駅で保護された迷い猫「しょこら」 利用客にも愛され駅長に昇進
山形県・川西町のJR米坂線・羽前小松駅で保護されていた迷い猫「しょこら」が、近く「駅長」に就任する。野良猫として悲しい運命をたどる可能性もあったが、駅を管理するNPO法人の猫好きスタッフが保護。駅舎で面倒を見ているうちに、駅を利用する町の人にも愛され、晴れて「大出世」することになった。
9月25日朝。駅窓口のカウンターに乗ったしょこらが、改札口を通る乗客をりんとした表情で見つめていた。首からは「研修中」の札。高校生やお年寄りが笑顔でそっとなでていく。
「来月、駅長になります」。NPO法人の事務局長で、飼い主の細谷絵里子さん(38)が声をかけた。
しょこらは推定2~3歳。グレーと白の毛並みから、保護された直後に「しょこら」の愛称が付いた。駅長就任決定を機に、同町の花ダリアを読み込んで「ショコ・ラ・ダリヤ」が本名に。響きは女の子だが実はオス。毛が長く、去勢済みだったため、しばらく気づかれなかった。
ガリガリ、ダニだらけで保護された元飼い猫
米坂線は、米沢駅(米沢市)と坂町駅(新潟県村上市)を結ぶ90.7キロのローカル線。羽前小松駅の利用客は1日200~300人で、地元のNPO法人「えき・まちネットこまつ」が切符の販売など駅舎の管理と運営を担う。
しょこらが来たのは5月中旬。駅前の駐車場の軽トラックの下で鳴いているのに細谷さんが気づいた。ガリガリにやせ細り、体はダニだらけ。えさをあげるとむさぼるように食べた。
人なつっこく、トイレもしつけずみ。「きっと飼い猫だ」。細谷さんは動物病院に連れて行った。保健所と警察にも届け、保護したことを知らせるポスターを作った。問い合わせは3件あったが、どれも違った。
元の飼い主が現れなければ、3カ月後に警察に届けた細谷さんが飼い主になる。そうなったら自宅に引き取ろうと考えたが、数年前に保護した2匹の飼い猫と相性が悪かった。ほかのスタッフも犬がいたり、アパートがペット禁止だったりしたことから、当面は駅舎で面倒を見ることに。
スタッフ総意で猫駅長就任を決定
しょこらはそのうち、駅の窓口カウンターに乗り、乗客を出迎えるようになった。物おじしない様子から、細谷さんは「猫駅長になれる」と直感。乗客からも「このままいてくれたらいいね」と声をかけられるようになった。
結局、元の飼い主は現れず、8月中旬に細谷さんは正式にしょこらの飼い主になり、駅長就任もスタッフの総意で決まった。
フォロワーもじわじわ増加、列車で会いに来る人も
羽前小松駅の近辺では、山形鉄道フラワー長井線・宮内駅(南陽市)のウサギ駅長「もっちぃ」、会津鉄道・芦ノ牧温泉駅(福島県会津若松市)の猫駅長「らぶ」、施設長「ぴーち」がいる。いずれも観光客に親しまれ、グッズも販売されている。
しょこらにも期待がかかる。6月に開設したツイッターのフォロワー数は徐々に増え、700人近くに。しょこらに会おうと列車で駅を訪れる人も出始めた。
細谷さんは、しょこらは捨て猫だと見ている。保護する1カ月ほど前、駅近くでしょこらに似た猫が2匹捨てられるのを目撃した人がいるからだ。1匹は車にひかれて死んだという。
「しょこらは事故や病気、殺処分といった命の危険があった。しょこらに会うことで、人のエゴで捨てられる動物のことを考えるきっかけにしてほしい」
細谷さんはしょこらの制帽を作り、式の日を心待ちにする。駅長就任式は12日午前11時50分から、羽前小松駅である。
(星乃勇介)
- ◆しょこらのお仕事時間
- 平日 午前7時45分~午後7時
土日祝日 午前8時45分~午後4時半
(第2、第4日曜は休み) - ◆しょこらとのお約束
- (1)フラッシュを使って撮影しないでね
(2)なでるのはOKだけど抱っこはダメ
(3)大きい声や音を出すのは控えてね
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