猫だって人間の家族が大好き 一緒に遊んでほしいし甘えたい

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。1回目は「猫について知っておいてほしいこと」です。

猫の気持ちを行動からみる

 はじめまして。今回から「猫」と「猫との暮らし」について連載を始めます。

 私は幼い時から動物は好きでしたが、猫に対してはアレルギーがあり、ピアノの先生のおうちにいる猫と遊んでは結膜炎を起こしていたため、猫と暮らすことはできませんでした。

 大人になって、猫を触った後は手を洗えばよい、掃除はこまめにすればよい、ということを学んでから、猫と家族になることを果たしました。猫と暮らし始めてすっかり猫のとりことなり、現在も海の進(本名・かい)とフラの助(本名・Fluffy)という2匹の男の子の猫たち、人間2名そして女の子の犬1匹で住んでいます。

猫の気持ちを行動からよみとる
猫の気持ちを行動からよみとる

 私の専門は、応用動物行動学と言って、人と一緒に暮らす動物たち、専門的には「家畜(domestic animal)」と言っていますが、人とともに長い歴史を一緒に歩んできたそれらの動物たちの行動学です。

 猫も人と長く一緒に暮らしてきた動物ですので、すでに野生動物ではないのです。この猫たちの気持ちを行動からみてご家族に通訳として伝えるのが獣医行動学の分野になります。なかなか面白いお仕事です。

猫は大好きな人に遊んでほしい

 さて、今回から始まる連載はそんな人と暮らす猫たち(イエネコ)についてお話しします。

 まず、猫ってどんな動物だと思いますか?猫の夜中の運動会、うちの若い猫(フラの助)も夜中に駆け回ることがあります。

 夜中に活動的になるので猫は夜行性の動物と思われる方も多いと思いますが、実は猫は夜間より日中のほうが起きている時間が長いのです。一般的に薄明薄暮性の動物と言って、朝方と夕暮れ時に1番活動的になる動物です。

 では、なぜ夜中に運動会をするのでしょうか?おそらく夜中に騒ぐと大好きな家族がいろいろな反応してくれるので、騒ぎ続けている可能性があります。

猫も人間家族が大好き
猫も人間家族が大好き

 でも猫って、人のことを、「しもべ」とは思っているかもしれないけれど、夜中に叱られながらも家族の気を引こうとするかな?と考える方もいらっしゃるかもしれません。飼い主である人間はただの同居人で、ご飯を運んでくれる便利な動物とだけ思っているのでしょうか?

 実は猫も、人間家族が大好きです。家族のことも認識しますし、大好きな人が呼んでくれたら自分の名前に反応もします。大好きな人たちに遊んでもらいたいと思うし、甘えたいと思っている動物です。

 猫の祖先であるリビアヤマネコは社会性を持たない動物でしたが、いまのペットになってくれている「イエネコ」は社会性を持ち、人が大好きな動物です。

 だから、引っ越すので猫はすみ慣れた土地に置いていったほうがいい、と考えられていたのは過去の話で、ぜひ引っ越しの時も大好きな人と一緒に新しいおうちに連れて行ってあげてください。

子猫の時にいろいろな体験を

 猫は社会性のある動物で、幼い時に犬や人と同様に「社会化」する時期があり、幼い時にいろいろ体験させてあげることで、人の住む社会に適応しやすくなります。

 子猫の時から一緒に外出してならしておくと、旅行もいっしょに行けるようになります。大好きな人と一緒にお出かけも大好きな猫もいます。

 また、お客様に子猫の時からおやつをもらう習慣をつけておくと来客もオッケーな社交的な猫になりますし、子猫のうちから動物病院に行くたびにおいしいおやつをあげて可愛がっていると、病院も大好きな猫になります。

獲物捕り遊びは重要

 猫さんは遊ぶことが大好きです。ぜひ、うちにいる猫とは遊んであげていただきたいと思います。

 子猫のうちは遊びながら猫同士のコミュニケーションを覚えたり、人とのコミュニケーションの方法を覚えたりします。獲物を捕るゲームをしながら、将来に備えて狩り練習をしています。

猫と一緒に遊ぼう
猫と一緒に遊ぼう

 もちろん家で一生を暮らす猫たちは獲物を捕る必要はないかもしれませんが、猫の発達のために獲物捕りゲーム、獲物捕り遊びは重要なのです。ぜひ一緒に遊んであげてください。

 特に若い猫さんたちとは、獲物捕りゲームで猫じゃらしのようなもので遊んだり、追いかけさせたりしましょう。猫同士の取っ組み合いの遊びも猫にとっては重要ですので、人の手はなく、ぬいぐるみなどを使って猫同士のレスリング遊びもしてあげましょう。

 年齢を重ねても遊ばなくなることはありません。私たち人間だって、年を重ねても遊びます。遊び方が穏やかになるかもしれませんし、疲れるのも早いかもしれませんが、遊んであげましょう。

 このシリーズでは、いかに猫さんと幸せに暮らすかのヒントと共に、猫さんたちの困った行動、なぜこんなことするんだろう、という疑問に答えていきながら、一緒に猫に対する理解を深めていきたいと思います。

(次回は8月9日に公開予定です)

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猫の困った行動や、なぜこんなことをするの?と疑問に思っていることなど、入交先生に聞いてみたいことを教えてください。連載テーマの参考にさせていただきます。入力は、こちらのボタンからどうぞ。
 

入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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