愛犬の目が白くなってきた! 原因は白内障? それとも違う病気?

 愛犬が若いうちにしておいた方がいいことってあるの? 年をとってきた愛犬の変化に戸惑う、正しいケアができているか不安……など。意外に知らない犬のこと、多くありませんか? 快適な老犬ライフを送るために知っておきたい老年期について、毎月第3火曜日にお届けします。

 第4回のテーマは「白内障」について。苅谷動物病院グループ総院長の白井活光獣医師にお話を伺いました。

白内障は水晶体の変性による目の濁り

 白内障とは、水晶体が変性して起こる病気です。本来、透明感があるものが、タンパク質の代謝異常で白く濁ってくると言われていますが、はっきりと理由はわかっていません。

 白内障は先天的なものと、後天的なものがあり、先天的だと5~6歳未満で白濁が始まります。コッカースパニエル、柴犬、トイプードルなどの犬種は白内障になりやすいかもしれません。個体差のある遺伝要因ですね。

 一般的には後天的な事例が多く、早い子で8歳ぐらいから、いわゆる老化が始まり、白内障が見られます。大型犬だと7歳くらいから、よく見ると濁ってくるのがわかります。

 白内障が悪化して真っ白になると、目が見えなくなります。

老犬
白内障は7、8歳から症状が出る

白内障と核硬化症の違い

 専門医でないと見分けが難しいのが、白内障と核硬化症です。黒かった瞳がちょっとブルーっぽくなってきた、というのは核硬化症で、瞳(水晶体)の中心から濁る現象です。獣医師が専門器具で見ればわかります。単にぼやっとなっているだけなのか、レンズの中が氷の中心のように白くなっているのか、どのように濁っているのかで、白内障か、核硬化症かがわかります。

 核硬化症は全体的に透明感があるけれどなんか濁っている感じ。一般の方が判断するのはむずかしいです、目が真っ白になってしまったらそれは白内障です、また、高齢犬の大抵の子は核硬化症が見られます。

 白内障は、半分くらいの割合でならない子もいます。しかし、糖尿病を持っていると白内障になりやすいです。

 核硬化症の進行は遅いので、核硬化症だけであれば、視力に影響は出ません。

白内障の併発疾患に気をつける

 白内障の併発疾患として、もっとも多いのはブドウ膜炎です。白目と茶色目の間の炎症、そこで痛みが出たりします。ブドウ膜炎は、重症化すると眼圧が上昇する緑内障になる可能性があります。

 また、白内障になると水晶体の脱臼がおこりやすくなります。飼い主さんが水晶体の脱臼を見つけるのはなかなか難しいです。目をしばしばするなど、それなりに痛いと思いますけれど、犬は我慢するので鳴かないかもしれません、

 水晶体が脱臼した場合、虹彩(こうさい)を広げる目薬を使用したり、手術をして摘出することもあります。

 犬は痛みを我慢する動物なので、犬の表現を待っていたら、大事に至るケースがあるので早く見つけてあげて、動物病院へ連れて行くことです。白内障から水晶体の脱臼、その先にぶどう膜炎や緑内障になる可能性があります。大切な愛犬の目が、白くないか、赤くないかはとても大切なので、時々チェックしてください。

犬をなでる
日頃からよく観察しましょう

視力より嗅覚と聴覚に頼って生きている

 犬の視力は、平均0.27と言われています。どのくらい見えづらいかというと、ラップにワセリンを塗って見るようなイメージです。犬が見える6m先は、人が見える23m先と同じだと言われています。

 犬はあまり視力には頼っておらず、とにかく嗅覚に頼っています。

 嗅覚は鋭く、嗅ぎ分け能力は、人の1000〜1万倍です。また、フェロモンを感じる能力があり、お散歩でいろいろな匂いを嗅ぐのは、他の犬の様々な情報をゲットしようとしているからです。

異常を感じたらまずは受診を

 目が濁ってきたかな? と思ったら、まず獣医師にチェックしてもらってください。白内障がどのくらいの速さで進んでいるのか、経過を診る必要があります。

 老化ですから、白内障になってもそんなに悲観しなくて大丈夫です。また、白内障になったとしても、心臓、肝臓、腎臓、脳など他の臓器に影響を及ぼすことはありません。ですので、白内障で目が見えなくなっても、それ以上の疾患につながることはないというふうに考えていただいて大丈夫です。

 ただし、老化が始まっている証拠ですので、健康診断を行って、老化による異常が始まっていないかどうかを確かめましょう。

目薬やサプリは効果があるの?

 目薬は白内障になり始めたら、白内障用の目薬をつけてあげるといいと思います。

 キャバリアやチワワなど、目が前へ出ている子は乾きやすいので、目を潤すような薬をつけてあげるといいですね。きちんと瞬きができているかどうか、飼い主さんが見てあげてください。目が乾いている子はヒアルロン酸などつけてあげるといいです。基本的に防腐剤の入ってない目薬がおすすめです。使い捨てのものは防腐剤が入ってないものが多いです。

 サプリメントはいいのかもしれませんが、臨床のデータは多くありません。使っても悪くはありませんが、サプリメントで白内障を止めることはできません。

病院
健康診断で、老化による異常が始まっていないか確かめましょう

 目の病気は多種ありますが、「目が白くなったから白内障だ」と思い込んでしまう飼い主さんは少なくないので、きちんと獣医師の判断を仰いでください。後は定期的な健康診断時に、目の健康診断もきちんとしてもらった方がよいですね。

 「うちの子の目は正常ですか?」と獣医師に聞いてみるというのもいいかもしれません。本来なら、健康診断で目の状態も見るのは、獣医師の務めだと思っています。

 そして、黒目がはっきり見える健康な目かどうか、白目としてきれいかどうか。目に異常がある場合、両目の場合には、全身的な病気の場合があります。ある意味、「目は口ほどに物を言う」ことでしょう。

 ちゃんと目が開いていて、つやつやしているかどうか、それがまず健康な目の判断です。飼い主が気をつけてみてあげましょう。

監修:白井活光
苅谷動物病院グループ総院長。獣医学博士。1998年日本大学大学院卒業。同グループ「三ツ目通り病院」や「葛西橋通り病院」の院長を歴任。2015年から現職。日本臨床獣医学フォーラム専務理事。専門分野は総合臨床。
※オンライン日本臨床獣医学フォーラム 第22回 年次大会が開催されます。
会期:2020年9月19日(土)~10月11日(日)
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岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
知っておきたい老犬ケア
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