野良猫ストリートの捨て猫 人懐っこさに夫も涙し、家に迎えた
子猫時代に一度は引き取られながら、捨てられた家猫。「野良猫ストリート」と呼ばれる道で、ばったり出会った女性がえさを与えると、その茶トラ猫は駆け寄ってくるようになった。女性は何とか救いたいと思い、否定的な夫を連れて現場に。人懐っこい猫に、夫も「こんなん、放っておけるわけないやん」と涙した。
会社の同僚が猫を捨てた
京都府に住む坂田さんは、勤務先の会社の駐車場で1匹の子猫を保護して飼っていた。同僚の友人も生まれたばかりの子猫をもらって飼い始め、会社ではちょっとした「猫ブーム」が起きていた。
その影響を受けて、別の同僚も知人が拾った猫を引き取って飼い始めた。子ども3人を抱えるシングルマザーだった。ところが、間もなく、その母親が「もう猫、うっとうしい」と言い出した。「子どもがひっかかれるし、水の入った器を倒されるし……」と愚痴をこぼし、あまり可愛がっているようには見えなかった。
坂田さんは、「うちで飼うことはできないけれど、写真をたくさん撮ってくれたらもらい手探しを手伝うよ」と伝えた。しかし、2016年2月、猫を飼い出してから4、5カ月たったころ、「もう無理。猫を逃がすわ」と彼女は言った。坂田さんは「ちょっと待って」ととめたが、すでに遅かった。
「かつおくん」と名付けられた猫は、多くの野良猫がすみついた通称「野良猫ストリート」に捨てられた後だった。坂田さんは必死で猫を探したが、見つからなかった。
えさを求めて駆け寄ってくる猫
半年後、坂田さんは偶然、野良猫ストリートでかつおくんを見かけた。「かつお!」と呼ぶと、パーっと走って寄ってきた。野良猫ストリートには、他に茶トラの猫はいなかったので、間違いなくかつおくんだった。その後、坂田さんがフードを持って行くと、かつおくんは駆け寄って来るようになった。
野良猫ストリートには、何匹もの猫がいるが、かつおくんはどの猫とも仲良くないらしく、いつもひとりぼっちでいた。そしていつも他の猫に追い回されていた。
坂田さんは夫に、かつおくんを飼えないかと相談してみたが、家にはすでに先住猫のかもめがいて、「かもめのことを考えたら飼えない」と言われた。
坂田さんはあきらめきれず、「どうしても見てほしい、見るだけでもいいから見て」と、雨の日の夜、夫を連れて野良猫ストリートに行ってみた。普通、猫は雨の日には外に出てこないが、車の音を聞きつけて、かつおくんが駆け寄ってきた。
「放っておけるわけないやん」
かつおくんはごはんを食べ、夫にスリスリと身を寄せてきた。
「あまり長くいたら気持ちが移るかもしれないので、そろそろ行こうと言って車に乗り込んだんです。その時、サイドミラーにかつおが映って……」
「こんなん、このまま放っておけるわけないやん」と夫は涙したという。
その日は帰宅して、隔離するためのケージやキャリーを購入した。翌日、坂田さんが迎えに行くと、かつおくんはちょこんとキャリーに入った。動物病院に連れて行くと、生後11カ月くらいだということだった。
家に迎え入れて心機一転、名前をかつおから「ぽんず」に変えた。
「ぽんず」と呼ぶと、寝ていても尻尾をぴょんぴょんと振る。夜中でも、どんな時でも、坂田さんがトイレに立つと必ずついてくる。トイレの中はママと2人っきりになれる場所なので、坂田さんは「デート」だという。パパが帰ってきた時も、必ずお出迎えする。まるで犬のように忠誠心あふれる猫なのだった。
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