犬や猫のためのボランティア 挑戦してみた9人が感じたことは
公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。年が明けました。記念すべきオリンピックイヤー。心健やかに新年をお迎えのことと存じます。
さて、1年前の私の連載で「2019年 犬や猫のためのボランティアを始めてみませんか?」をテーマに執筆しました。その記事ではアニドネのボランティアスタイルを紹介しました。1年後の今回、実際に動物のためのボランティアへ踏み出した方々に『なぜボランティアを選んだのか?やってみてどうだった?』をインタビューしてみました。
ヒアリングした私自身が励みになるほど、みなさんは素敵なキモチで自分の人生の中に動物ボランティアを取り入れておられました。アニドネは高い志のある方に支えられていることを改めて実感するとともに、日本の動物たちのためにやらねばならないことが多くある、と私自身決意を新たに新年を迎えております。
きっかけは偶然見た記事
前田陽子さん。彼女はこのsippoサイトの愛読者です。「1年前、偶然にsipooで見たアニドネの記事で、ボランティアにも色々な関わり方があって、自分の事務スキルを生かすという参加の方法があると気付かされました。活動の中で動物関連のセミナーや講演に参加し、動物福祉に関わる皆さんの情熱に触れると同時に、動物がおかれている状況を知れば知るほど、微力でも行動することの大切さを実感しています」
アニドネが映画『犬ヶ島』とコラボをした際に興味を持ってくださった、とむさん。アニドネでは経理のご経験を生かして、バックオフィスのサポートをしてくれています。
「以前から動物福祉の問題について『何か役に立ちたい』という気持ちだけはあったものの、自分に何ができるのか分からずにいました。そんな時にネットでアニドネがバックオフィスのボランティア募集をしていることを知り、これなら私でも少し助けになれるかもしれないと思ったのがきっかけです。
活動の中で様々な情報を得られますし、何より志を同じくする方々とつながりを持てるのがとても良い刺激になります。一人一人得意なことを無理のない範囲で任せて頂けるスタイルもとてもありがたく、これからも長く続けていきたいと思っています」
興味があって得意なことでボランティア
アニドネではボランティアをスタートする際に、ふたつご相談をします。ひとつは、ご自身でなさってみたいことをお聞きして、なるべくマッチするボランティア内容にすること。もうひとつは、得意なことを生かしてもらうこと、です。そうすることで無理なく長く続けてほしい、というふうに考えています。
保護団体の現場に興味がある3人は、保護団体である『一般社団法人はーとinはーとZR』の譲渡会の取材に行ってくださいました。
『はーとinはーとZR』の団体窓口をしていただいている今岡寛晴さん。
「保護施設を見に行った際には、実際に犬や猫を保護して世話をしている方に直面し、自分たちの活動の大切さを実感することができました。また、そういった場所に家族で行った際に、自分の子どもたちにボランティアの精神を教育できる機会にもなり、良かったと感じています。
自分も小さい頃、父親がしていたボランティア活動に同行した経験があるため、ボランティアをすることに抵抗がありませんでした。それが今の活動にもつながっているのかもしれません」
素敵なお父様がおられる今岡さん。きっと今岡さんの優しいマインドはボランティア活動を通じてお子さんにも引き継がれていくのだと思いました。
譲渡会に今岡さんと一緒に行き、記事を書いてくださった金子真弓さんは、子育ての傍ら不動産仲介業をされています。お仕事にママ業に愛犬のお世話にボランティアに、と時間の捻出がとても大変なのでは、と思います。活動をしてみてどう感じているか、を聞いてみました。
「活動を始めてみて、『楽しい』と感じています。自分の経験が生かせる事、動物の事が好きな人たちと知り合える事、仕事や子育てをしながらも動物のために少しでも行動ができる事など、言葉にするのは難しいのですが、自分の中で満足度が高いことは感じています。
私は以前ドバイに住みながら中東の航空会社で働いていた事もあり、周りには海外で活躍する日本人の友人が多くいます。そのつながりもあり、今はアニドネで海外のペット事情の記事を書いてます。まだ細々としかお手伝いできていませんが、動物福祉に近づけた事は私にとって大きな一歩です」
そして、取材にはカメラマンとしてムロヒロミさんも参加してくださいました。今回の記事に掲載している写真はすべてムロさんの撮影です。
「自分にできる少しの行動をしてみるだけで、多くの『命』を助けることができると信じ、現在ボランティアカメラマンとして活動しています。活動をしていると、『保護犬を飼ってみたい』という方から相談を受けることが増えました。良いアドバイスができるよう、プライベートでも施設や講義に足を運ぶようになりました」
