愛犬の看取りまでの時間を後悔しないために 飼い主ができること【獣医師監修】

抱かれる犬
ずっと一緒だよ

 愛犬が若いうちにしておいた方がいいことってあるの? 年をとってきた愛犬の変化に戸惑う、正しいケアができているか不安……など。意外に知らない犬のこと、多くありませんか?快適な老犬ライフを送るために知っておきたい老年期について、毎月第3火曜日にお届けします。

 第10回テーマは連載最終回として「看取りまでの時間」について、苅谷動物病院グループ総院長の白井活光獣医師にお話を伺いました。

食事量が減り、体重が減少したら 愛犬との向き合い方を変える

 愛犬が歳をとって「痩せてきた」「食べなくなった」と感じたら、飼い主は“新たな認識”をしてください。今までのその子ではないという認識が必要です。

 痩せてきた、食べなくなった、筋肉量が低下した、歩き方がふらついている、足取りがおぼつかない、意識レベルが低下した、感情のコントロールがきかない、怒りやすい、反応が鈍くなった。そのような状態の生活が数カ月続いてから、立てなくなり、歩けなくなるように思います。

 食事量が減り始めてから看取るまで、その期間は数年というレベルではないかもしれません。1年はがんばれるかもしれませんが、2年は厳しいかもしれません。もしかしたらもっと短い間に進行するかもしれません。

立てない・歩けないのは 神経系の異常か意識レベルの低下

 脳の機能、首や腰脊椎などの神経伝達の障害のいずれかで、脚が立たなくなり、歩けなくなります。神経の機能は正常でも、意識レベルの低下が原因で歩けなくなることもあります。

 老化が関係して立てなくなるのは脳的、意識的な問題で、脳が活発でなくなることが原因として多いように思います。しかし、老犬の場合、脳を活性化させてあげたらまた歩けるようになるかもしれませんが、老化に伴って、代謝や全身機能が低下していっているので、それらを復活させるのは難しいかもしれません。

横になる犬
愛犬とできるだけ一緒にいてあげましょう

立てなくてもお散歩の習慣を維持することが大切

 立てなくなった、歩けなくなった愛犬にも、手やハーネスなどで腰を支えて、歩いているということを脳に感づかせ、錯覚させてあげることが大切です。本当は歩けてはいないけれど、歩こうという指令が脳から前脚・後脚に行きます。

 寝たきりになったワンちゃんにも、トータルで脳に刺激を与えてあげてください。抱っこでもカートでも、外に連れて行って日光浴をさせたり、外部の刺激を受けたり。抱っこしていれば飼い主との触れ合いもできて、ワンちゃんも安心もしますよね。

 立てない、歩けないからという理由で散歩をやめてしまうのでなく、それまでの習慣の散歩を維持することは大切です。

寝たきりになった愛犬にしてあげられること

 寝たきりになったときに気をつけてあげたいのは「床ずれ」です。

 ほっぺ、肩、後ろ脚のつけ根、ひざの外側。骨が出っ張っていて床にあたる箇所は床ずれしやすいです。3時間に一度は体勢を変えてあげる、高反発のベッドにしてあげるなど、寝床を整えてあげることも必要です。

 そして、筋肉のマッサージと関節の曲げ伸ばしをしてあげることでしょうか。歩けなくなったとしても続けてあげてください。マッサージは血行改善になりますし、関節の曲げ伸ばしは痛みをやわらげ、筋肉の低下を予防することにもなり、全身機能の低下を防ぎ、同時に脳への刺激になります。

犬
マッサージは歩けなくなっても有効

「どれだけその子のために尽くせたか」

 今までと同じ量を食べられる子や、食べることが好きな子は長生きしている傾向にあります。食が細くなった場合には、食べ物の内容の見直しや、愛犬が食べたくなるような工夫をして、また食べられるようになると、経過が変わってくるかもしれないですね。

 お散歩しかり、飼い主がどれだけ尽くせるのか。今までは一緒にいて、愛犬から癒されていた飼い主が、今度は立場が逆転するということです。

 老化は残念ながら止められません。機能はだんだん低下し、食事がとれなくなったら1週間以内で亡くなることもあります。

愛犬の死と向き合い、感謝してお迎えさせてあげる

 死を迎える子の飼い主さんには、現実を受け入れてもらいます。「あと余命はこのくらいで、その間にしてあげられることはこういうことで、多分亡くなるときはこういうふうに亡くなります」ということをお伝えしています。

 そして、それに対する飼い主さんの不安などは解消できるようにお話を聞くことを心がけています。看取るまでの期間に、覚悟ができて、愛犬のために尽くしたと思えた方は、動物のエンジェルタイムを大切にされ、そのときをむかえられています。やり尽くした、頑張ったと思えることが大切です。

 愛犬が亡くなれば、当然ペットロスはあると思います。そこから無理して出ようと思わなくていいですし、感情を自然に出していいです。正常な感情です。「5年も10年もその感情は変わらないですよ」とお話します。

 大事なのは、犬に感謝しながら、死をお迎えさせてあげるということです。

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監修:白井活光
苅谷動物病院グループ総院長。獣医学博士。1998年日本大学大学院卒業。同グループ「三ツ目通り病院」や「葛西橋通り病院」の院長を歴任。2015年から現職。日本臨床獣医学フォーラム専務理事。専門分野は総合臨床。

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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