保護犬の預かりボランティアをスタート! 初めて来たのは大きな老犬の「タケ」だった
インテリアデザイナーとして活動する傍ら、保護犬の預かりボランティアをする小林マナさん。第2回は、預かりボランティアのスタートについてお伝えしていきます。
しつけのされていない被災地の犬
2011年当時、動物愛護団体のミグノンのシェルターには、福島県の被災地から来た雑種の中・大型犬や、愛護センターから引き出された小型犬や猫も収容されていました。
私が始めた「お散歩ボランティア」は常時4~5人体制で、朝当番と夜当番に分かれて保護犬のお散歩とシェルターのお掃除、ごはんをあげるなどのお世話をしていました。
福島から連れて来た犬たちは、ほとんどが外飼いの犬。しつけがされておらず、自由気ままに歩くので、ミグノン代表の友森さんから派遣されたドッグトレーナーが時々シェルターに来ては、セミナーを開いてくれました。
その時のトレーニング方法の「ポジティブトレーニング」は、私が子どもの頃から知っていた厳しいしつけとはちょっと違い、ほめてトレーニングする方法でした。きびしいしつけよりもほめてしつける方が、人間側にもストレスが少なそうだなと喜び、ドッグトレーナーが来てくれる時には必ず参加するようにしていました。
犬が苦手な犬、人が苦手な犬、散歩が苦手な犬、子どもが苦手な犬、すぐかみ付いてしまう犬……。ボランティアたちみんなで、根気よくトレーニングを取り入れながら、お世話をしていきました。
預かりボランティア、最初の犬は?
なかでも飛び抜けてボランティアたちに人気があったのが、老犬の「タケ」という温厚な、30kgはあった大型犬。人なつこく、犬にも猫にもフレンドリーで、タケがいるだけで場が和んでいました。
動きはゆっくりですが、道端に落ちている残飯を強引に拾い食いしてしまうところがあり、その力の強さは相当なものです。
タケの飼い主は福島で被災しました。タケは、飼い主とまた一緒に暮らせるようになるまでの間、シェルターで預かることになっていたのです。だから、他の犬たちのような譲渡対象の犬ではありません。
「なかなか被災地の状況はよくならないし、シェルターで暮らし続けるのはちょっとかわいそうだな」と思いながら、私はお世話を続けていました。
ミグノンの譲渡条件は、大人1人に対して動物1頭が規則。それは東日本大震災のような災害があった時に、1人が1匹以上を抱えて避難することが難しいから、というのが理由のひとつです。なので、必然的に3匹の猫がいる我が家は多頭飼育になり、保護犬を引き取りたくても、引き取れません。
それを友森さんに相談したところ「何かあったときにミグノンに返せるので“預かりボランティア”だったらいい」という提案があったのです。
もうひとつ懸念していたのが、預かった犬の留守番について。もともと、うちの猫たちの留守番時は、同じマンションに住む友人が面倒をみてくれていて、その友人はインドア派で滅多に旅行に行かないので、いつ頼んでも「いーよー」とふたつ返事で協力してくれていました。
その友人に「今度は犬を預かろうと思うんだ」と打ち明けてみたところ、「いーよー」とふたつ返事。
そうして最も猫と仲良くやっていけそうな、あの「タケ」がうちに来ることになりました。
預かりさん生活、猫との距離はどうする
震災から2年の月日が経った2013年の暑い夏の日、数日前にライオンカットにされたタケがうちにやってきました。
かつて私は実家で犬を飼っていましたが、長いブランクがあったので、ドキドキ。シェルターから大型クレート、フード容器、水飲み容器、カラー、リード2本、ハーネスを借り、支給のフードを持ち帰ました。
保護犬は名前がわからないため「呼び戻し」ができないので、リードは命綱。さらに、一度逃げたら帰って来られないので、リードを2本着けることが決まりになっていました。
拾い食いや逃走などは、死亡事故にも発展するので細心の注意が必要。また、店先につないでコンビニなどで買い物をする際の盗難もよくあるので、絶対にしてはいけないことのひとつです。
私はタケを迎えるにあたり、3匹の先住猫たちに失礼がないように、まずは1週間、私が出勤している間、タケは玄関スペースにいてもらうことにしました。
シェルターでは温厚でしたが、何が起こるかわかりません、家に帰ってみたら猫がいなかった! ……なんて惨事にならないように。用心深く、猫たちとタケを慣らしていきました。
それと、いつか飼い主さんの元へ帰る日が来ることを心に留めておかなければいけません。複雑な心境も相まって、楽しみなようなちょっと緊張感のある老犬タケとの生活が始まったのです。
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