「猫と防災」キャンピングカーは安心感につながった 東日本大震災からもうすぐ10年
前回は「猫連れでキャンプに行ったら脱走!」のお話をしました。昔から「猫は家につく」と言われるほど、環境の変化には敏感な動物。ですが、キャンピングカーがあっていいことも、あるのです。
備えるも出動せずに済んだキャンピングカー
我が家の猫、梵天丸の脱走事件以後、キャンピングカー旅について考えさせられた私たち。
まず、ケージや猫トイレ、キャンピングカー内部の環境(防音・断熱)、ドアの開閉を徹底チェック。そして改めて、ワクチンの期限切れの子がいないか、確認しました。
猫連れで旅に出るなんて、どう考えても私たちのエゴです。だから少しでも体調が悪そうだったり、問題がありそうなら連れて行く、という選択はしません。
改めて、キャンピングカーの防音処理を追加し(外の音が聞こえない、静かな環境を保てるように)、ドアや網戸も簡単には開かないように。そんな体制を整えていた矢先に起きたのが、東日本大震災でした。
私たちの住まいは都内です。当日は激しく揺れ、夫婦とも帰宅難民に。先に家にたどり着いたのは夫でした。幸い、家の中で家具が倒れるなどの被害はなく(築50年の古家だった割には)、私も深夜になってから、夫に迎えに来てもらって帰宅でき、家族全員が無事に顔をそろえることができました。
それから毎日のように余震が続き、私たちが住む町も計画停電の対象に。
仕事は待ったなし、だし、まだ春浅く、夜は冷えます。計画停電の日にはキャンピングカーの暖房を入れ、サブバッテリーや自家発電機を回して、車をオフィスに。猫たちも移動させて、あたたかい部屋で眠れるようにしました。
もし、大きな余震が来て自宅が倒壊するようなことがあったら、その時はキャンピングカーで逃げよう。近くに住む夫の実家とも話し合い、水や食料は備えてありました。
結果的には、何日かキャンピングカーで寝泊まりしただけで避難のために出動することはありませんでしたが、先が見えない不安の中、キャンピングカーの存在は大変な安心感につながりました。
ペットが受け入れてもらえない実情
東日本大震災から時間が経って、このsippoやAERAの別冊増刊『NyAERA(ニャエラ)』などでペットと防災、特に避難所の状況について、何度も取材をする機会に恵まれました。
平時から避難所が指定されていても、そこが完全に、問題なく機能できるかどうかは、避難所の管理者にかかっています。
今でこそペット同行避難(一緒に連れて逃げる)が推奨されていますが、それでも避難所で一緒に暮らせるわけではありません(ペットだけを別のエリアに留め置いたりするケースがほとんど)。
中には愛犬や愛猫と離れがたくて自家用車に寝泊まりし、エコノミークラス症候群に倒れた飼い主さんもいたといいます。
また、避難所にペット用品(フードやトイレ用品など)が届くのは、どうしても人間の食糧などよりも後になります。まして、持病のある動物、高齢でフードや運動にケアが必要な動物は、十分に手当てをしてあげることもできません。
元々、キャンピングカーを防災用に、と考える愛好家は多かったのですが、東日本大震災の経験から、そのように考える人が増えています。私たち自身も、そうでした。
防災時のために備えておく「モノ」「コト」
東日本大震災の教訓から、ペット同行避難についての考え方はかなり進みました。厚生労働省もそれを推奨し、全国自治体の防災担当者と動物行政担当者が連携するようにもなりました。
また、熊本大地震では民間ボランティアや民間獣医師の活躍も注目され、さらにペットと防災への備え、体制、考え方もブラッシュアップされつつあります。
さて我が家です。
まず、猫たちはすべて定期的な検診と血液検査で伝染病の有無を確認。ワクチン接種も欠かしません。万が一、ペットホテルや獣医さんに預けねばならない事態になったとき、伝染病キャリアだったり、未ワクチンの個体では預けられなくなるからです。
多頭飼育をしていると、年齢も健康状態もまちまちになります。今現在は病気を抱えている子はいませんが、持病があったり、健康に留意したフードが必要な子がいることもあります。
キャンピングカーには少なくとも3日から1週間はもつだけのフード、水(人間用含む)、トイレ用の砂、消毒アルコール、猫のための薬やサプリを常備することにしました。
携帯には猫の写真を保存(いえ、防災のためじゃなくても、いやというほどありますが)。SNSに猫を掲載するときは名前や年齢を意識して書くように。万一飼い主と猫がはぐれても、色・柄、名前、年齢の情報がSNS上にあれば、友人にお願いして拡散するなどの手立てがとれます。
備えるだけ備えておいて、何もなければそれでよし。脱走防止は万全に。極力ストレスを与えないよう、旅先にはなるべく静かな環境を厳選します。
毎日の食事はクレート(ハードキャリー)で与える癖をつけ(クレートトレーニング)、いつでも連れ出せる、車に慣れた猫になってもらおうというのがねらいです。
キャンピングカー旅の旅先で出合った梵天丸。目も開かないうちから母猫たちと一緒に旅をしたエンマ。車のエンジンルームで見つかって保護された、アルとベル。大事な家族だから、いつだって一緒にいたい。
大変な時こそ一緒にいられるために、我が家のキャンピングカーはこれからも「猫仕様」「猫様優先」の装備を充実させてゆきます。
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