は取りたくない。自然界のルールにのっとる形で、ここは立ち入るべき場所ではないことを伝える方法はないか」
その結果、熊を追い払う職業犬であるカレリアン・ベア・ドッグを輸入することにしたというのです。実際、その犬に触れることができたのですが、すごく穏やかで、「なでて、なでて」とおなかを見せてきてくれます。
ただリーダーが合図をするとサッと立ち上がり、その指示に従います。犬種の特性を知り、現場で生かしている実例を見て「ああ、これこそが共存だ」と思いました。「ともに生きることはどういうことか」を実感したのです。
今、保護動物の殺処分問題は深刻です。ファッションアイテムを選ぶように、ペットショップでお気に入りを選んで買うという受け入れ方には、強い違和感があります。ただ本来、命はみな平等のはずです。
ならば、その犬種の本能や野生をきちんと知るブリーダーさんがいて、迎え入れる私たちもその特性を学び、お互いのライフスタイルを考えてマッチングするというのが、理想の形ではないでしょうか。
人間と動物がともに暮らす私たちのゴールはどこにあるのか、どんな世界を理想とするのか。そこを明確にして前に進むことができたら……。私はそんなふうに考えているのです。
愛の言葉は必ず伝わっている
ピピちゃんが11歳を迎え、少しずつ眠る時間が増えているなという実感があります。ベッドに飛び乗ることができなくなり、中継点となるオットマンを用意しました。意識しているのは、今まで以上に声をかけていくこと。毎日毎日、こんなふうに伝えています。
「ピピちゃん、なんてかわいいの。生まれてきてくれてありがとう。うちに来てくれてありがとう。ピピちゃんにくっついているときがいちばん幸せ。生まれ変わっても、また絶対に見つけるからね。ピピちゃんも私たちのこと、必ず見つけてね」
以前、ワンちゃんが亡くなる前に「行かないで。さみしい。もっと元気でいて。長生きして」ということばかりを伝えてしまい、悔やんでいるという記事を読んだことがあります。もっと「ありがとう。大好き」と伝えればよかった、と。その通りだな、と思います
不思議なもので、愛の言葉を伝えると、ピピちゃんの目はとろーんとしてきます。そしてコロンと甘えてきてくれます。ピピちゃんがいつかいなくなるなんて、今は考えられない。でも、そのときは必ず来ます。だからこそ、今日も明日も明後日も、そしてこの先もずっと、「大好き。愛してる。一緒に暮らしてくれて、ありがとう」。そう伝えていくつもりです。
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写真:浜島直子、浅井佳代子(プロフィール)
編集協力:本庄真穂
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