母猫と共同作業で子育て? 家も会社も大騒ぎ!

ようやくうっすら目が開き始めました。

 帝王切開で生まれてすぐ、人口授乳することになった子猫のエンマ。昼間は私が会社で世話をし、夜は母猫と私で面倒を見る日々が始まりました。

子猫は静かすぎて…本当にいるの?

 今から9年ほど前のこと。私は出版社で編集の仕事をしていました。役職は副編集長。ちょうど、年3冊出している雑誌の校了が終わって、次の仕事の準備に取り掛かる時期です。

 クライアントに電話をかけ、スタジオの手配をし、モデルのオーディションをする。販促イベントの打ち合わせをする。デザイナーととじ込み付録の相談をする……。平穏な日々です。足元で子猫が眠っていることを除けば!

 エンマは静かな子でした。古タオルや毛布、ジェルタイプの湯たんぽを入れた段ボール箱で、日がな一日すやすやと眠っていました。

 あまりに静かで、上司から「本当にいるのか?」と確認が入ったほどです。(普段パワハラ気味の上司が心配そうにしていたのが笑えました)

 同僚たち、それも特に若い女性たちは内心ソワソワしていました。

 目も開かない子猫なんて、めったに見られるものじゃありません。みんな触りたくて、お世話したくて、ウズウズしているのです。そして社長や副社長が外出すると……。だだっ! と足音がして、若手社員が飛んできます。

「浅野さん! エンマ、のぞいてみていいですか?」

 いいよ。

  そっと箱を開けると……

「うわぁぁぁぁっ! 眠ってるぅぅぅ!」

 起こさないように小声で。見たまんまを叫ぶあたり若いなあと苦笑い。

「次、ミルク何時ですかっ?」

 私よりまわりが、エンマのケアに詳しくなっています。

 どうしても取材で外出せねばならないときも「大丈夫です。私たちでミルクもトイレもやっときますから!」。本当にありがたい職場です。

飲むミルクの量もぐんぐん増えていきます。飲み終えた後の、ぽんぽんに丸いお腹のかわいいこと!

自宅に帰ったら子猫部屋へ

 さて、子猫が生まれたことで自宅にも変化がありました。

 わが家は多頭飼育。その時点でアビシニアンのディーナ、アメショミックスのユーリ、三重県で保護した梵天丸がいましたし、母猫サビの妹(?)のボビもいます。

 満足に動けない子猫をいきなり他の猫たちと一緒にするのは危険です。そもそも母猫サビとボビの姉妹だって、わが家に来たばかりで慣れているとは言えません。

 そこで、伝染病確認のためにボビ・サビを隔離していた部屋を、そのまま子猫の飼育部屋にすることにしました。普段私たちが使っていない、フローリングの洋間です。

夫:「段ボールでいいのかねえ……」
私:「うーん。会社は仕方なく段ボールだけど、家はもうちょっと何とかしてあげたいよね」

 そこで夫が考え付いたのが、なんと海やプールで遊ぶビニールボートでした! 部屋の片隅にボートを膨らませて、下にペット用ヒーターを敷きます。上から古い毛布やタオルを入れて、母猫が安心できるスペースを作りました。

縁が高くなっているので、赤ん坊がよちよちはい出す心配もありません。暖かくて柔らかくて、なかなかナイスアイデアでした。叔母猫ボビまで、ちゃっかり一緒に入ってくつろいでいます。

夫:「あっという間に大きくなって、すぐに乗り越えられるようになるんだろうけどね」

 いや、お願いだから早く、それぐらいしっかり育っておくれ。

ビニールボートの中で育児するサビ母さん。子猫は日に日にやんちゃになります。

なぜか叔母猫が赤ちゃん返り?

 サビは元々、あまりなついてくれない猫でした(今ではほとんど、触らせてもくれません)。だけど不思議とエンマのことは託してくれました。私がエンマに触っても怒らないし、会社に連れ出すのに取り上げても抵抗しません。

 それでもエンマが仕事から帰ってくると、いそいそとカブトムシケースに近づき、今か今かとわが子が出てくるのを待っています。それはまるで、保育園にお迎えに来たお母さんのようでした。

「はい、サビ母さん、ただいま。エンマ、今日もいい子だったよ」

 そっと箱から取り出した私の手から、大切なわが子の首根っこを優しくくわえ、いそいそとボートの中へ。受け取る瞬間、ちろっと目を合わせてくれるのです。(一日ありがと。息子、引き受けるわ)、そんな感じです。

 私はのんびりはしていられません。自分の食事もそこそこ、まずはエンマのミルクづくりです。

 仕事着のまま保育室に入り、母猫に抱かせたまま授乳します。家にいるときはなるべく、母猫のお腹に寄り添って、お母さんのおっぱいを飲むのに近い姿勢で飲ませてあげたいと思ったのです。

箱の中ですやすや眠るエンマ。子猫はじっとしていないので写真がなかなか撮れず、寝ている写真ばかりになりました。

 そんなサビ・エンマ母子はとても微笑ましいのですが、予想外の動きに出たのが叔母猫のボビでした。

 なんと、エンマの世話をしたいと言ってきかないのです。

 エンマが遊び用の段ボール箱に入れば、必ず一緒に入ります。エンマがサビに添い寝すれば、いっしょにサビに寄り添います。あげくに、私がエンマに排泄させている間、子猫のようにサビのお腹に吸い付く始末です。

「ボビちゃん、何やってるの?(笑)」

 サビも怒りません。ボビは嬉しそうにのどを鳴らして、サビのお腹を前足でモミモミ、モフモフ……。

「まさか叔母さん猫が赤ちゃん返りするとはね」

 幸せだけどドタバタな、育児の日々は続くのでした。

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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