ムロさんは保護動物と人との関係性を写真に収めたいという明確な希望があります。素敵な空気感のあるムロさんの写真に、アニドネも助けられています。
フレッシュな意志ある女性たち
アニドネではボランティア活動に加わった場合『動物福祉とは』という2時間ほどの勉強会を実施しています。これは、日本の現状を正しく知る、そして今後なにをすべきかを考える、ということをテーマに実施しています。勉強会に参加した3名を紹介します。
生まれた時から犬がいる家庭で育った亀井雪代さん。ずっと犬と共に過ごしてきて、何度も犬に助けられましたとか。恩返しがしたいと思ってボランティアに参加されました。
「少しの行動で動物たちを幸せにできる事、保護動物たちの幸せなストーリーをみなさんに知って頂きたいです。アニドネに参加して、ネガティブなイメージが活動の広がりを狭めていると感じました。特に若い世代、20代、30代の方に知って頂くきっかけを作っていきたいと思っております!」
そう。問題意識を持つのは年代問わず、自分を動かすきっかけになります。若い世代にももっと動物のことに興味を持ってもらいたいと私も思います。うれしいことにアニドネでは大学生のボランティアさんも活躍してくれています。寺川真代さんもそのひとり。
「高校生の時、大切に飼われていた犬が飼い主の勝手で保健所に捨てられ、安楽死させられるという絵本を読んだことをきっかけに動物福祉に興味を持つようになりました。学生でもボランティアとして受け入れてくれるところ、そして日本中にあるボランティア団体さんを支援できる中間支援組織であることにひかれ、アニドネのボランティアに参加させて頂くことに決めました。
アニドネでインスタグラムを担当させてもらうことになりまして。フォロワーさんがなかなか増えていかないと悪戦苦闘してはいますが、投稿を見ていただいた方からの質問や感動の声などもあり、学生の私でも動物福祉を皆さんに知っていただけていることにやりがいを感じています。
いま日本では、災害によってはぐれてしまうことにより、保護動物が新たに生まれてしまうという現実があります。動物と一緒に避難できる避難場所が当たり前になるくらい、動物福祉をアニドネの皆さんと一緒に日本に広めていきたいです」
私が学生のころはボランティアなんて全く頭にありませんでした。寺川さんのような方が増えると日本の未来は明るい、と感じます!
武田ゆかりさん。あふれんばかりの愛情表現をしてくれる犬がいとしくて仕方ありません、とおっしゃるトリマーのご経験もある方です。
「アニドネの活動を通じ、動物先進国である海外のペット事情や保護施設の存在を知り、日本との違いに驚くとともに、私たちにはまだまだやれることがある、伝えることがあるのだと感じました」
文章を書きたい、という希望の武田ゆかりさん。企業寄付やセミナーなどの記事を書いていただいております。
ボランティアを長く続けて感じることは?
最後に、岡部有里さんをご紹介させてください。ベテランボランティアとなる岡部さん。アニドネでリサーチャーというボランティアをしてくださっています。
「アニドネでリサーチャーとして複数の認定団体を担当し、団体の活動報告や寄付使途のフォロー、認定の審査にあたって現地視察と面談という責任あるお仕事も任せていただいています。どの団体さんも信念をもって本当にがんばっておられるのですが、そんな団体さんから感謝の言葉を直接いただけると、私でも役立っていることが実感でき、もっと頑張りたいという原動力になっています。
また、アニドネに入っていなければ、こんなにも動物福祉について熱く語り合える仲間には出会えなかったと思うので、大切なコミュニティーのひとつです」
9名の方の思い、いかがでしたか?共感するキモチも見つかったのではないでしょうか。私自身、40歳のときに人生後半は社会貢献を、と考えアニドネを立ち上げました。それまでは、まったくボランティアや社会貢献というものに興味はなく、自分じゃないだれかがすること、という感覚でした。
でも、世の中には解決すべきことがあってそれを行うのは他の誰かではなく自分もそのひとり、だと認識したときに足が前に出ました。行動する内容や分野は人それぞれであっていいと思います。自分ひとりだとできることは限られて目の前の高い壁に途方に暮れることもあるでしょう。
しかし同じ志を持つ方は全国にたくさんいます。お近くの動物保護施設の扉をノックしてみる、まずは見学にいってみる、セミナーに参加してみる等々、まずは小さな勇気ある一歩を。自分になにができるかを考える年明けとしてはいかがでしょうか。
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