庭に通ってくる野良猫「スンスン」 少しずつ肉付きよく健康に
雨が続いたあと、猫はしばらく姿を見せなかった。缶詰を持ってホワイトハウスのおじさんの部屋をノックする。
返答にホッとする
「あの猫最近どうしてる?」「さっき来てごはん食べて出てったよ」。生きているとわかってホッとする。
部屋の中にはダンボールが積み上げられていた。翌週、おじさんは本当に引っ越して行った。しばらくはホワイトハウスの前で猫が佇む姿を見かけた。やがて猫は本格的に我が家の庭へ通って来るようになった。
カーテンを開けると庭に
猫は慢性鼻炎持ちで、餌の匂いがわからない。目の前に「ごはんだよ」と皿を置いてやれば、頭ごと突っ込んで食らいつく。食べながらクシャミをするので周囲に鼻水やいろいろが飛び散る。そこで古新聞を敷いてから缶詰を開けた。
病院で鼻炎と眼炎に効く抗生物質を処方してもらい、膿んでいる鼻と目に繰り返し垂らした。口内の炎症を抑える粉薬もごはんに混ぜてやっているうちに、猫の健康状態は少しずつ良くなっていった。
朝、カーテンを開けると猫はたいてい庭で待っている。前脚を揃えて顔を上げ口をニャーの形に開けても、ファーというかすかな息の音しか聞こえない。喉を痛めているのか鳴き声を聞いたことはなかった。
鼻炎のせいでいつも鼻をスンスンと鳴らしている。スンスン、と鼻息が聞こえて庭に来ていることに気がつくので、いつのまにか「スンスン」と呼ぶようになっていた。
スンスンの気配がすると、家猫のくまは窓の近くへ様子を見にやってくる。2匹は威嚇し合うこともなく、窓を隔ててお互いの存在を認めているようだった。
段ボール小屋で眠る
スンスンは窓や玄関の隙間を見つけては家の中へ入ろうとする。「ごめんね、くまに鼻炎がうつるかもしれないから、家にはあげられないんだよ」背中を撫でながら言い聞かせる。腰の辺りをトントンすると身悶えして喜び、「スンスン」という鼻息は水分を含んで「ズミズミ!」と大きくなった。
雨避けのトタン屋根の下に段ボールで小屋をつくると、そこで眠るようになった。薬が効いたのか安定した生活のせいか、スンスンは少しずつ肉づきが良くなっていった。
気持ち良さそうに目を閉じる
暖かい日を待ち、ところどころ泥や膿で固まった全身をぬるま湯でほぐすように洗った。背中にそっとお湯をかけると、されるがままにじっとしている。
ちょうど遊びに来ていた母が抱き抱えて耳の掃除をすると、気持ち良さそうに目を閉じている。実家の庭にも代わる代わるいろんな猫がやって来る。
何度も野良猫を保護して新しい飼い主探しをしてきたから、母はスンスンのような猫の扱いにも慣れている。
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