山の国道、放置されたキャリーケースに猫 新しい家で幸せつかむ

リボンでおしゃれしたハッチ

 夏の太陽がギラギラとアスファルトを焦がす中、国道にキャリーケースに入れられて置き去りにされた猫がいた。TNR活動などをする団体「Life for cats in NARA」の代表が偶然、車で通りかかって保護。その後、猫は新しい家に引き取られて幸せをつかんだ。

(末尾に写真特集があります)

ピンク色のキャリーケース

 2018年7月。まだ午前9時だというものの、すでに気温がぐんぐん上昇していた。奈良県でイタリアンレストランを営む前澤夫妻は、有機野菜の買い付けのため農家に向かって車を走らせていた。家も店舗もない山の中の国道。夫がふと、「あれ、いまキャリーがなかった?」と言った。すぐに車をUターンさせた。

山中の道路脇に置かれていたキャリーケース

 見間違いではなく、確かに道路の脇にはピンク色のキャリーケースが置いてあった。少しだけ扉は開けてあり、中には大きな猫がいたが、出てくる気配はなかった。

「その前日、野良猫のTNRで堕胎した猫を元いた場所にリリースしたのですが、その時の悲しい記憶がよみがえってきて、思わず涙があふれました」

「みなしごハッチ」

 前澤さんは、すぐに警察に連絡し、拾得物の書類を書き、動物病院へ連れて行って検査などをしてもらった。推定7歳のオス。ハッチという名前は、アニメの「みなしごハッチ」にちなんで付けたという。

ケージの奥に隠れるハッチ

 とりあえず自宅に連れ帰ったが、ケージへ入ったまま出てこない。前澤さん宅の猫よりも大きな体で、唸り声を上げて威嚇した。猫に慣れていても怖かったという。それでも3日もすると、夫妻に心を許し、ゴロゴロしたりスリスリしたりするまでになった。

「人に可愛がられていたのか人間が大好きでした。化粧水を塗っていると、顔をペロペロなめてくることもありました」

 2週間後には、他の猫たちとも対面できた。ハッチくんはずっと先住猫に遠慮していたのだ。

「恐る恐る先住猫がいるリビングに入ってきたり、遠慮気味にご飯を食べたりしていました。2階には猫がいないので、私にすり寄って甘えてきました」

お互い興味津々

 ただし、前澤さんが飼っていた小型犬と大型犬には攻撃的で、攻撃してからさらに追いかけようとしたので、前澤さんが止めることもあったという。

新しい家へ

 前澤さんは去勢手術をした後、フェイスブックでハッチくんの譲渡先を募集した。

 同じ奈良県に住む藤田さんは、ハッチくんを見つけて、ご飯を食べている様子などを見ていた。

 9月、藤田さんが娘さんと前澤さん宅に会いに行くと、物怖じすることなく手をなめてくれたという。「いったん帰宅して考えましたが、もうほとんど飼う気になっていました」

 ハッチくんは9月下旬に藤田さん宅に譲渡された。家に向かう車の中、ずっと鳴いていた。家でキャリーを開けると、のっそり出てきたが、ベッドの下に潜ったまま。朝はどこに行ったのか分からず、家族で探しもしたそうだ。

 そんなハッチくんだが、もともとは人なれした猫。次第に新しい家族に心を開き、溶け込んでいったという。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この特集について
幸せになった保護犬、保護猫
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