床で滑る老犬、床ずれも心配… 過ごしやすい環境は「滑らない」「清潔」「物より場所」 

 愛犬が若いうちにしておいた方がいいことってあるの? 年をとってきた愛犬の変化に戸惑う、正しいケアができているか不安……など。意外に知らない犬のこと、多くありませんか? 快適な老犬ライフを送るために知っておきたい老年期について、毎月第3火曜日にお届けします。

 第3回のテーマは「老犬が過ごしやすい床材と寝床」について。苅谷動物病院グループ総院長の白井活光獣医師にお話を伺いました。

犬に好ましい床材は?

 犬が何歳であっても、床材は「滑らない」かつ「清潔」であることの両方が大切です。

 じゅうたんは滑らなくていいのですが、ハウスダスト(ダニやほこり)が問題になります。また、畳もよいのですが、年をとってくると皮膚が擦れて、脚のつき方によってはこすり傷ができる可能性もあるので気をつけていただきたいです。

 理想は、でこぼこした滑らない床材です。コルクのカーペットは大型犬にとって楽なようですね。ほかには、フローリングの滑りを防止するワックスが売られているので、それも効果的だと言われています。廊下だけつるつるして、滑ってしまう場合には、ヨガマットを敷いてあげてもいいと思いますよ。

床材は「滑らない」「清潔」の両方が重要

 見た目が変わらないようにしたいということでしたら、透明なビニールシートをおすすめすることもあります。動物病院の診察台の上は、ビニールのシートが貼ってありますが、結構、爪が食い込むので滑りにくくなります。

 若い犬でも、意識的に滑らないカーペットのところばかり歩く子がいます。シーズー、チワワなどは若くてもひざ(膝蓋骨)が外れやすいので気をつけてあげてください。

 清潔なじゅうたん、コルク、滑り止めワックスをしたフローリング、ビニールシートなど、各ご家庭でベストなものを選べるとよいですね。

歩けなくなった老犬にリハビリは必要?

 歩けなくなったとしても、関節はまったく使わないより、使わせたほうがいいです。関節を使わなければ、潤滑油が減少し、動かしたときにいっそう痛みを伴います。また、筋肉は緊張状態が継続すると筋肉の機能が低下してしまいます。

 動かしたり、マッサージしたり、軟らかい状態をキープさせてあげること。そこから立たせるか立たせないかは、その子によりますが、きちんとリハビリをして、曲げ伸ばししてあげるのは重要です。

 マッサージは、歩ける犬でも時々実施していただくといいですよ。首、肩、前足、腰からお尻、後足、とても気持ちよくなります。また、犬もマッサージで幸せホルモンが分泌されます。

寝る犬
老犬も若い犬にも快適な環境を

 動く気がない子でも、筋肉のマッサージで血行がよくなります。心臓にもいいし食欲も湧きますよね。

 マッサージをしてあげることで、人とのコミュニケーションになるという利点もあります。一年間、首の問題で立てなかった子が、飼い主さんがマッサージを続けたことで、再び立てるようになった事例がありました。ご家族の方のお気持ちが通じた結果と思います。

 どうしても立てないけれど、立つことが好きで、さらに歩きたいと言うようでしたら、歩くまねをさせてあげるのもいいですよ。手足が使えなくても、お散歩と同じぐらいの高さで移動してあげると、脳は歩いていると錯覚するので、頭では散歩していると感じます。

 それを続けることで歩けるようになる可能性もあるので、特にお散歩が生きがいの子には、続けてあげるといいですね。

ペット用の滑り止めグッズ

 犬用の靴下や、肉球に貼る滑り止めシールは、あまりおすすめできません。通気性が悪く、一日中つけていると蒸れて炎症を起こし、かゆみが出てくるなど、愛犬が不快な思いをするかもしれません。外出する時のみなど、一時的な利用であれば問題ないかと思いますが、夜寝る前には必ず外してあげましょう。

 おすすめは爪にはめるゴム(※)です。爪の一本一本にはめていくのですが、最初は病院で、慣れれば自宅でも装着できるようになります。さらに、ゴムをはめたまま爪を切ることもできるんです。(※参考 トーグリップス

トーグリップス
提供:トーグリップス

 健康を害することなく滑り止めにもなるので、完全に歩けなくなった子というよりかは、ちょっと歩きづらくなった子に使ってあげるのがよいですね。

 実際、こわごわ歩く愛犬の飼い主さんが、爪のゴムを着けたら愛犬が再びスタスタ歩けるようになってとても喜んでもらえました。爪のかたちや指の使い方によっては効果がない子もいますが、このように効果的な子もいます。

 あと基本的なことですが、肉球の毛はカットするようにしてくださいね。滑りやすい犬は、歩き方を工夫して、見た目にはわからなくても、体のどこかに負担がかかってしまうので気をつけてあげてください。

トーグリップス
提供:トーグリップス

犬が安心して寝られるベッドと環境

 犬にとって適切なベッドの大きさは、脚を伸ばした時に体が収まるサイズが目安です。

 種類は、老犬になり自分で体位を変えられない子や、体重がある子や痩せている子は、床ずれの心配があるので、体重が分散する高反発のマットが好ましいです。低反発だと、ある一点に体重が集中してしまうからです。

 老後のために高反発のマットを小さい頃から慣らしてあげるのもいいですが、特に若いうちは あまり気にしなくても大丈夫です。

ポメラニアン
おうち環境は安心できるようにしたい

 一般的にペットの睡眠環境で大切なことは、「物ではなくて場所」だと思います。風通しがよく、犬自身が心地いい場所を選べるようにしてあげられるとよいですね。

 寝具に関しても、愛犬がどのような環境が好みなのかを把握してあげることが大切です。人間の好みのデザインも反映されると思いますが、犬が自ら心地いい場所を選べる選択肢を与えてあげること。

 犬にとって快適な温度は25℃前後、湿度は50%ぐらいです。高齢になると体温調節機能が低下いたしますので、表情や呼吸数を参考に、適温を設定しましょう。湿度は、ドライになりすぎると気道が乾燥し、気管支炎、肺炎になりやすくなります。

 自分で歩けなくなった子は、自分で心地よい場所に移動できないので、飼い主が温度と湿度を管理して、安心して眠れる場所を作ってあげてください。

監修:白井活光
苅谷動物病院グループ総院長。獣医学博士。1998年日本大学大学院卒業。同グループ「三ツ目通り病院」や「葛西橋通り病院」の院長を歴任。2015年から現職。日本臨床獣医学フォーラム専務理事。専門分野は総合臨床。

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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