交通事故で母を失った野良の子猫 譲渡先から再び我が家に

茶トラ猫
小春ちゃん

 子育て中の野良猫が交通事故で死んだ。残された子猫たちは保護され、最後の1匹も保護主の知人に譲渡された。だが1カ月ほどだった後に飼い続けることが難しくなり、保護主宅に戻ってきた。

母猫に先立たれた子猫たち

(末尾に写真特集があります)

 2010年3月、関西地方のある空き家で、母猫が4匹の子猫を産んで育てていた。

 ところが、空き家の前の往来が激しい道路で、母猫は車にはねられて死んでしまった。残された4匹の子猫のうち、2匹は近所の人が1匹ずつ引き取った。

段ボール箱に入る猫
ちょっとこれは大きすぎたわ

 ほか2匹の子猫は保護しようにも、すばしっこくてなかなか捕まらなかった。やがて一方の子猫は低体温で死んでしまった。

 猫たちを見守っていたKさんは「残っている子猫を早く保護しないと!」と心配していた。やがて他の子猫を引き取った近所の人が子猫を捕獲したため、Kさんはキャリーバッグを持って迎えに行った。

譲渡したものの号泣

 Kさんは子猫に「小春ちゃん」と仮の名前をつけて預かった。家にはすでに保健所から引き取ったマロンちゃんという猫がいたが、マロンちゃんが手術を何度も繰り返している状況だったので、小春ちゃんは譲渡するつもりだった。情が移ると別れが辛くなるため、抱っこはなるべくしないようにしようと思っていた。

 ある日、Kさんの娘がよく行く服飾店に勤める女性から、猫を探していると聞いた。女性は茶トラが好きで、いま飼っている茶トラの猫と姉妹で飼いたいというのだ。小春ちゃんの写真を見せると、ぜひ飼いたいと言うので、譲渡することになった。

くつろぐ猫
洋服、似合うかな?

 Kさん親子は、女性の家に小春ちゃんを連れて行き、「何かあったら言ってくださいね」と言って託した。猫を大変可愛がっている様子だったので、安心して小春ちゃんをゆだねることができた。

 それでも帰りの車の中で娘と号泣したという。家で2匹を飼うのは難しいと考え、決めた譲渡だった。でも、別れはとてもつらかった。「娘は小春を可愛がっていたのに、引き裂いてしまった。ごめんねと謝りました。もし今度うちに縁がある子がいたら、うちの子にしようと約束しました」

先住猫のストレスに

 ところが、それから1カ月ほどたったある夜、小春ちゃんを譲渡した女性から電話があった。5歳の先住猫の肝臓の数値が上がってしまい、どうも小春ちゃんが来たことによるストレスのようだ、と女性は言った。

「先住猫がかわいそうだし、うちで引き取りましょうか」とKさんが言うと、女性は「本当にいいんですか」と応じた。電話を終えると、Kさんはすぐに車を走らせ、小春ちゃんを迎えに行った。

くつろぐ猫たち
マロンちゃん(手前右)、あめちゃん(奥)と仲良く暮らす

 女性の家に着いてキャリーバッグを置くと、小春ちゃんは自分からポンと入った。まるで「迎えに来てくれたんだ」というかのようだった。その後しばらくすると、先住猫の体調も良くなったという。

 Kさん宅に戻った小春ちゃんは、元気いっぱいに育っていった。無邪気で、恐れを知らず、赤ちゃんのまま大きくなったようだという。ジャンプ力は抜群で、高い所でも臆せずどんどん登り、運動神経の良さを見せている。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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